映画の感想

    「日本のいちばん長い日」見た

     ←偉大な男のものがたり 2日目 1 →自炊日記・その42(2015年6月)
     なんというか。

     すごい映画だった。

     「忘却エンドロール」さんの今月の「ブログDEロードショー」の岡本喜八監督特集企画で見た「日本のいちばん長い日」の話である。いったい誰がこんな「マニアのアイドル」みたいな映画監督の作品を引っ張り出したのかといえば……ごめんわたしだった(笑) もうこの企画のセレクションを見たら誰が発起人かひと目でわかるな(笑)。

     ええと。

     これまで旧日本軍を題材にした映画の最高傑作は「独立愚連隊西へ」だと思っていたのだが、違った。あれを軽量級の日本チャンピオンだとしたら、「日本のいちばん長い日」は重量級の世界チャンピオンである。もう、すごいとしかいいようがない。

     まずなにがすごいかといって、終戦前夜のクーデター未遂事件を扱うこの映画では、反乱を起こす青年将校たちがまずひとつの主人公的な集団として描かれるのだが、こいつらを演じる俳優陣の熱演が……熱演がすごい。すごすぎてある一線を越えてしまっている。なにせ最初から最後まで、みんな目がいっちゃってるのだ。サイコぶりではこのブログDEロードショーでは内田吐夢監督の名作「飢餓海峡」の八重さんを演じた左幸子さんが異様な人気だが、それに匹敵するような、脳みそのネジがぶっとんじゃった男どもがわんさかわんさか出てくるのである。思うのだが、幕末を舞台とした、しかも長州藩や会津藩をメインとしたドラマや映画をやるんだったら、登場人物たちはみんなこんな目をしたらいいのではないか。それくらいにすさまじい。くわえて、話す言葉は軍隊言葉を絶叫調で話す。勝てない。こんな集団にはまともな精神の人間は絶対に勝てない(笑)。 いや笑い事じゃないのだが。

     次に、この映画の実質的な主人公である、三船敏郎演じる阿南陸相。この人がまたもうなんというか。三船敏郎が主役をやると、どうしようもない残念な映画になるか、目のくらむような傑作になるかのどちらかだが、これはもう完全に後者。のっけからあの男くさい顔で、未曽有の国難に対して陸軍の司令官を務めることになってしまった、『本質的にイカれている男』を見事に演じている。視線のほうはまともなのだが、行動がまともではないのだ。いや、まともでない行動が観客にはまともに見えるという、「未曽有の国難ゆえの顛倒」というものを一身に背負った主人公というか。

     重臣たちもひとりひとり、昨今の政治屋どもが束になってもかなわない『人物』ぶりを見せていてすばらしい。御前会議の場面が、これほどリアルに迫ってくるような映像、今のテレビドラマがそのまま映画になったような劇場用作品では絶対に無理だな。

     とにかく見せ場の連続、レンチャンに続くレンチャンという緊迫した映像にひりひりさせられて、三時間があっという間な映画である。ジャケットを見直して思ったが、ええっこれって158分しかなかったの、ということにびっくりさせられた。絶対180分はあると思ったのだが。それだけ濃厚なのである。人間ドラマとアクションとがこれでもかというくらいに詰め込まれての158分。岡本喜八監督すごい。いやマジにすごい。

     なんか改憲だとか集団的自衛権がどうのだとかいう話が飛び交う世の中だが、日本が戦争になったとき、日本国民はどうなりますか? という問いにはこの映画を見せて、「こうなります」と答えるのがいちばん実情に即しているかもしれない。そんな気がするほどの真に迫ったセミドキュメンタリー映画。

     昔はこういう映画が8月15日に地上波で放映されていたんだなあ、と思うと隔世の感がある。ドキュメンタリーの「東京裁判」は何度か見たが、戦争のシミュレーションとしてはむしろこの映画を見た方がよかったかもしれない。

     一食抜いてもいいから見ておくべき傑作である。

     本来だったらこれから「独立愚連隊」シリーズになだれ込むところだが、そんな体力ない。この映画で使い果たした(笑)。

     戦争はやめようね。ほんと、やめようね。負け戦になったらこうなるからね。という教訓で締めることにする。

     あとでまた見よう。
    関連記事
    スポンサーサイト



    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    【偉大な男のものがたり 2日目 1】へ  【自炊日記・その42(2015年6月)】へ

    ~ Comment ~

    Re: かえるママ21さん

    松坂桃李さんがどんなファナティックぶりをしているか興味はありますが、映画館が遠くて……。

    DVD待ちになっちゃいそうです(^_^;)

    こんばんは。

    私、実は最初は見る気はなかったのですが、成り行きで夏休みに「日本の一番長い日」を劇場で観ました。(リメイク版)
    終戦記念日のクーデター、これは歴史教科書に出てないので、知らない人は知らないですよね。
    私も近々記事にしようと思ってたのです!
    昔のもぜひ見て見たいと思いました。
    (7月の記事だったんですね。)

    Re: 宵乃さん

    軍人たちのしゃべりかたは、まあ、あれ、「様式美」みたいなものですから……。慣れれば聞き取りやすく……ならないな(^^;)

    先にも書きましたが、目がいっちゃった人の中では、民兵をあおっていた天本英世さんの鬼気迫る怪演すれすれの演技がすごかったです。「仮面ライダー」で死神博士をやっていたかたですが、あんな演技もできるのか、と思いました。

    リメイクも見てみようかなあ。いくらかセリフも聞き取りやすくなってるだろうし……。

    おはようございます

    先日のオンエアを録画して張り切って観たんですが、あの軍人の喋り方がぜんぜん聞き取れなくて撃沈しました…。すみません。
    でも

    >なにせ最初から最後まで、みんな目がいっちゃってるのだ。

    これはホントすごかったですね。早送りでも伝わってくる迫真の演技でした。

    >戦争になったとき、日本国民はどうなりますか? という問いにはこの映画を見せて、「こうなります」

    まさにその通りだと思います。
    戦争なんて、二度とできないようにしておかなきゃダメですよね…。

    Re: take51さん

    岡本喜八監督では、「独立愚連隊」シリーズもお忘れなく。戦争アクション映画としては日本ではあれが最高だろうと思います。

    「大誘拐」は、あれは天藤真先生の原作がすばらしいのもありますね~。出版社を変えては何度も出てますから、一度お読みになってください。これがまた1ページにつき3回は笑える名作中の名作なのです。落ち込んだときはあれを読んで笑って立ち直ることにしています(^^)

    NoTitle

    こんばんは!!
    今回も素晴らしいリクエストをありがとうございました!(^.^)
    遅くなりましたが感謝感謝です♪

    僕が見たのは大誘拐ですが本当に面白かったです!
    いい意味で期待を裏切られました!!(^^♪

    すっかりこの監督に興味が沸いてますので、
    この日本でいちばん長い日も見てみたいと思います!
    という事から記事は読んでませんが、改めてお邪魔させてください!(^.^)

    Re: miriさん

    いや、この題材を映像化するのに、「いっちゃった目」と「絶叫調の台詞」は必需品でしょう。その牙を抜いてアイドル映画にされたら、と考えると気分が暗澹としてくるであります。

    公開されたら戦意昂揚映画になってしまったとか(ありそうなのが怖い……(;・д・))

    こんにちは☆

    >昔はこういう映画が8月15日に地上波で放映されていたんだなあ、と思うと隔世の感がある。

    今年はその日にBS3でオンエアがあります☆
    きっと多くの方が鑑賞されると思いますよ~♪

    >すごい映画だった。

    ホントにそういう映画でしたね~!
    私も同じ日に見ましたよ~初見でした。
    記事はもう一本と一緒に7日火曜日にアップします☆

    >なにせ最初から最後まで、みんな目がいっちゃってるのだ

    みんな、とは思わなかったけど、畑中さんが一番でしたよね~!
    今年公開されるこの映画と同じ原作の映画、
    畑中役の若い俳優はわりと好きなんですけど、
    黒沢さんほどに目がいっちゃうのか?心配であります(笑)。


    .

    Re: バニーマンさん

    158分という時間が長く感じないのはすごいであります。

    俳優の演技もすごいものがあります。

    こんなものを夏真っ盛りのときに見せられたら熱中症で倒れるんじゃないかなあ(^^;)

    Re: 宵乃さん

    とにかく構成からなにからもうすばらしい作品でした。

    太平洋戦争って、一般的な日本人がみんなああだったんだろうな、と思うとそら恐ろしくなります。

    あのスタイリッシュな死神博士こと天本英世さんまで「ファナティックな帝国軍人」として奇声を上げて鬼気迫る熱演(というか熱演とか怪演のレベルを突き抜けてしまっている)をしておられましたからなあ……。

    NoTitle

    随分前に観たので、かなり忘れていますが(^_^;)、
    観終わって、どっと疲れたという記憶があります。
    まだ若かった頃なのに・・・。
    158分もあったんですね。
    題名通りの“長い”作品だったんですね。
    また観ないといけませんね。

    あの八重さんに…

    匹敵するほどの異様さですか~。それは興味あるかも(笑)
    しかも三船さんが熱演となれば、見ごたえあるでしょうね。
    この作品は未見なので、そのうち挑戦したいと思います。
    今回はリクエストして下さって本当にありがとうございました♪

    Re: LandMさん

    me too. わたしだってやだ。 (^_^;)

    NoTitle

    戦争はやらん方いいのです。
    いや、私が戦場に行きたくない・・・というのが一番の理由なのですが。
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【偉大な男のものがたり 2日目 1】へ
    • 【自炊日記・その42(2015年6月)】へ