偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)
偉大な男のものがたり 100日目 3
「納得できないようね。質問があるの?」
保は考え考えいった。
「……はい。二等航海士どの、焦点核を破壊することはできないのですか?」
ウェブは苦笑いしたらしい。
「まったく、タモツ実習生、あなたの乗っていた船ではどういう教育がされていたのかしら。まず、焦点核は貴重品よ。だから、奪うことをまず考えるのが普通の反応、ということね」
ウェブの口調は、当たり前のことを話しているとしか思えなかった。保はなんとなく恥ずかしくなった。
「次に、焦点核を破壊する、というのが困難だ、ということもあるわ。破壊するには、そもそもこの船のパワープラントに使われている真空エネルギー炉で直接処理するしかないけれど、破壊の瞬間に、焦点核が時空に変化することにより生じるエネルギーときたら……」
「百五十三光年離れていても届くような、ということですか?」
保は勇気を出していってみた。
ウェブはにこっとするかのようにわずかに自分を構成する絨毯の端を持ち上げた。
「そのとおり。よくできたわね。これがどういうことか。ポール・ブリッツを超高密度に圧縮してから一点に向けて解放した時に生じる精神エネルギーは、同じ精神エネルギーであるアストラル・ボディを破壊するだけにとどまらず、焦点核をも破壊することができる、ということなのよ。膨大な量のアストラル・ボディと焦点核の集まった、知性と情報の拠点であるシティでさえもかけら一つ残さず吹っ飛んだ、ということは、この技術を使えば、シティまでとはいかなくても、アストラル・ボディと焦点核の集合体である、この『アドベンチャラー号』や、その他の船もまた、かけら一つ残さず吹っ飛ばせる、ということ。これがどういうことになるか、答えてみなさい、タモツ実習生!」
保は、反射的に背筋をびしっと伸ばして考え始めた。
「えーと、つまり、つまり……相手の船にブリッツ砲による先制攻撃の態勢に入られると、狙われた船はなんの反撃もできない、と、そういうことですか?」
ウェブは答えた。
「正解」
保は喉が渇いてきた。
パッチが発言した。
「二等航海士どの、おれも発言してよいでしょうか。この実習生に、もうちょっと事態を認識してもらわないといかんので」
「いいでしょう」
パッチは、保に、いや、ここにいる船員たち全員に聞かせるようにいった。
「おれたちの先祖は、知的生命が殺し合うのはもうやめようと肉体を捨てた。それがまったくの無駄骨だったってことさ」
保は考え考えいった。
「……はい。二等航海士どの、焦点核を破壊することはできないのですか?」
ウェブは苦笑いしたらしい。
「まったく、タモツ実習生、あなたの乗っていた船ではどういう教育がされていたのかしら。まず、焦点核は貴重品よ。だから、奪うことをまず考えるのが普通の反応、ということね」
ウェブの口調は、当たり前のことを話しているとしか思えなかった。保はなんとなく恥ずかしくなった。
「次に、焦点核を破壊する、というのが困難だ、ということもあるわ。破壊するには、そもそもこの船のパワープラントに使われている真空エネルギー炉で直接処理するしかないけれど、破壊の瞬間に、焦点核が時空に変化することにより生じるエネルギーときたら……」
「百五十三光年離れていても届くような、ということですか?」
保は勇気を出していってみた。
ウェブはにこっとするかのようにわずかに自分を構成する絨毯の端を持ち上げた。
「そのとおり。よくできたわね。これがどういうことか。ポール・ブリッツを超高密度に圧縮してから一点に向けて解放した時に生じる精神エネルギーは、同じ精神エネルギーであるアストラル・ボディを破壊するだけにとどまらず、焦点核をも破壊することができる、ということなのよ。膨大な量のアストラル・ボディと焦点核の集まった、知性と情報の拠点であるシティでさえもかけら一つ残さず吹っ飛んだ、ということは、この技術を使えば、シティまでとはいかなくても、アストラル・ボディと焦点核の集合体である、この『アドベンチャラー号』や、その他の船もまた、かけら一つ残さず吹っ飛ばせる、ということ。これがどういうことになるか、答えてみなさい、タモツ実習生!」
保は、反射的に背筋をびしっと伸ばして考え始めた。
「えーと、つまり、つまり……相手の船にブリッツ砲による先制攻撃の態勢に入られると、狙われた船はなんの反撃もできない、と、そういうことですか?」
ウェブは答えた。
「正解」
保は喉が渇いてきた。
パッチが発言した。
「二等航海士どの、おれも発言してよいでしょうか。この実習生に、もうちょっと事態を認識してもらわないといかんので」
「いいでしょう」
パッチは、保に、いや、ここにいる船員たち全員に聞かせるようにいった。
「おれたちの先祖は、知的生命が殺し合うのはもうやめようと肉体を捨てた。それがまったくの無駄骨だったってことさ」
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殺人事件のないはずの世界で、突然テロ行為が起こってしまったわけですね。それは大事件、という言葉でも足りない衝撃的な出来事ですね。
保くんの旅に、このことがどう関わっていくのか。続きをお待ちしております。
保くんの旅に、このことがどう関わっていくのか。続きをお待ちしております。
- #16160 椿
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- 2015.08/04 14:51
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Re: 椿さん
明朗快活なSF児童文学がどうしてこうなった(^^;)