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    「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
    3 吸血鬼を吊るせ(完結)

    吸血鬼を吊るせ 2-6

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     野村香の実家は、バスに二十分ほど乗り、停留所から十五分ほど歩いただけで、すぐに見つかった。あの人からは想像しづらいほどハイカラな家だ。
    「最近、多いんですかねえ?」
     この目にはどうも北欧風に映る門構えを見て、わたしは思わずうなった。戸乱島と遥家に関わる人たちは、みな北欧が好きなのだろうか。
    「わたしにはアンバランスさが面白く見えますけど」
     遥美奈が答えた。
     窓からはぼんやりと明かりが見えた。こんな気持ちのいい朝に電気をつけるとは、省エネということを知らないやつである。
    「インターホンはどこです?」
    「桐野先生のすぐ脇ですよ」
     わたしは後ろへ一歩下がった。
    「遥さん、あなたが押してください。わたしなんかよりずっと香さんとのつきあいが長いんですから。わたしはあの場ではただの闖入者にすぎなかった」
    「いわれなくても押します」
     遥美奈はわたしを押しのけるように身を伸ばすと、ボタンを押した。
     インターホンにランプがついた。
    「美奈です。香さん、いらっしゃいますか?」
     返事はない。
     遥美奈はボタンを二度三度と押した。
    「野村さん、お留守ですか? 野村さん?」
     返事はなかった。
    「留守でしょうか?」
     遥美奈が小さな声でいった。
    「でも、明かりはついていますよ」
    「桐野先生……」
     その声に、住居不法侵入、という文言が頭をかすめた。
     わたしは頭を振った。
    「中の様子が心配です。入ってみましょう」
     進み出で、門に手をかける。そろそろと押し開けた。
     そこで、あることに気づき、後ろの遥美奈へと振り返った。
    「猛犬とか……いませんよね」
    「さあ?」
     猛犬はいなかった。運がいい話だ。門の中に入ると、そこは、「いかにして金をかけずにうわべだけの豪華さを取り繕うか」の実験場みたいだった。プラスチックを多用した装飾物、手入れされていないプランター、掃除していない玄関。よく見ると郵便受けは何通ものダイレクトメールらしき郵便物でいっぱいだった。
    「香さんって、プライヴェートはこんなに不精な人だったんですか?」
     後ろから入ってきた遥美奈に問いかけると、首を振られた。
    「あの人が私生活できちんとしていなかったということは、わたしの知る限り、ありません。そもそも、不精な人は、家政婦になろうなんて、初めから考えないでしょう」
    「それも、そうですね」わたしは扉を手で示した。「遥さん、お願いします」
     遥美奈は扉をノックした。
    「野村さん、野村さん、いらっしゃいますか?」
     返事はない。
    「香さん、香さん!」
     遥美奈は、さらに強く扉を叩いた。
     返事はなかった。
     わたしたちは顔を見合わせた。
    「どいてください」
     わたしは遥美奈を下がらせ、煎餅の包みを押し付けると、扉のレバーを握った。後から考えると、ハンカチを使って握るべきであった。しかしそこまで頭が回らない。
     レバーを握る手に力を込め、ゆっくりと引いた。
     扉は静かに開いた。
     鍵が開いていることに不審を抱く前に、部屋の中から、わたしには懐かしい臭いがしてきた。研修医のころにはさんざん、今もときおり嗅ぐ臭い。それは強烈なパンチとなってわたしを襲った。
     遥美奈が顔をしかめた。通常の人間なら吐いてもおかしくないところだ。その精神力は誉むべきかな。
    「桐野先生、これって……」
    「死臭です」
    「香さんが!」
     わたしは、駆け込もうとする遥美奈を制した。
    「遥さん、携帯はお持ちですよね」
    「ええ……? は、はい」
    「すぐに外へ出て、警察に連絡を取ってください。わたしは、中を見てきます」
    「でも、桐野先生、もし犯人が中に潜んでいたら……」
    「犯人? 二時間ドラマの見すぎですね。わたしは、病死を念頭に置いていたのですが。それに、もしかしたら声も上げられないほど衰弱している人がいるかもしれません。治療者として、これは義務です」
     わたしはそう告げると、家の中に進んでいった。
     廊下を進み、ドアを開けてリビングルームに入ると……。
     BC兵器なみのきつい臭いとともにわたしは、遥美奈のいった「犯人」という言葉がさほど的外れでなかったことを知った。
     後ろで物音がした。わたしは振り返り、同じものを見て顔色を真っ青にした遥美奈と目を合わせた。
    「遥さん」
     ひたすら残念だった。
    「外へ出ていてくださいといったでしょう」
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    ~ Comment ~

    >せあらさん

    どんどん死体が転がりますね~。困っちゃいますね~(^^;)
    では続きをどうぞ。

    >ネミエルさん

    夜中の三時ですか。この小説が勉強の疲れを少しでも癒せたらいいのですが。テストがんばってください。

    新しいにおい・・・

    これは・・・死体・・・?

    あぁっ、ポールさん夜の三時に読んでいる僕は
    こわくてたまりませんよっ!!

    ((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル
    ま、また死人が……!
    でも面白くなってきたのもまた事実。
    次話も楽しみにしてますv
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