偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 10,000,001日目 1

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     10,000,001日目



     昨日パッチにいわれたからではないが、タモツは自分の今日の非番の時間を、ライブラリでつぶすことにした。いつもは緊張の糸に参ってしまい、部屋に戻るや倒れるように眠ってしまうのだが、たまにはライブラリもいいだろう。

     ライブラリは、タモツの個室や、作業を行う施設と同様、柔らかい寝椅子、そこに寝れば情報と触れ合える寝椅子が用意されていた。タモツは身体を横たえた。この部屋の寝椅子は、より効率的に情報と接触できるように作られているため、精神的に脆弱なものにとっては麻薬同様の中毒効果がある、と聞かされていたので、数えるほどしか使っていないが、今日は非番の時間のすべてを使って、ライブラリに蓄えられた情報を徹底的に楽しんでやろうとタモツは考えていた。

     楽しむためには無駄なもののほうがいい。タモツは音楽を聞くことにした。

     さまざまな曲を、次から次へと聞いた。穏やかなものから刺激の強いものまで、曲のレパートリーは無限にあるのではないかと思われた。だが、それらの曲の奥底には、どれにも、痛烈なまでの「哀切さ」があった。どこからくる哀切さなのかは、考えるまでもない。シティが宇宙の塵と化してから、船の中の体感時間でさえ、三万年ほどの時間が過ぎ去っている。それ以前の平和な宇宙を思えば、哀切な気分になるのもしかたがなかった。

     頭に、ちかっとなにかがよぎった。

     ポール・ブリッツがどこかから視線を送っているのだろう。ブリッツ砲として精神エネルギーの塊に変えられてしまうよりほかの末路はないというのに、惨めなものだ。

     曲があまりに哀切に過ぎて、音楽を聞くのが耐え切れなくなった。

     タモツは別なものにすることにした。

     絵画。写真。あまり面白いものはなかった。あれだけ奇妙な身体を持つエイリアンたちと日常的に顔を突き合わせていれば、絵画など、それほど刺激があるわけでもなかった。なにしろ三万年も、砲撃目標が来るのを待って、やられるよりも前に撃破する、そういう過酷な任務についているのだ。感受性が荒廃してもおかしくはなかった。

     頭がちかっと。

     タモツはやたらとちかちかする頭に苛立ちながら、ほかのなにか、特別に変わったものを選ぼうと思った。

     「味覚」

     それを見つけたタモツは、これだ、と思った。アストラル・ボディを持っている今となっては、食事の必要がないため、ただ、任務の間に寝るという生活しか送っていなかったが、自分の味覚なら、まだいくつかの退屈しない刺激を楽しめるかもしれなかった。


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