偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 10日目 2

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    「え? ぼくは、ただ、誰かが来たのかな、と」

    「そして誰もおらんかった」

    「はい」

    「それがポール・ブリッツというものなのじゃよ。どこにでもいるようでいて、どこにもいない、ただ視線を感じるだけじゃ」

     保は妙な薄気味悪さを覚えた。

    「そんなものからどうやって情報を引き出すんですか」

    「濃度じゃよ、濃度」

     糸はふらふら揺れる。保は眉根を寄せた。

    「ほら、また」

     副長はふわりと飛ぶと、天井からぶら下がった。

    「また視線を感じたんじゃろ?」

    「はい……」

    「それだけポール・ブリッツの濃度が濃くなっているということじゃ」

    「ということは、ポール・ブリッツが圧縮されると、より接触しやすくなるということですか」

    「さよう」

     副長の声は、テストで七十点を取ったときの教師の声を思わせた。

    「ポール・ブリッツは情報を蓄えておる。これは事実じゃが、蓄えておることとそれを理解することとはまったく別のことじゃ。わしらは、ポール・ブリッツの濃度が濃い場所において、自らのアストラル・ボディの触手を伸ばす。それにより、ポール・ブリッツの情報をわずかながら手に入れることができる。これを飽きるほど繰り返せば、それなりに進むべき道が見えてくる。迂遠な道じゃがこれがいちばんの方法じゃ」

     副長は保の前で笑った。

    「そんな悠長な、という思いをしておることが、アストラル・ボディの触手越しに伝わってくるぞ。なに、半分は冗談じゃ。ポール・ブリッツから情報を入手できることは確かじゃが、あくまでもそれはおまけにすぎん。ポール・ブリッツの群生宙域がわしらの目指す当座の目的地への航路にあるのでそこを通っていくだけの話」

    「目的地って、どこですか?」

    「シティじゃ。船長は、お前さんにいきなりシティを見せてびっくりさせよう、と考えているんじゃろうが、なに、このくらいのことは明かしておかんと、びっくりさせる甲斐がない」

    「シティ……都市のことですね」

    「タモツ実習生、お前さんのいっている『都市』というものがいまいちよくわからんが、お前さんの暮らしていた船内の閉ざされた集合体のことをいっているのだとしたら、まったく違う。そこは知と自由に満ち溢れ、幾億とも知れぬ船が行き交う、あたかも光り輝くような……」

     副長の講釈はそこで不意に打ち切られた。

    「スクリーンが! なんじゃこれは!」



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