偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 3日目 2

     ←偉大な男のものがたり 3日目 1 →退屈している神様
     昨日、船長室へ連れられて行ったときのことはまだ記憶にしっかりと残っていた。

     小山のような船長はこういったのだ。

    『きみが新しい実習生か』

     保はその巨躯に後ずさりしそうになるのを必死にこらえた。

    『は、はい』

     船長は笑ったらしい。

    『なにか質問は?』

    『……こ、この船は、どこへ、なにをしに向かっているのですか』

     船長はパッチに対し、面白そうにいった。

    『なんだお前ら、この実習生にそのことを教えていなかったのか』

     パッチは頭をかいた。

    『……いや、船長、おれたちも教えたんですけどね、信じようとしないんですよ、こいつは。どうもこいつのいた世界では、精神的に幼生だったみたいで……』

    『だって信じられないです! この船は、「みかん」を探しているだなんて!』

     みかん。保はもちろん何度となく食べたことがある。

    『みかんを探して旅をすることはそんなに不思議かね?』

    『だって……だって、みかんなんて、どこにでもあるでしょう!』

     船長はからかうような口調で諭した。

    『じゃあ、タモツ実習生、きみはみかんをここに取り出すことができるかな?』

     保はなにか答えかけ、そして絶句し、渋々ながら認めざるを得なかった。

    『……できません』

    『そういうことだ。われわれは、みかんを手に入れるため、この宇宙を駆けまわっているんだ』

     パッチはいった。

    『なんでも、この実習生は、みかんを見たことや食べたことがあるそうなんです』

    『ほう、面白い。ぜひ聞かせてくれ。みかんとは、どんなものだ?』

    『え? えーと、みかんは、みかんです。黄色やオレンジ色の、手に載るくらいの大きさの丸い果物です。味は甘くて酸っぱいです』

    『ふむ』

     船長はなにか機器を操作したようだった。船長の種族がどんなものだかよくわからない保には、なにをどう操作したのかはわからないが、船長室の壁がとつぜん黒くなり、白い、保には読めない文字がずらっと並び始めたのだから。

    『間違いない。古文書にあるとおりだ』

     パッチはまじめな表情に戻った。

    『すると、この実習生が放り出されたという船は』

    『……はるか過去の、全生物がかりそめの肉体を捨て、精神だけの存在となる以前の様式をそのまま保存していることになる』

     船長は壁面の文字を消した。

    『面白い。まことに面白い』


    関連記事
    スポンサーサイト



    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    【偉大な男のものがたり 3日目 1】へ  【退屈している神様】へ

    ~ Comment ~

    Re: ROUGEさん

    いや、これまでに飲んだティーバッグや水出しティーバッグのジャスミン茶とは、根本的に違う、ほのかで芳醇な香りと控えめだけどしっかりとした甘い味がしたのでありますその店のジャスミン茶。

    まるでお花畑を散歩しているかのような感じでありました。

    バーミヤンなどでいろいろとティーバッグを時間を変えたりなんだりして試してみましたが、あの味がどうしても出ないのであります。

    どうしてもイヤな渋みと鼻をつく強烈な香りが出てきてしまい、これじゃない~!!! しているのです。

    昨日の晩にその店に行ったときは、あの味がほんとうに幻ではなかったのかをつきとめる絶好のチャンスだ、と思ったのですが……まさかお湯切れとは。くやしいのうくやしいのうギギギ。代金の300円は別口で用意しておいたんだけどなあ……。

    Re: 椿さん

    この小説は論理的な展開をする論理的な話であります。たぶん。

    わたしの精神がどうかしてしまってヤバい方向に行ったわけではありません。たぶん。

    ラスト付近ではでこれら序盤の伏線が、全部回収されるはずです。たぶん。

    薬を飲もう(^^;)

    NoTitle

    ジャスミン茶はコンビニでも売ってるわよ~
    私は水出しのを買って
    麦茶みたいに飲んでるわ。

    管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    NoTitle

    みかんを探していたのか!
    でも大宇宙の中でみかんを探すとなるとなかなか難問ですね。
    彼らは無事みかんにたどり着けるのか……(^o^)
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【偉大な男のものがたり 3日目 1】へ
    • 【退屈している神様】へ