偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    偉大な男のものがたり 1,000,000,000日目 4

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     そんなおれに向かってタモツはいったものだ。パッチはさらに書き進めた。

    『タモツはふいにおれの手をつかんだ。

    「ぼくたちはすごいことをやったんだ。小説の登場人物でしかないのに、書いている作者をやっつけて、そして反省までさせてしまったんだから。もし、今ぼくたちがここにこうしていることが、小説の上にすぎなくても『現実』と呼べることだとしたら、これからの世界は、あの悪意しか持っていなかったポール・ブリッツの作品ではなく、ポール・ブリッツと、パッチさんやそのほかの船の乗組員たち、もしかしたらこの宇宙じゅうに散らばっている、ぼくたちみたいに船に乗っている人たちみんなとの『共著』になるんだ。どんどん単純にして書きやすくされた、あの暗くて救いのない宇宙ではなくて、もっと生きるのに意味のあるような、そんな宇宙に到達できるよう、みんなで力を合わせて書いていくんだ」

     もし、その言葉がなかったら……』

     パッチは天井を見た。笑われているような気がしたからだ。

     ……気のせいか。

     パッチは続きを書いた。

    『もし、その言葉がなかったら、おれは二百五十万年間も続くこの『シティ』再建の作業を、やろう、という気にすらならなかっただろう。あのときのおれは、運命と、それをもたらしたあの船長に対する復讐心しかなかったからだ。正直、殺した後は成り行きにまかせよう、としか考えていなかった。

     共著。

     作者なくしてこの世界は成り立たないが、だからといって登場人物たちは、決められたことをしゃべる以外はすべて沈黙を守るべきだ、ということもないだろう。おれたちは不平をこぼし、運命に怒り、そして喜びを自分たちで見つけ出してもいいはずだ。

     たとえおれたちの知るポール・ブリッツという存在、作者というものが存在しなかったとしても、それは変わらない。おれたちはおれたちの手で世界の未来を切り開き、無数の間違いはするものの、おれたち皆が納得して生きていける世界を作らなければならないのだ。

     親指の爪に手をかけ、焦点核を取り外そうとしているタモツが最後にいった言葉はこれだった。

    「なにが無謀なことで、なにが頭のいい行為かはわからないけど、ぼくは自分がこれからやることを信じる」

     タモツは焦点核を外した。

    「さようなら、パッチさん」

     そしてタモツは行ってしまった。

     おれはいまだに後悔しているのだが』

     パッチは両手で顔を覆った。どうしてあのときいうことができなかったんだろう。

    「タモツ、お前にはほんとの知恵と勇気があった。お前は本当に偉大な男だった……」


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