偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 10,000,001日目 4

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     突然のまぶしい光に、保は目を焼かれるかと思った。反射的に目をつぶったが、それでも視界が真っ白になった。

    「目を開けて大丈夫だぞ」

    「パッチさん……」

     保はゆっくりと目を開けた。パッチが、ライフルのようなものを構えて立っていた。先ほどまで船長がいたところには、わずかな跡が残っているだけだった。

    「たったこれだけのことに三万年もかかってしまった」

     パッチは悔恨を含んだ声でいった。

    「なぜ、どうしてここに。その銃は」

    「この船の武器設計技術をなめてもらっちゃ困るぜ。超々々小型のブリッツ砲さ」

     パッチは疲れ果てた様子で船長の机に手を触れた。

    「おれは自分の目をえぐり出した。そういう約束だった」

    「約束? 誰との?」

    「船長だ。おれが見た未来を渡せば、引退後に船長にしてやる、といわれて、馬鹿なおれは乗ったのさ」

     パッチはアイパッチをむしり取った。肉が盛り上がった、こぶのようなものが目の替わりにそこにはあった。

    「おれは未来を見た。その瞬間、おれは自分がその通りにしか動くことができないことを悟った。未来がそうであるかぎり、おれもそうとしかできないのだ。三万年もの間、おれは人形みたいに動きしゃべるだけだった。おれは暗殺が失敗することを知りながら暗殺を企て、砲手になることを知りながら反対の挙手をした」

    「パッチさん……」

    「この三万年のおぞましい歴史を見て、おれは震えあがった。そしてあの船長の正体を見た歴史の中でお前の口から聞き、おれは取り返しのつかなくなる前に目をえぐり出した。自分がなにをするのかわからない状態になれば、おれは自由に行動できることになるからだ。船長はおれの目に残ったデータを未来予測図がわりに使い、そしてそれに満足した。デミウルゴスと呼んでもかまうまい」

    「デミウルゴスって?」

    「悪意のある愚劣な創造主のことだ。まだ世界が平和だったころにライブラリで知った」

     パッチは保の目を、残っているほうの目で見据え、いった。

    「未来が全く分からないいま、おれは船長になるべきだろうか。そしてお前は、お前の目的を果たすためにおれたちと一緒に来ることを望むか。おれたちは『未完』としかいいようのない終わりのない旅を続けるべきなのか、それとも今度こそ、なにか終わりのある目標に向かって旅を進めるべきなのか。きみはどう思う、クリハラタモツ?」

     保は一瞬、言葉に詰まったが、やがて決然とした声でパッチの問いに答えた。

    「ぼくは……」


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    Re: 椿さん

    もうすぐ終わります。終わるはずです。

    文章を一行書くのもたいへんになっていますが、抑鬱に負けず月末までになんとかします!

    NoTitle

    怒濤の更新おつかれさまです。

    そういうカラクリだったのか……!
    すっかりだまされていましたです。
    保くんがどんな選択をするのか、物語がどちらに進んでいくのか、
    楽しみにしております(^o^)
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