偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)
偉大な男のものがたり 2日目 2
「信じられないよ! ぼくはそんなわけのわからないものじゃないよ!」
保の言葉に、パッチは苦笑いを浮かべながら首を振った。
「じゃあ、どうしておれたちは、きみと会話ができるんだい、タモツ実習生」
「どうして……って、ぼくは日本語を」
そこまでいって、保は背筋に冷水を浴びせられた思いがした。
そうだ。自分はこれまで、日本語しかしゃべっていない。それなのに、どうしてこのような宇宙人たちと会話ができるのだろう。英語なんて知らないし、いや、英語どころか……。
「そういうことさ。おれたちは、アストラル・ボディとして互いに共通するところを持っている。言葉を口にするということは、アストラル・ボディの共通する部分を見えない触手のように接触させようとすることなんだ。接触に成功したら、会話をすることができたってことだ。アストラル・ボディになれたすべての知的存在には『論理』が共通しているからこそできることだけれど、きみには理解できるかな?」
「わからないよ!」
「わからなくてもいいさ。おれはきみのいう『日本語』がわからないが、それでもこうしてきみと意思を通じ合わせることができる。おれにとっちゃ、いや、おれたちみんなにとっちゃ、それでじゅうぶんだ」
保は身体をぶるぶる震わせた。涙がつっとほほをつたった。
抗弁しようにも抗弁できなかったからだ。
「ぼくは……ぼくは小学生だよ。まだ子供だよ!」
「わかった。わかったから」
ニードルが、灰色の身体の表面にある正五角形のひとつをぼんやりと赤く点滅させた。なぐさめているらしい。
「それにしても」
パッチは保の身体を見た。
「きみの種族はおれたちの種族と、ほんとにそっくりな体つきをしていたんだな」
保は耳をふさぎたくなった。そんな話、聞きたくない。
しかし、パッチの声……アストラル・ボディの触手が触れあっているのかもしれないが……は、残酷だった。パッチ自身は、残酷ともなんとも思っていない様子なのがさらに残酷であるように、保には思えるのだった。
「きみたちの種族では、子供のときからみんな、きみのように大きな身体をしているのかい? おれよりも、ひと回り、いや、ふた回りは大きいじゃないか」
そうだった。
保は、自分が平凡な小学生の体つきでないことを認めざるを得なかった。
保の今の身体……それは、たくましい、少なくとも二十歳はいっている成人男性の身体だったのである。
保の言葉に、パッチは苦笑いを浮かべながら首を振った。
「じゃあ、どうしておれたちは、きみと会話ができるんだい、タモツ実習生」
「どうして……って、ぼくは日本語を」
そこまでいって、保は背筋に冷水を浴びせられた思いがした。
そうだ。自分はこれまで、日本語しかしゃべっていない。それなのに、どうしてこのような宇宙人たちと会話ができるのだろう。英語なんて知らないし、いや、英語どころか……。
「そういうことさ。おれたちは、アストラル・ボディとして互いに共通するところを持っている。言葉を口にするということは、アストラル・ボディの共通する部分を見えない触手のように接触させようとすることなんだ。接触に成功したら、会話をすることができたってことだ。アストラル・ボディになれたすべての知的存在には『論理』が共通しているからこそできることだけれど、きみには理解できるかな?」
「わからないよ!」
「わからなくてもいいさ。おれはきみのいう『日本語』がわからないが、それでもこうしてきみと意思を通じ合わせることができる。おれにとっちゃ、いや、おれたちみんなにとっちゃ、それでじゅうぶんだ」
保は身体をぶるぶる震わせた。涙がつっとほほをつたった。
抗弁しようにも抗弁できなかったからだ。
「ぼくは……ぼくは小学生だよ。まだ子供だよ!」
「わかった。わかったから」
ニードルが、灰色の身体の表面にある正五角形のひとつをぼんやりと赤く点滅させた。なぐさめているらしい。
「それにしても」
パッチは保の身体を見た。
「きみの種族はおれたちの種族と、ほんとにそっくりな体つきをしていたんだな」
保は耳をふさぎたくなった。そんな話、聞きたくない。
しかし、パッチの声……アストラル・ボディの触手が触れあっているのかもしれないが……は、残酷だった。パッチ自身は、残酷ともなんとも思っていない様子なのがさらに残酷であるように、保には思えるのだった。
「きみたちの種族では、子供のときからみんな、きみのように大きな身体をしているのかい? おれよりも、ひと回り、いや、ふた回りは大きいじゃないか」
そうだった。
保は、自分が平凡な小学生の体つきでないことを認めざるを得なかった。
保の今の身体……それは、たくましい、少なくとも二十歳はいっている成人男性の身体だったのである。
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