偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 10,000,001日目 2

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     あまり期待もせず、タモツは味覚に触れた。設定を「ランダム」にし、再生をする。

     すぐに後悔した。痛いくらいに猛烈な辛味、苦くて青臭い味、金属をなめたかのような味、そういった無数のうまくもなんともない味が舌の上をよぎっては消えた。

     消そう、と思ったとき、タモツはその味を感じた。

     この味……。

     タモツはその味を何度も何度も再生し、自分の舌で味わった。

     間違いない。

     保はすべてを思い出した。

     それは紛れもない、さわやかなオレンジのあの味だったのである。

     保は寝椅子から起き上がると、そのまま船長室へ向かった。

     自分のやるべきことをやらなければならない。保はそれを悟っていた。

     船長室の前にたどり着くと、ドアをノックするまでもなく、入口がすっと開いた。

    「船長」

    「タモツ砲術士官だな」

    「違います」

     保はいった。

    「栗原保です」

    「だから、タモツ砲術士官だろう?」

    「いいえ。ぼくは栗原保です。砲術士官ではない、ただの地球に暮らす小学生です」

     船長の身体がゆらりと揺れた。こちらに近づいてくるのだ。

    「きみがクリハラタモツだとしよう。それでどんな違いがあるのかわたしにはわからない。それに、クリハラタモツくん、きみは何の用があってわたしの部屋に来たのだね」

    「この船の旅を終わらせに来たんです」

     保はあのオレンジの味のデータを出した。

    「船長、これが、『みかん』です。あなたが探していたという、『みかん』の味です。ここから修正を加えれば、様々なみかんの味をいくらでも味わうことができるでしょう」

    「タモツ砲術士官」

     船長が落胆したようにいった。

    「わたしが求めているのは、そういった『みかん』の断片的なデータではないのだ。もっと……」

    「そうです。船長。あなたは、最初から『みかん』など求めてはいなかった。なぜ、この船で、ぼくの日本語が通じるのか不思議に思うべきでした。アストラル・ボディの触手などでごまかされていましたが、あなたがほんとうに追っていたもの、求めていたものは、『未完』だったのですね」

     船長は冷笑した。

    「そのような抽象的な言葉を求めることには無理がある。それに、『未完』が目的だったなら、はじめからシティにもなにからも背を向けて、宇宙の果てへでも行くべきじゃなかったのかね。それこそ終わりのない旅へ」

    「船長、あなたにはそれができないのです」


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