偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)
偉大な男のものがたり 10,000,000日目 2
「パッチはそこをひとつの計算装置として使い、この船における、わたしが存在しうる可能性のある状態のすべての情報を得るべく、アストラル・ボディの触手を伸ばした。アストラル・ボディが得た情報のすべてを自分の目に集中させ、視覚として扱うことによりその膨大なデータを処理しようとした。やつの目はそれに耐え切れず、やつは自分の目をえぐり出さざるを得なかった」
そんな……。
「それじゃ、パッチ砲術士官の目は……」
「アストラル・ボディの肉体的イメージを修復するための船内施設を頑として使おうとしないのには困ったものだが、やつのやつとしてのけじめのつもりだろう。そういう男だからな」
船長はタモツに背を向けた。
「……嘘だと思うなら、パッチに聞けばいい。わたしがきみに真実を話したと知ったら、それ以上のいいのがれはするまい。ああ見えて、自分の中にあるプライドだけは、決して譲らない、頑固なところがある男だからな。こうして何万年とつきあっていれば、わかるとは思うが」
「しかし……」
タモツは考えをまとめようとした。
「しかし、パッチ砲術士官は……」
「なに?」
船長は意外そうに再び振り返った。
「パッチが、どうかしたのか?」
「はい。砲術士官の言葉だと」
「あいつがなにかいったのか?」
船長は偽足を伸ばし、タモツの肩に触れた。アストラル・ボディをより密着させれば、タモツのすべてを知ることができるかとでもいうように。
「はい。砲術士官は、わたしにこういいました。ずいぶんと昔のことですが、船長も、真実は八割くらいしか知らないと」
「パッチがそういったのか?」
船長は偽足をするすると自分の身体に戻した。
「タモツ砲術士官」
「はい」
「きみはこの船をどう思う」
タモツは何を聞かれているのか、一瞬、理解できずにとまどった。
「どう思うといわれても……自分の家みたいなものだとしか……」
頭がちかっとする。
船長は続けた。
「わたしももういい年齢だ」
「船長?」
「……きみの思うよりも、わたしははるかに長く、こうしてアストラル・ボディを持った精神生命体として生きているのだ」
「船長……」
「わたしは疲れすぎた。はるか昔の、情報と刺激が激しくやり取りされていた宇宙ならまだしも、この孤独すぎる世界は正直つらい」
そんな……。
「それじゃ、パッチ砲術士官の目は……」
「アストラル・ボディの肉体的イメージを修復するための船内施設を頑として使おうとしないのには困ったものだが、やつのやつとしてのけじめのつもりだろう。そういう男だからな」
船長はタモツに背を向けた。
「……嘘だと思うなら、パッチに聞けばいい。わたしがきみに真実を話したと知ったら、それ以上のいいのがれはするまい。ああ見えて、自分の中にあるプライドだけは、決して譲らない、頑固なところがある男だからな。こうして何万年とつきあっていれば、わかるとは思うが」
「しかし……」
タモツは考えをまとめようとした。
「しかし、パッチ砲術士官は……」
「なに?」
船長は意外そうに再び振り返った。
「パッチが、どうかしたのか?」
「はい。砲術士官の言葉だと」
「あいつがなにかいったのか?」
船長は偽足を伸ばし、タモツの肩に触れた。アストラル・ボディをより密着させれば、タモツのすべてを知ることができるかとでもいうように。
「はい。砲術士官は、わたしにこういいました。ずいぶんと昔のことですが、船長も、真実は八割くらいしか知らないと」
「パッチがそういったのか?」
船長は偽足をするすると自分の身体に戻した。
「タモツ砲術士官」
「はい」
「きみはこの船をどう思う」
タモツは何を聞かれているのか、一瞬、理解できずにとまどった。
「どう思うといわれても……自分の家みたいなものだとしか……」
頭がちかっとする。
船長は続けた。
「わたしももういい年齢だ」
「船長?」
「……きみの思うよりも、わたしははるかに長く、こうしてアストラル・ボディを持った精神生命体として生きているのだ」
「船長……」
「わたしは疲れすぎた。はるか昔の、情報と刺激が激しくやり取りされていた宇宙ならまだしも、この孤独すぎる世界は正直つらい」
- 関連記事
-
- 偉大な男のものがたり 10,000,000日目 3
- 偉大な男のものがたり 10,000,000日目 2
- 偉大な男のものがたり 10,000,000日目 1
スポンサーサイト
もくじ
風渡涼一退魔行

もくじ
はじめにお読みください

もくじ
ゲーマー!(長編小説・連載中)

もくじ
5 死霊術師の瞳(連載中)

もくじ
鋼鉄少女伝説

もくじ
ホームズ・パロディ

もくじ
ミステリ・パロディ

もくじ
昔話シリーズ(掌編)

もくじ
カミラ&ヒース緊急治療院

もくじ
未分類

もくじ
リンク先紹介

もくじ
いただきもの

もくじ
ささげもの

もくじ
その他いろいろ

もくじ
自炊日記(ノンフィクション)

もくじ
SF狂歌

もくじ
ウォーゲーム歴史秘話

もくじ
ノイズ(連作ショートショート)

もくじ
不快(壊れた文章)

もくじ
映画の感想

もくじ
旅路より(掌編シリーズ)

もくじ
エンペドクレスかく語りき

もくじ
家(

もくじ
家(長編ホラー小説・不定期連載)

もくじ
懇願

もくじ
私家版 悪魔の手帖

もくじ
紅恵美と語るおすすめの本

もくじ
TRPG奮戦記

もくじ
焼肉屋ジョニィ

もくじ
睡眠時無呼吸日記

もくじ
ご意見など

もくじ
おすすめ小説

もくじ
X氏の日常

もくじ
読書日記

~ Comment ~
NoTitle
ポール・ブリッツさん、ありがとうね~
スィーツは自作するわ~
今は低カロリー甘味料もラカントとか
安全なものも多いしね。
普段の食事も気をつけねば(^^;
スィーツは自作するわ~
今は低カロリー甘味料もラカントとか
安全なものも多いしね。
普段の食事も気をつけねば(^^;
~ Trackback ~
卜ラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
Re: ROUGEさん