偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 1,000日目 2

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     船長から、ブリッツ砲を載せる、そして砲手はきみたちだ、といわれたあのとき、保は耳を疑った。

     それはパッチも同じだったらしい。

    『船長どのの決断ならしかたがない。わかりました。でも、その前にひとつお聞かせください。どうして、おれとタモツ三等航海士なんです? タモツ実習生は知りませんけど、おれは、こんなぶっそうな兵器がこの自由なはずの船に載せられるのには断固反対なんですけどね』

    『きみたちだから選んだ』

     船長は感情を抑えた声でいった。

    『きみたちなら、自ら進んで、独断でブリッツ砲を撃つことはあるまい』

     保は歯を噛みしめた。

     船長は続ける。

    『わたしは、可能な限りこの兵器を撃ちたくはないのだ』

     パッチは肩をすくめた。

    『そこまで深いお考えとは。ごもっともですな。わかりました。できる限り任務に尽力いたします。タモツ三等航海士、お前は?』

     保もいった。

    『は、はい、ぼくも同じです』

    『頼む。これからきみたちは、本船始まって以来の砲術士官だ。任務表は、後から提示する』

     船長はそれだけいうと、ホールを出ていった。たぶん部屋に向かったのだろう、と、保は思った。

    『パッチ……』

     ニードルがなにかをいいかけた。

     パッチは暗い声で答えた。

    『すまない、ニードル三等航海士。おれは、これから先、きみたちとどう向き合ったらいいかもわからない。副長どのも、みんなも、同様だ。タモツ砲術士官!』

     保の背がびくっと伸びた。

    『なんですか?』

    『飲むぞ。つきあえ』

     パッチはそういうと、すでに酔ってでもいるかのように、ゆらりゆらりと歩き始めた。保はおっかなびっくりついていった。

     その日、パッチは黙りこくって次から次へと杯を重ねた。

     保はそのわきでひたすら水を飲んだのだった。

     保は頭をぶるっと振って、そのときの思いを振り払おうとした。あの時何杯も何杯も飲んだ水の味、冷たくそしてかすかに苦い水の味、それが保の舌によみがえってくるかのようだった。

    「タモツ」

     パッチがいった。

    「なんでしょうか?」

    「警報は解除された。今はおれの当直時間だ。きみは部屋で休んでいろ。ただし、警報が鳴ったら跳ね起きてここに来るんだぞ」

     当然のことだった。保はうなずいた。


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