偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 100,000日目 1

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     100,000日目



    「敵船捉えました。撃ちます!」

     タモツはすばやく思考した。

     圧縮されたポール・ブリッツが一気に解放され、光の速度など軽々と超える精神波の速さで奔った。

     奔るうちに拡散された精神波は、相手の船をその影響圏内に巻き込んだ。

     タモツには何が起こったかが見えるようだった。

     ブリッツ砲を食らった船のアストラル・ボディが破壊され、それにより焦点核が連鎖的に消滅していく。そのエネルギーは果てしない。小型の船だったが、半径一光年ばかりは反物質が対消滅でもしたかのように、星間物質もなにもかもなくなっていることだろう。

     タモツは汗をぬぐった。

    「撃破……」

    「衝撃波確認。来ます」

     ニードルがいった。素質を買われ、この戦争が始まってから、ニードルは二等航海士に昇進していた。

     船がかすかに揺れた。

    「現時点において、敵船と推察される反応なし!」

    「戦闘態勢解除」

     船長がいった。

     その声とともに、皆が皆、ほっと息をつくのがわかった。この日も生きのびられたらしい。そのわずかな安堵。

     タモツの隣でパッチがふかぶかと寝椅子に身体をうずめていった。

    「タモツ砲術士官、ライブラリーから拾ってきたが、昔、どこかの偉い人がこんなことをいったそうだぜ」

    「どんなことをですか?」

     パッチは指を振った。

    「すべての個人が完全に自由であるということは、万人の万人に対する戦争状態をもたらすであろう、ってな」

    「誰がいったか知りませんけど、含蓄がありますねその言葉は」

    「まったくだ。ほんとうにそうなっちまった今は、よけいにそう思う」

     パッチは寝椅子についているストローから水を飲んだ。

    「砲術士官は悲しいねえ。当直の日は酒すら飲めない」

    「みんな同じです」

     タモツはそういって、自分もストローをくわえ、水を飲んだ。口を通って喉に落ちる冷たい刺激が、自分の精神をしゃっきりさせてくれる気がした。

     この『アドヴェンチャラー号』にとって、それ以外の船は、今やすべて敵、と思ってよかった。ブリッツ砲で武装していない船は、この宇宙にもはや存在していない。なぜなら、そんな非武装の船はすべて破壊されてしまったからだ。


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