偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 100,000日目 2

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     無理もなかった。相手の船がブリッツ砲を搭載しているかどうかを確認するよりも、ブリッツ砲の射撃が相手方に届く方が早いのだ。すべての船の探査能力よりも、ブリッツ砲の射程距離のほうが長いのだ。この時間と距離のわずかな差が、悲惨な状況をもたらしていた。今存在を確認した船は、非武装の船を装った武装船ではないか? そのような疑心暗鬼が宇宙のありとあらゆるところにまで広がっていた。自分が宇宙のわずかなこだまのようなものとならないための最善の選択は、船が来るようなところは可能な限り避けること、そして他の船を見かけたらすかさず撃つこと、それ以外になかった。

     タモツはさらに水を飲んだ。

    「どこでこんな具合に間違えてしまったんでしょう」

    「おれに聞くな。どこかの馬鹿がシティをぶっ壊した……もう何百年前になるかな、そのときを境におれたちは皆、正気のままで狂ってしまったんだ」

     タモツはいった。

    「ぼくたちは……」

     なにか重大なことを忘れているような気がしたが、残存して漂っているポール・ブリッツのふっともたらす視線のせいで、そんなことを考えているのだろう。

    「ぼくたちはどこへ行くんでしょう……」

    「ひとっこひとりいないところだな。宇宙の果て、そんなものがあるのなら、たぶんそこだろう。もちろん、みんな宇宙の果てを目指すだろうから、宇宙の果てがいちばん混雑するんじゃないのかな。すると、宇宙の中心のほうがはるかに住みやすいかもしれないぜ。かつてシティのあった、今はなにもない空間とかな」

     パッチの言葉に、タモツは笑った。うつろな笑いだった。パッチもつられたように笑い、話を続けた。

    「まあ、どこに行くかは、船長と航法の決めることだ。ニードルのやつ……ニードル二等航海士どのの計算能力は、かなり高いものがあるから、航路担当に抜擢されたんだろうが、誰がやっても同じ結果になるだろうな」

     タモツは天井を見た。同じ結果か……。そうだよな。

    「ニードルたちは細かい数字を出しているだろうが、ライブラリーから引き出した、今は昔の船の総数と、おれたちアストラル・ボディが勢力圏にしていた範囲のデータから、おれたちアストラル・ボディの乗る船の、この宇宙における、ブリッツ砲の射程距離が及ばないほどにまで密度が希釈されるまでかかる時間を計算すれば……」

     タモツは答えを知っていた。船のみんながそうだった。

    「船内の体感時間で、百万年はかかるかもしれん、という結論になる。もちろん、もっとも控えめに見積もってだ」

     パッチは指を揺らした。


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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    最後にはいろいろとたたみかけてくる怒涛のラストが待っているはずなのですが、作者が抑うつ的になっているせいかまったく筆が進みません(汗)

    こういう展開にするはずだったしこういう展開になっていることは計画通りにいっているといっていいのですがこういう展開になるはずじゃなかった、というのが今の正直な気持ちです(汗汗)

    ここまできたらとにかくやります。

    NoTitle

    どんどんと殺伐とした状況に……どうなってしまうのだ。
    保くん、頑張れ……。
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