偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 1,000日目 1

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     1,000日目



    「警戒解除」

     保は身体からほっと力を抜いた。パッチが額の汗をぬぐった。

     照準スクリーンからゆっくりと消えていく相手の船の画像データを見ながら、ふたりは目を見かわした。

    「くそっ、なんでおれたちがこんなことしなくちゃならんのだ」

    「しかたないんじゃないですか。三年前のことを考えると」

    「運命を呪うしかほかにできることがないとはまったくくやしいね」

     パッチと保は、慣れた手つきで発射装置に閉鎖のキーワードを入力した。キーワードはふたりでひとつずつ決められたタイミングで念じないと閉鎖することはできない。それは発射装置を解除するときも同様だった。

     そして、撃つときはどちらかがキーワードとともに「撃つ!」と念じれば一瞬で済む。すでに宇宙はそういう世界になってしまったのだった。

    「ところで、タモツ砲術士官」

     保はやりきれない顔で返事をした。

    「そんなこといわないでください。自分がいやになってきます。パッチさんも、同じ気持ちじゃないんですか」

    「同じ気持ちだからこそ、こうして軽口でもたたかないとやってけないんじゃないか」

    「船長どのがぼくたちを信じている証ですよ。そう考えればいいんじゃないですか」

     パッチはかぶりを振った。

    「あの人と話をするときは言葉のひとつひとつに注意しないとえらい目を見るぞ、と前にいったよなおれ」

    「覚えてますよ。三年前の話ですけど」

     保は淡々といつものように答えた。そのとき、頭にちかっとなにかが思い出されたような気がした。

    「どうした?」

    「いえ、なんだか忘れていたことを思い出したような気がして。でも、たぶん、気のせいです」

     パッチは鼻で笑った。

    「余裕あるじゃないか、タモツ砲術士官」

    「だからそんなこといわないでください。ぼくだって怒ります」

     パッチは悪態をついてから作業に戻った。

     保は心の中でため息をついた。

     今でもはっきり覚えている三年前のあの日。ブリッツ砲を導入するかどうかについて意見を討議したあの日。

     全員が熟慮のうえに投票をしたことはわかっている。だがしかし、保は納得がいかないことに変わりはなかった。

     それもそうである。最終的に決断をするため投票から外れた船長を除いて、ブリッツ砲をこの船に載せることに反対したのは保とパッチのふたりだけだったのだ。


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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    ツイッターのTL読んでめちゃめちゃ鬱が入ってブラックジョークのふたつみっつ作らないと気がおさまらなくなっているからそうとうダウナーになるでしょう。

    というか無事に旅が終わるのかそちらの方が心配(笑)

    NoTitle

    3年後……世界は変わってしまったのですね。
    あの投票はそんな結果に。
    保くんの旅はどうなっていくのでしょう。
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