偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 3日目 3

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     保にはなにが面白いのかさっぱりわからなかったが、どういうわけだか、船長の言葉に「嘘」は感じられなかった。

    『あのう……どうして、みかんを……?』

     好奇心がうずいた。

    『見たことがないからだ』

     船長は断言した。

    『「みかん」とやらを見つけることで、たぶん何も変わりはしまい。宇宙はそのままの姿でわれわれの前にあるだろう。だが、われわれは失われた知識のひとつを知ることができる。また、旅のその過程において、われわれは様々な知識と触れ合うことができる。この世界に、それ以上の価値があるかね。ただただ、好奇心のために宇宙を冒険すること、それ以上に知的存在らしい行為があるかね?』

    『知的存在らしい行為……』

    『「勉強」だ』

     船長のその言葉を聞いた時、保は世界ががらっと変わった感じがした。

    『つまり……』

     保は尋ねた。確認したかったのだ。

    『ここでは、好きなことを好きなようにするだけで、それが勉強になるんですか?』

     船長は不思議そうにいった。

    『それ以外のなにが、「勉強」なんだ? わたしは言葉を間違えているのか?』

     無限の宇宙と奇妙な異星人。それのもたらす、あまりにも大きな不安が、船長の言葉で溶けていったかのようだった。

    『船長、ぼくはどうしても、もとの世界、父さんや母さんや、ぼくの友達たちのもとへ帰りたいです。ぼくは、この船で、その方法を探してもいいですか? ……じゃなくて』

     保は深く息を吸い込んだ。

    『ぼくがついこの前までいた世界に帰る方法を探すのに、力を貸してくれませんか?』

     船長は答えた。

    『もちろんだ。この船では、どんな目的のためだろうと、船員全員の協力が得られる。もちろん、現在の船の目的に反しない限りにおいてだが』

    『ぼくのいた世界を探し当てることができれば、みかんも見つかります! だから、ぼくの目的は、船の目的と同じことです!』

     船長は頭を振った。うなずいたのかな、と保は思った。

    『うむ。きみのもたらした情報は、われわれの探索にとって、それを飛躍的に前進させるものだ。われわれとしても、きみの協力はぜひ欲しい』

     船長は続けた。

    『こちらからもお願いする。どうか、われわれの仲間になってくれないか。船の仕事を覚えるまで、しばらくは実習生として働いてもらうが、三等航海士たちと同等の扱いを保証しよう』

     より不安になってもいいはずなのに、保はわくわくしてきた。保はいった。

    『よろしくお願いします!』


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