ミステリ・パロディ

    イギリス薬瓶の謎

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    「この瓶がなにを意味しているかわかれば、お父さんにも犯人はわかるでしょう」

    「しかし、エラリー、これはただのなんの変哲もないヨードチンキの瓶だが」

    「そこですよ。よく考えてほしいのは。犯人が自分の手首の傷を消毒するために、このラベルのない瓶に入ったヨードチンキを使ったのは、不自然です。なぜなら、薬棚には、きちんとラベルの貼られた未開封のマーキュロクロームとヨードチンキの瓶があったからです。犯人は、どうしてそちらを選ばなかったのか。それは……」

    「わかったぞ! エラリー! つまり犯人は、『ラベルに書かれた英語の文字を読むことができない人間』だったんだな!」

    「え……いやその、お父さん、犯人はどうやってこの瓶にヨードチンキが入っていたと」

    「うむ! お前の推理はさすがだ! 犯人は、『瓶の匂いを嗅いだ』んだ!」

    「ええーっ」

    「英語が読めなかった犯人は、なにが入っているかわからない未開封の瓶を避け、ここの持ち主が使っていそうな瓶を片端から調べることにしたに違いない。消毒役は小屋の生活には必需品だからな。この瓶が最初に選ばれたのは偶然だろう」

    「お父さん……ぼくの話を……」

    「わかっとるわかっとる。皆までいうな。犯人は、ヨードチンキで自分の傷を消毒するだけの医学的知識を持っていた。そうでありながら英語が読めなかった。ということは、犯人は『高い文化を持ちながら、英語とはまったく違った文字を使っている人間』だ。ずばり、漢字を使っている東洋人!」

    「あ……あ……」

    「この残虐な犯行を行ったのは、東洋人による殺人結社だ。でかしたぞエラリー、さっそく警察に報告に行こう!」

    「お父さん、その、ああ行っちゃった……論理って、推理って、演繹ってなんなの……?」

    『イギリス薬瓶の謎』・完

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    ~ Comment ~

    Re: ダメ子さん

    だからこれは「エジプト十字架の謎」ではなく「イギリス薬瓶の謎」だと何度いったら(笑)

    Re: miss.keyさん

    ですからこれは「エジプト十字架の謎」ではなく「イギリス薬瓶の謎」なのであります(笑)。

    どういうシチュエーションでどういう殺人が行われたかは知りませんが……(^^;)

    NoTitle

    つオッカムの剃刀…
    でもたまにそうじゃないのが正しかったりするから厄介で…
    湯川秀樹博士の中間子論とか

    なんだか私も犯人は東洋人の殺人結社のような気がしてきました
    ヨードチンキを売っているあの店が怪しいです
    お客の一人が咳払いをしていたのが殺人依頼の合図に違いありません
    そのお客がちらっと私の方を見ました
    まさかターゲットは私なんじゃ…?

    勝手に解釈する人はホント迷惑

     そういう人が実際にいたりするともう大変、かんぐるかんぐる。しかも悪いほうに。パトラッシュ、ぼくもう疲れたよ・・・。
     お父さん、自分の推理に自信があるのはいいですが、一歩踏みとどまりましょうね。

    Re: limeさん

    山荘で山火事に巻き込まれるのは「シャム双生児の謎」です。(^_^) はらはらしながら読んだ後のあの最後の一行はないよなあ(笑)

    個人的には、人間は人間という生物としての条件から演繹した「善いとはなにか」を共通の道徳の基礎として了解すべきだと考えてますが、今回エラリーが犯人を指し示す動かぬ証拠として取り上げた手がかりから、論理的に推論してまったく違う結果が出てしまうことを考えたら、「ムリかな……」と思えてきたので落ち着いて薬を飲もうはい(^_^;)

    NoTitle

    タイトルを見て、エラリーパロきた~~って、それだけで笑っちゃいました。
    エラリーとパパの掛け合い大好きです。
    私もまた読み直してみようかな。

    これ、本当にパパの推理冴えてると思ってしまいますね。もうそういう事にしとこうよ(笑)
    謎シリーズは全て読んだんですが、うん十年も経つと、タイトルと中身が一致しなくて。
    一番好きだったのは、山火事に追いつめられる奴なんですが、あれのタイトルが思い出せない・・・。
    また調べてみよう。

    Re: 面白半分さん

    エジプト十字架ってなんですか? これは「イギリス薬瓶の謎」というミステリで(笑)

    いまはとりあえず、読みかけのストルガツキーの「そろそろ登れカタツムリ」をなんとかしたいであります。

    それに、なんか怖いですよ「青銅の悲劇」。あのナディア・モガールさんが矢吹駆に敵意むき出しのまえがきしてるし(^^;)

    これは十作目の矢吹駆シリーズ最終刊では、「ニコライ・イリイチ=モガール警視」という衝撃のオチがつくんじゃないのかなあ、とガクブルであります(^^;)

    Re: ひらやまさん

    小学生のころ、あかね書房のリライトで最初に読んだクイーンがこれだったであります。やたらと面白くて、父の持っていた創元版の「チャイナ橙」に取りかかったら、あまりに長くて分厚くてペダントリーだらけで挫折しました(^^;)

    あれから30年かかってクイーンに復讐した気分です(笑)

    NoTitle

    エジプト十字架での見せ場の一つを変奏させましたなあ。
    でもここだけ切り取るとお父さんの推理ももっともになってしまうあたり面白いですよね。

    本家でいえばこの推理は間違っているとしても
    こういった可能性を排除せず執拗に記述していったのが
    笠井潔「青銅の悲劇」になります。そろそろどうですか


    NoTitle

    お父さん、当然の推理のように思える…。ヨードチンキの瓶は口のところがたれで汚れたりして、けっこう臭うんですよね。ほんのちょっと蓋が緩んでいても強烈な匂いがするし。
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