偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 1日目 1

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     1日目


    『居心地のいい夜のことだった……。』そこまで読んで、保は本をほうり出した。

     夕暮れの赤い光が、四畳半の部屋を照らしていた。きちんと畳が引いてある部屋だ。この畳、この昭和を引きずった感じが、保は嫌いだった。畳だ、なんていっても、どうせ実際は発泡スチロールに、中国製のイグサで作った皮を一枚かけてあるだけじゃないか。ネットでそういう話を聞いたもの。そして小学一年生の時から使わされている学習机。うっとうしくて落書きをすることしかしていない教科書……。

     そしてとどめにこれだ、と、保はやりきれない目でその本を見つめた。『偉大な男のものがたり』ポール・ブリッツ著。訳者の名前が書いていないが、外国人だろうか。外国人だとしても、ここまで頭の悪そうなタイトルをつけることもないだろう。しかも、その冒頭部分のまだるっこしいこと。のろのろ、のろのろと、やたらともったいぶって、いつまでたっても本題に入らない。こっそりと録画して見ている深夜アニメの中には、本題に入るまでまる一話使うものもあるけれど、それならそれで盛り上がりとかあるじゃないか。この本は、その「つかみ」で失敗しているんじゃないか。

     保はいつも読んでいるライトノベルに手を伸ばしかけ、やめて、朝のアニメにもなっている人気漫画のコミックスに手を伸ばしかけ、やめた。

     ごろんと寝転がる。

     持っているライトノベルも読み飽きたし、コミックスは何度読み返したかわからない。だいいち、最新刊のコミックスは一か月も前に雑誌で読んだところまでしかカバーしていないので、いまさら読んでも新鮮に思えない。次の巻が出るまではまだ一か月あるし、だいたいその前に来週には続きが乗った雑誌がコンビニに並ぶんだし……。

     ゲーム機に手を伸ばしかけた。

     やめた。

     保の親はネットを使うゲームにはびた一文払わない、と日頃からいっていた。『びた』がなんだかはよくわからないが、一円も出さない、ということだけは実によくわかった。無料で遊べる範囲だったら、時間さえ守ればかまわないが、課金を百円でもかけたら、それでおしまい、ゲーム機は液晶画面にドリルで穴を開け、ジャンク屋に持って行く、と。脅しだとは思えなかった。なぜなら保の父親は、生まれた年代のせいか日曜大工が大好きで、買った電動ドリルで穴を開けるものを日々物色しているような人間だったからだ。いまやっているゲームは、課金しないとにっちもさっちもいかないところへ来ていた。アクションが回復するまでは、明日の朝まで待たなければいけない。それでガチャを回して……狙いのカードが出るか。無理だ。


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