偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 1日目 2

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     保はあきらめきった顔つきでランドセルににじり寄ると、中を開いた。

     ノートと筆入れを取り出す。

     ……やればいいんだろ、やれば!

     きょう、学校でやってくるよういわれた宿題は、漢字ドリルが一ページ、計算ドリルが二ページ。それにやらされている通信教育の問題集と、それから来週までに縦笛の指の動かし方を覚えて、それから……。

     考えるだけで疲れてきた。なにをするにも中途半端で、なにをするにも疲れていて。そして未来にしてもさほど変わりないだろう。こんな疲れた生活が、いや、これよりもっとひどく疲れる生活が、ざっと六十年は続くことになるのだ。

     小学生が人生にくたびれたっていいじゃないか。

     漢字ドリルは明日やろう、明日の朝やろう。計算ドリルのほうは、勉強ができるやつにLINEで聞けば、宿題の答えのテキストデータくらいは送ってくれるだろう。通信教育の問題集は、さすがに相談する相手がいないから自分でやるとして、まあ、いざとなったら添削問題は白紙で送ろう。住所と名前さえ書いておけば、やったことにはなるし。

     なにかもうどんどん肩に重いものがのしかかってくる。肩こりじゃないな、ストレスじゃないかな。

     このごろは朝起きると脱力感が半端でなく……。

     保はランドセルをもう一度放り出した。

    「もーやだ」

     思わず口に出していた。

     もーやだ。

     ちっとも楽になりやしない。

     なにかこう、びっくりすることはないかな。びっくりすることというより、そう、やっていて楽しいことだ。やっていても疲れない、負担にならないこと。

     溜息が出た。

     無理だろうな。なにせ、最近じゃ、友達とのつきあいや、始めた通信ゲームでさえ、疲れて、しんどくて、もう……。

     もーやだ。

    「もーやだ!」

     寝転がって、手を伸ばした。何かに触れた。なんだろうと思ったら、さっきの「偉大な男のものがたり」だった。

     なんのためにこんな本があるんだ。

     保は本をラッコのように腹に乗せた。石があったら打ちつけていただろう。

    「もーやだもーやだもーやだ!」

     それがなにかの合図だったらしい。

     自分の今いる四畳半の畳のへりのすべてから、虹色の光がほとばしった。

     え?

     ……と思った次の瞬間、寝ころんでいた畳がぱっくりと開き、保は床下……いや、「外」へ放り出されていた。

     えええ?


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