偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 10,000,000日目 3

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     タモツは、船長が一気に老けこんだように感じた。

     船長はやわらかく笑ったようだった。

    「誰か、この重荷を背負えるものを選んでから、わたしはこの船を降りるよ」

     タモツは驚愕した。

    「船長、降りるって……」

    「アストラル・ボディを組み替えて、子供に還るのだ。そしてまた最初からやり直す。その繰り返しによって、わたしたちの船の乗組員は、少しずつ強くなっていく。それが道理というものじゃないかね?」

     タモツは何と答えればいいのかわからなかった。これまでの時間の中で、乗組員の中でも少なからぬ数が、そうした形での誕生と死を選んでくるのを見てきたから、たしかに船長のいう意味もわかる。

     しかし、タモツには、どうしても、なにかがどこかで決定的に間違っているとしか思えないのだった。

    「もし……」

     タモツは、なんとか言葉をひねり出した。

    「もし、船長がそうやって生まれなおしたら、新しい船長としてこの船を進めていくのは、誰がやるんですか?」

    「きみだ」

     船長の言葉が、パンチのようにタモツの身体をしびれさせた。

    「わたしは、きみがこの船の船長にふさわしいと思うのだ」

    「で……でも」

    「きみはこの船がブリッツ砲を搭載しようとしたとき、反対の意見を表明した。勇気と決断力なしではできないことだ。大勢の乗組員が、この船のみの安全を願ったときに、きみはひとり、この武器の持つ危険性を正しく洞察して、反対したのだ。もし、すべての……この宇宙にあるすべての精神生命体がきみと同じ決断をしたら、われわれは、宇宙をこんな不毛な世界にすることもなかったはずだ。われわれはシティをもう一度組み上げて、ふたたびもとの、自由と平等の原則により動いていく世界にすることもできたはずだ」

     船長はタモツに触腕を伸ばした。

    「わたしはきみのその洞察力に賭けたいのだ。この世界を、まともにするのにはきみのような人間が必要なのだ」

     タモツは目をつぶり、首を振った。

    「考えさせてください」

    「考える?」

    「ええ。わたしよりももっと、適任者がいると思うんです」

    「誰かね」

    「パッチ砲術士官です」

     船長は驚いたようだった。

    「パッチか! あいつは、この船を乗っ取ろうとしたこともある男だぞ」

    「だからです。なにかを変えようと本気で考えるのなら、それだけの行動力がなければやっていけないのだとわたしは考えます」


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