偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 2日目 1

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     2日目



    「ほんとだってば!」

     保は話を繰り返した。

    「ほんとに、ぼくは、地球に住んでたんだってば!」

     全身にとげを生やした正十二面体が、とげを震わせて答えた。

    「きみは幻想を見ていたのだよ。この宇宙には、知的存在のアストラル・ボディを積んだ無数の船が飛んでいる。それらは、恒星から恒星を渡って過ごす。その中で、知的存在は自らのアストラル・ボディを健康に保つため、議論し、生活をする……きみの話した、地球という惑星での話は面白かった。面白いというより、興味深い。まさかこんなやりかたがあったなんてね」

    「……でも、ニードルさん」

    「ニードル三等航海士だ。そう呼んでくれ。タモツ実習生、きみもいちおう、三等航海士見習いだよ」

    「実習生っていったって」

     保は顔を両手で覆った。

    「ぼくになにができるっていうんですか」

     カーペットだと思っていたものが、繊毛を細かく揺らして、保をはげました。

    「今はなにもしなくていいの。ただひたすら、議論をするだけでいいのよ。宇宙はあまりにも広いわ。そしてやれることは、あまりにも少ない。そしてあなたにもわたしたちにも、議論して自らを鍛える時間は、そう、無尽蔵にある……」

     はげましてくれたようだが、たいしてはげみにはならない。

    「ええと……あなたも、三等航海士さんですか?」

    「失礼ね! ウェブ二等航海士よ!」

    「すみません、ウェブさん、あの」

     かたわらでこの情景をにやにやしながら見ていたパッチが手を叩いた。

    「きみのいいたいことはわかるぜ、タモツ実習生。きみは、生物には男と女、そのふたつしか存在しないと、そう考えているんだろう。ウェブ二等航海士どのは、可能領域のごくごく小さなアストラル・ボディが無数に結合することによってできている、一種の群体ともいうべき存在だ」

     保は頭をかきむしった。

    「アストラル・ボディ、アストラル・ボディって、いったいアストラル・ボディってなんですか!」

    「何度も説明しただろ。精神的な肉体のことだ。われわれ知的生命が総じて肉体を捨て去って幾星霜、われわれは皆、精神として生きてきた。だがもとの肉体のことは忘れられず、いわゆる精神の『焦点』を合わせる必要ができた。焦点が合っていないと、しだいにアストラル・ボディは分散して薄められてしまい……最後には意識を保つこと自体が不可能になる……真空同様になっちまうのさ」


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