偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 100日目 2

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    「どうして圧縮しなかったのか、か。なるほど、きみの視点は面白い」

     船長は少し考えているようだった。

    「……つまりだ。誰もポール・ブリッツをそこまで圧縮しなかったのは、する必要を誰も感じていなかったからだ」

     スクリーンの一部に桃色のグラフのようなものが浮かんだ。

    「ポール・ブリッツはわれわれにとって、ごく当たり前にあるものすぎた。そこから情報を引き出すこと以外の価値を見出していなかったのだ。……誰も。グラフを見てくれ」

     グラフの基準線が上下した。それとともに、グラフも黄土色から紫色に変化した。

    「これを見ればわかるとおり、ポール・ブリッツから得られる情報は、この桃色がいちばん明るくなったときに最大値を示し、そこから紫や黄土色に向かって動くたびに失われていく。黄土色になっている部分は、濃度が薄すぎてまともな情報を取ることができず、紫が強くなると濃度が濃くなりすぎて、情報が密集しすぎてどんな情報なのかわからなくなってしまう、ということだな」

     グラフの紫色が濃くなり、やがて黒とほとんど見分けがつかなくなった。

    「この状態が、先ほどブリッツ砲を撃ったときに、ポール・ブリッツを圧縮した濃度だ。これを再現するのはひと苦労だったが、この九十日の船員たちのがんばりにより、なんとかなった」

     船長はわずかに言葉を切った。

    「……いや、なんともならないほうがわれわれにとっては幸福だったかもしれん」

     ふと視線を感じ、保は振り返った。

    「どうかしたか、タモツ実習生?」

    「……い、いえ、なにか視線を」

     船長は笑ったようだった。

    「たぶん、エネルギーに変わらなかったポール・ブリッツだろう。残りかすにすぎんから安心したまえ。さて、ここからだが、ウェブ二等航海士!」

    「はっ、船長どの!」

    「説明を代わってくれ。少し休む」

    「わかりました。タモツ実習生、よく聞くのよ」

     絨毯のようなものがさわさわと説明を始めた。

    「あなたにも焦点核はあるわね?」

     保は親指の爪を見た。あの白い粒はきちんとある。

    「焦点核を外すことにより、わたしたちのアストラル・ボディはどんどん拡散し、薄くなってしまい、最終的には存在しないも同然になってしまう。だけど、ここで覚えておかなければならないのは、薄くなりはするけれど、アストラル・ボディそのものを破壊する手段はない、ということよ。だから、わたしたちが他者に暴力を振るおうとしたら、焦点核を奪う、という手段しかなかったわけ」

     ウェブは繊毛をふわふわさせた。


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