偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 100,000日目 3

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    「死なない存在を簡単に殺せる、たったそれだけのことで、知恵と慈愛に満ちた宇宙の秩序は、この通りさ」

     パッチの言葉に、タモツは笑った。自分でもわかるうつろな笑いだった。

    「乗りかかった舟ってやつだね」

    「そう、乗りかかった舟だ。一度乗った以上は、行くところまで行くしかない。……どうした?」

     パッチに、タモツは首を振った。

    「いや、なんでもない。いつもの通り、頭がちかっとしただけさ」

    「そうか……」

     パッチはタモツの返答に、なにかいいたそうに口をもぐもぐやっていたが、ストローをくわえて目をつぶった。

    「まあ、いずれにしろ、思ったことがあったらぶちまけてかまわないぞ。たぶん、今の船長はそれを喜ばないだろうがね」

    「船長が喜ばない?」

    「こっちの話さ、こっちの」

    「そういえば、パッチ砲術士官」

    「なんだよあらたまって」

     タモツは、どうしてこれまで聞かなかったんだろう、と思いながら、パッチに向かって尋ねた。

    「そのアイパッチはどうしたの?」

    「どうしたも、こうしたも……アイパッチはアイパッチだ」

    「気を悪くしたら謝るけど」

     タモツはさらに聞いてみた。

    「そのアイパッチの下にはなにがあるの?」

     怒るか、と思ったら、意外にもパッチは普通に、冗談をいうかのように答えた。

    「目だよ。というか、かつて目だったもの、だな」

    「かつて目だった?」

    「そうさ。見るか?」

     パッチはアイパッチに手を伸ばしたが、タモツはその行為に対して手を上げてさえぎった。

    「いいよ。ぼくは、傷を見て面白がる趣味はない」

    「傷じゃなくて、傷跡だぜ。目の跡には、肉も盛り上がっているし、そう怖がるようなものでもないさ」

    「怖いんじゃなくて、趣味だよ。趣味と美意識の問題さ」

     パッチは自分の額をぴしゃりと叩き、おかしそうに笑った。

    「美意識! 美意識なんて言葉がどこから出てきたんだか!」

    「どこからって」

     また、さっきと同じように、頭のどこかがちかっとした。タモツは頭を振って、目の焦点を合わせた。

    「……どこからって、もちろん、自分の頭の中からに決まってるじゃないか。自分がわかってもいないものについて話すことなんか、理屈の上からもできないよ」


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