偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 2日目 4

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    「たぶん、きみも、もといた船の中で、この焦点核を外してしまったんじゃろう。どうやったのかはわからないがのう。そのため、精神だけの存在になって、船から放り出されてしまったんじゃな。よくある、ということではないが、たまにはあることじゃ。じゃから心配しなくてええ」

     シルク副長は船内をふわふわと漂って、ウェブの背中……にあたるのだろうか? 身体の表面に着地した。

     はっと保は顔を上げた。

    「あの……ウェブさんは、『群体』ですよね。ということは、それだけたくさんの焦点核が必要なんじゃ……」

    「と、いうわけでもないのだよ、タモツ実習生」

     ニードルは針の数本をかすかに震わせ、説明を始めた。

    「ウェブ二等航海士どのはたしかに無数のアストラル・ボディからなっているが、そのアストラル・ボディはひとつの焦点核を、いわば『共有』しているのだ。それにより、ひとつの『群体』として活動できている」

    「もし、焦点核がふたつあれば、アストラル・ボディを分割してふたつになることもできるだろうけど、そんなことやりたくないわね。パフォーマンスは半分になるし、焦点核は貴重だし」

    「二等航海士どのは現実的ですな、いつもながら」

     パッチはくくっと笑った。

     保は『現実的』という言葉が非現実的に聞こえた。あまりに……。

    「あの、副長どの」

     保はおそるおそる尋ねてみた。これまで切り出さなかった話題だった。

    「副長どのは、『ポール・ブリッツ』という人を知ってますか?」

    「ポール・ブリッツなら知っとるよ」

    「ほんとですか!」

     保は叫んだ。だが、それに続く言葉は、保の期待とは正反対の方向だった。

    「宇宙を漂う、一種の下等生物じゃ。アストラル・ボディを作るだけの精神力もなかったものと考えられておる。そのくせ、船の周りをうろうろして、なにか知らんが自分の生命活動に使うエネルギーを得ておるらしい」

    「だって……それは……本の作者……」

     保は口にしかけた言葉を飲み込むしかなかった。この船にいるエイリアンたちが、自分たちの世界は小説に書かれたものだなどと、思うわけがないじゃないか……。

    「ポール・ブリッツを甘く見ないほうがいい。やつらはどこに現れるかわからない。ひとりで船室にいるときに、ふいに視線を感じたり、ふっと存在を感じたりするのも、ポール・ブリッツのしわざらしいからね」

     ニードルは身体の正五角形のひとつを赤く点滅させた。

    「どうやら船長どのも起きられたようだ」


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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    おれは友人からどう思われているんだろう(^^;)

    しかしSFいうもんは難儀なもんで、「どうして宇宙人同士で話ができるのか」の説明だけに12枚使わなければならん、という……(^^;)

    NoTitle

    あれ。
    この文章を読んだ瞬間、逆にポールさんらしいと感じた。。。
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