偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 1,000,000,000日目 2

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     そうだ。ブリッツ砲をすべて廃棄させ、かわりに全方向に信号を発したのだ。

     信号の内容は、『シティ』のみ。

     他の船からは可能な限り隠れて、発見次第撃つ、そんな日常からは考えもつかないことだった。

     うまく行く可能性なんてほとんど信じてはいなかった。だが、誰かが何かをやらないと始まらない、ということもわかっていた。そしてやるとしたら今だ、ということも。

     この世界に、憂鬱に取り憑かれた悪意ある神はもういない。この宇宙の未来を作っていくのは自分たち人間自身であり、その善意と良識だけだ。

     だが、希望もないわけではなかった。

     パッチは目の痕をなでた。

     もう自分に未来は見えない。これからどうなっていくかは、すべて闇の中だ。それがどれほど素晴らしいことか。

     自由というのはそういうことか、と、パッチには思えるのだった。確定していたとしても自分には知ることができない未来、だからこそどきどきできてわくわくできて、さらには希望も持てるのだった。

     希望が実るまでは長い時間がかかった。『シティ』という信号を送れるだけ送ったのが逆効果だったのか、最初の一万年は、反応と呼べるものはなにもなかった。

     一万年を二百五十三日過ぎて、ようやく最初の船が、『シティ』という信号を出してやってきた。

     緊迫した時間が流れ、そして二隻の船はチューブを開いてドッキングした。

     アストラル・ボディの触手がいたるところで触れあい、互いにこの長い年月の間感じていた孤独、絶望、焦燥、そして今、わずかながら感じられた希望と、そしてあの……。

     爆発的な歓び!

     あれがあったから二百五十万年もの間努力することができたのだ。今やこのでっち上げ同然だった『シティ』に参加する船は一万隻の大台に乗りつつある。

     それでも、往時の数億分の一だが、さらに二百五十万年の時が過ぎたら、一万隻がさらに一万倍になっているかもしれない。

    「なあ、副長」

     パッチは天井を見上げ、シルクにいった。

    「おれは悲観的すぎるかな」

    「なにをいうかと思えば」

     シルクは糸を一本垂らしてきた。

    「お前さんは悲観的というよりも、妙なジョークが好きだというほうが合っておる。どうせ、前の船長を殺した後に立てこもったときも、心の中では、一世一代の冗談をひとつぶちかましてやろう、だなどと考えておったんじゃろ?」

     パッチは苦笑いした。

    「おれってとことんまで信用がないんだな」

    「だから今がある、ともいえるのではないかのう。中途半端な信頼はかえって毒じゃ」


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