偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)
偉大な男のものがたり 10,000,000日目 1
10,000,000日目
タモツは意を決して船長室へ向かった。どうしても聞き出したいことがあったからだ。
ドアをノックする前に、中から声、いや、アストラル・ボディの触手の接触があった。
「誰だ」
タモツは一瞬ためらったが、すぐに顔を上げてはっきりといった。
「タモツ砲術士官です」
「入りたまえ」
「失礼します」
船長はどこか寂しそうに見えた。傍から見たら自分も寂しそうに見えるのかもしれない、タモツはそんなことを考えもした。
「なんの用できた」
「船長にお聞きしたいことがあるのです」
どこかから視線を感じたが、また、いつものとおり、ポール・ブリッツだろう。やつらはこの宇宙にどれだけの密度でいるのか知らないが、もしかしたら減るよりも増えるほうが早いのかもしれない。
「なにが聞きたいというのだ」
「パッチ砲術士官のことについてです」
船長は笑ったようだった。
「あいつも困ったものだな。乗組員たちをからかっては悦に入っている」
「わたしは……パッチ砲術士官が人をからかっているのだとは思えないのです」
「ほう?」
「お聞きしたいのは、そうした人柄のことではありません。パッチ砲術士官が、どうして片目を失ったのか、それをお聞きしたいのです」
「よしといたほうがいい、といっても、納得はせんのだろうな、きみは」
船長は触腕を伸ばすと、自分の向かっていた机に触れた。
「これがなんだかわかるか」
タモツは面食らった。
「机だと思いますが」
「ただの机ではない。この『アドヴェンチャラー号』の船長の机だ」
ひと呼吸おいて、船長はいった。
「やつはこれが欲しかったのだ」
「どういう……」
「やつは船長になりたかったのだ。わたしを取り除いてな」
タモツは息を呑んだ。
「そんな……」
「きみたちのような目を持つ種族は、その目でものを見ることにより、いちどきに膨大なデータを認識することができる。パッチはそれを過信しすぎたのだ」
嘘だ。タモツはそういいたいのをこらえた。パッチはそんなことを考えるタイプの人間ではない。だが……。
「この船のライブラリーは知っているな」
「はい」
船長は静かにパッチの陰謀を語った。
タモツは意を決して船長室へ向かった。どうしても聞き出したいことがあったからだ。
ドアをノックする前に、中から声、いや、アストラル・ボディの触手の接触があった。
「誰だ」
タモツは一瞬ためらったが、すぐに顔を上げてはっきりといった。
「タモツ砲術士官です」
「入りたまえ」
「失礼します」
船長はどこか寂しそうに見えた。傍から見たら自分も寂しそうに見えるのかもしれない、タモツはそんなことを考えもした。
「なんの用できた」
「船長にお聞きしたいことがあるのです」
どこかから視線を感じたが、また、いつものとおり、ポール・ブリッツだろう。やつらはこの宇宙にどれだけの密度でいるのか知らないが、もしかしたら減るよりも増えるほうが早いのかもしれない。
「なにが聞きたいというのだ」
「パッチ砲術士官のことについてです」
船長は笑ったようだった。
「あいつも困ったものだな。乗組員たちをからかっては悦に入っている」
「わたしは……パッチ砲術士官が人をからかっているのだとは思えないのです」
「ほう?」
「お聞きしたいのは、そうした人柄のことではありません。パッチ砲術士官が、どうして片目を失ったのか、それをお聞きしたいのです」
「よしといたほうがいい、といっても、納得はせんのだろうな、きみは」
船長は触腕を伸ばすと、自分の向かっていた机に触れた。
「これがなんだかわかるか」
タモツは面食らった。
「机だと思いますが」
「ただの机ではない。この『アドヴェンチャラー号』の船長の机だ」
ひと呼吸おいて、船長はいった。
「やつはこれが欲しかったのだ」
「どういう……」
「やつは船長になりたかったのだ。わたしを取り除いてな」
タモツは息を呑んだ。
「そんな……」
「きみたちのような目を持つ種族は、その目でものを見ることにより、いちどきに膨大なデータを認識することができる。パッチはそれを過信しすぎたのだ」
嘘だ。タモツはそういいたいのをこらえた。パッチはそんなことを考えるタイプの人間ではない。だが……。
「この船のライブラリーは知っているな」
「はい」
船長は静かにパッチの陰謀を語った。
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パッチさんと船長にそんな因縁が……。
保くんに負けず劣らず意外な気がします。
どんな物語が語られるのでしょう。
保くんに負けず劣らず意外な気がします。
どんな物語が語られるのでしょう。
- #16252 椿
- URL
- 2015.08/19 00:34
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Re: 椿さん