偉大な男のものがたり(長編児童文学・完結)

    インタビュー風あとがき

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     もう八月の二十九日ですが、完結おめでとうございます。やたらと苦労したそうですね。

     はい。もう自分は早書きのほうだなんて思わないことにしました。一日四百字詰めで三枚書いて、二ヵ月ちょっと書いて二百枚、などと甘い見通しをしていたらとんでもない、という……。

     なんでこんなに時間がかかったんですか。

     このところ、気分が鬱々していたところに、最近のニュースで気力ががた落ちし、さらには変に手を出したツイッターが悪かった。不毛で果てしないつぶやきにやたらと時間がとられて、書くどころの話じゃなかったんです。

     「自業自得」と……。

     やめてください鬱になる。そんなこんなで、当初の予定の六割あたりで止まってしまうことになりました。情けない限りです。

     その件なんですがね。「当初の予定」って、ほんとにあったんですか?

     当初の予定

     わたしが長編を考えるときのくせは知っているでしょう。まず頭と終わりのシーンだけを考えて、中間はアバウトに書いていく、ってやりかた。

     でも、アルファポリスのカテゴリーには「コメディ」とか書いてありましたよ。

     そりゃ、当初の予定では、というか最初の十五枚までは、のりのりの宇宙冒険コメディ小説にしようと考えていたからです。だって真相を見りゃわかるでしょ。船長の正体とか、宇宙に漂う下等生物とか、ギャグ以外のなにものでもないじゃないですか。そのつもりで伏線を張っていたのですけど。

     それがどうして。

     おかしくなってきたのは、「アストラル・ボディ」について書いていたところからです。まったく異なる姿の異星種族がどうやって普通に話ができるんだ、というのを合理化しようと書いていたら、いつの間にか妙に理屈っぽくなってしまい、以降が全部理屈っぽくなってしまった。子供にもわかるように書いたつもりですが、対象年齢は当初の予定よりも五歳くらい上になってしまいますね。

     時間経過については。

     あれも当初からの予定です。本来ならば、「100日目」「1000日目」で読者の度肝を抜いて、「SFには大風呂敷も必要なのだよ、ふっふっふっ」とか余裕のコメントをぶっこくつもりだったんですが、書けないでいるうちに「100日目」と「1000日目」が最悪のタイミングで発表せざるを得なくなり、ああいうことに。毎日三枚ずつ更新していれば、いつものペースのはずが、こりゃなんだ! と読者をびっくりもさせられたでしょうが、あれじゃあ「ポールさん今度こそほんとにおかしくなったんだな。気の毒に」としか思われませんよ。ううう。

     それはうがちすぎた見方かと思いますが、まあそうですよね、普通。

     あなたなにげにひどいこといいますね。

     失礼。それでは、今回、目標にしていた小説とかあったら教えていただきたいんですが。

     目標

     読んでない人のためにタイトルは伏せますが、北杜夫先生の児童文学です。

     ははあ。それにあこがれて。

     あこがれたんじゃありません。反発を覚えたんです。

     は、反発?

     長編を読んできて、最後に、「旅はまだまだ続く」という形で終わりにするのはないだろう、と。それは読んできた人間に対して非礼でしかない。冒険に始まりがあるのなら、きちんと終わりもなければならないはずです。終わりがない、という話でも、それが終わりだ、となっていなければならないはずです。ディレイニーの「ノヴァ」なんて鮮やかでスマートでしたな。あれはいいSFで。

     話がずれてますけど。

     すみません。どうせやるんだったら、自分は大笑いの果てに終わらせてやろう、と考えました。あんな鬱展開になるとは思いもしてませんでしたよ。

     鬱の話をするとよけい鬱になると思うので話を変えます。登場人物についてですが。

     登場人物

     パッチが片目なのは、もちろん、北欧神話の「オーディン」がモデルです。ミミルの守る「知恵の泉」の水を飲むために、片目をくれてやったガッツな神様です。小学生のころ百科事典を読んでぞくぞくし、項目をたどって小学生ながらラグナロクなんて言葉まで知ってました。

     小学生が、オーディンをどこから。

     当時月刊コロコロコミックで「ウルトラマン80」のコミカライズがやっていて、そこに出てくる敵幹部のひとりが「オーディン」って名前で。いやああのころのかたおか先生は面白いマンガ描いておられましたなあ。

     話を戻したいんですが。

     すみません。そういうわけで、主なキャラクターは、船長と、パッチと、保くんだけだったのです。それがほんとに船長とパッチと保くんだけの話になってしまうとは。ううう。

     船長のモデルは?

     どくとるマンボウの北先生から、「航海記」ものにしようと考えたわけですので、モデルは北先生……いやそれは先生に悪いしフェアでもないな。威厳があるように見えるけれど中身はからっぽ、という船長像にしようと考えてました。なにせ正体はアレなので。

     アレですよねえ。いろんな意味で。

     ちくちく来るんですけど。

     失礼しました。保くんは?

     冒険に巻き込まれる羽目になるごく普通の、内向的な小学生という、わたしの小説によく出てくるタイプのガキです。ひたすら波風立てない、事なかれ主義ののび太くんというところですか。

     これはまた……なんというか……いろいろとつらい子供時代だったんですね。

     だれもわたしの子供時代の話だなんていってません!

     失礼しました。メタフィクションについてですけど。現実と虚構についておうかがいを。

     現実と虚構

     昭和の終わりから平成のはじめをSFに耽溺して過ごした人間にとってはやりたいものなんですよメタフィクション。現実と虚構の交雑ってやつ。あのころやたらとはやりましたからねえ。コアなSFファンを目指していた中高生にとって、ディックの影響を強く受けた当時の日本作家のSF作品は、ディックのそれよりもわかりやすくて面白かったんです。

     そんなもんですか。

     メタフィクションが好きすぎて大学は文学部のそれも哲学科に。もしもあのとき親のいうことを素直に聞いて法学部に入っていたら、めちゃくちゃ鼻持ちならない人間か、めちゃくちゃな人生の末にホームレスになっていたと思います。

     あの。

     今は人生の有為転変の末にめちゃくちゃな人生の末になんとかホームレスにもならないで生きてます。今ならこの赤裸々な自伝風私小説風完全フィクションの同人誌が一冊わずか一万円で。フリーダイヤル0120の

     わーっ、あまりの貧乏生活におかしくなったーっ! これでインタビュー風あとがきを終わりにします! 終わりといったら終わり! だめだこりゃ。

     
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    自分が小説についてなにかいいわけしたいとき、インタビュー形式は便利です。なにせ質問してほしいところだけをインタビュアーに質問させればいいので(^_^;)

    読んでくださってありがとうございます(^_^)/

    Re: 野津征亨さん

    なにせいちばんぶいぶいいわせてたのが前世紀の話ですし(^_^;)

    ぶいぶいいわせてたといっても多くて200部だからなあ(^_^;)

    当時の同人誌には、捨てメアドなどないころでしたので、当時の住所がもろに載っていたりもします。もちろん本名もばっちり(^_^;)

    現在個人的に保存版を編集中。いつ終わるかわかったもんじゃないですが。

    Re: 椿さん

    それについては禁則事項で(笑)。

    あれはたしかに小説としてはビルドゥングズ・ロマンとしてまとまっているのですが、あまりにも、「途中で収拾がつかなくなってきたのでやめました」感が漂うのが納得いかず……その結果できたのがもっと納得いかない小説だったという(^_^;)

    雑念が入ったからでしょうねきっと。

    うむむ。

    Re: カテンベさん

    自分としてはそういう展開ももちろんアリなのですが、それではあまりに当たり前だろうと。

    すべてが単一になることは、その個々の部分から復讐を受けるのではないか、という考えがありました。

    それを書いているうちにいつの間にかホッブズの問題と対決せざるを得なくなってしまい。

    リヴァイアサンとしてのなにかを否定するところから、いくらかまともな社会が生まれ、それが人間としての平衡状態と呼べるものになるのではないか、という月並みな結論になってしまいました。

    そうでなければ保くんをふたたび下界へかえせなくなるのではないか、と。

    ほんとはもっとサクサク進む小説のはずだったんですが……。

    NoTitle

    こういうあとがきも新鮮ですね。
    読んでいて楽しいです。
    夏の児童文学だと思えば、楽しい夏のうたげですね。
    楽しませていただきました。
    ありがとうございます!!
    <m(__)m>

    まずは連載完了お疲れ様でした。

    インタビュー風あとがき、新鮮ですね。
    質問途中でだいぶ横道にそれかけていたのが気になるところですが(笑)
    SFはこれまで殆ど手を出したことのないジャンルでしたので、何ともはや……うまい表現が出てきません(汗)

    あと、同人誌の件、驚きました(笑)
    残念ながら我が同僚のミリヲタの中にポール様の既刊を持つ者はおりませんでした。
    結構なガチヲタ(軍事方面の)ばかりなのですが、うむむ。

    NoTitle

    それって船乗りクプ……?(自粛) 
    あの終わり方は自分も肩透かしだったというか、途中まで面白かっただけに最後が気になった作品でした。
    今、思うとあれは子供向けでも、児童文学でもないんだなーって気がします。
    少し疲れた大人のための物語……そんなものだったのかも。

    精神だけの存在で、食事やとか、肉体的な欲求がなくて知識欲と生存欲だけ、みたいな世界に思えてたから
    アストラル・ボディというもので、それぞれが個を保持している意味がいまひとつわからなかったわ
    最終的には全てを取り込んでいって一体化していく展開かと予想していたの
    なので偉大な男、てのが、それっぽい要素もありそなポールブリッツのことでした、てオチかと思てたんやけどな〜σ(^_^;)
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