映画の感想

    「加藤隼戦闘隊」見た

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     「ブログDEロードショー」の「勝負映画」企画参戦第二弾である。太平洋戦争における空の勇者たちを描いた戦争映画の古典的作品、「加藤隼戦闘隊」! 全編これ勝負といえよう!

     まさか金曜ロードショーで「GODZILLA」がやるとは思ってもいなかったので、のんびりDVDでこっちを見てしまった。一生の不覚に思えるけど、円谷つながりだからいいよね。

     で、この大戦真っただ中に作られた国策映画のほうであるが。

     正直、「ハワイ・マレー沖海戦」の高揚感を見た後では、序盤は「苦労してるな日本……」という感じを受けた。もう何にもない原っぱという感じである。

     見栄を張って字幕オフで見たので、正直セリフが聞き取れないこともしばしば。

     だが、主役の藤田進と、なんだかんだいっても後の円谷御大の率いる特撮班は、この映画をどきどきしながら見られるものにしていた。

     藤田進演じる加藤部隊長のかっこいいこと。全体的に丸くて、笑うとやたらと愛嬌がある。そして真剣な表情を作ると場の空気が一瞬でシリアスモードになるのだ。戦中だから出てきたような役者だ。今の日本ではこういう人出てこないだろうな。出てきたとしても主役をやらせてくれるとは思えん。

     なんだかんだいって、スターがひとりいるだけで映画ってもんは締まるもんなんだな、と思った。演技の巧拙ではなく、スターはスターだからスターなのだ。誰が文句言おうとも藤田進はその意味でまことのスターであった、と思う。

     日本のお家芸であるミニチュア特撮も、円谷英二がやりほうだいにやっている。爆撃シーンでは、後のウルトラセブンの第一話で出てくるあの大破壊シーンはここに源流があるのだな、と思うくらい火薬を派手に使ってボッカンボッカンぶっ壊している。まことに精神衛生によろしい。

     だが。

     見終わった後の、いや見ている中でも感じたこの空疎さはなんだろう。

     「勝負映画」として見たのだが、「勝負」にかけるカタルシスが感じられないのだ。ただ空虚なだけ。

     いろいろと考えた末、「敵がオブジェだからではないか」という結論に達した。

     なにせ、加藤隼戦闘隊がいくら活躍しても、敵は次から次へと、終わりなくどんどん出てくるのである。同じ人間というより、いや人間は後でちらっと出てくるのだが、無限に続く昔のシューティングゲームの敵キャラのように、あくまで無表情なロボットとして出てくるのだ。

     これはつらい。

     ゲームでいえば、ステージをクリアしていることはしているのだが、「目標を達成しました! ゲームクリアです」というのが存在しないのだ。「ハワイ・マレー沖海戦」では、ハワイで敵艦隊撃滅! マレーで敵巡洋戦艦撃沈! という明確なゲームクリアがあったが、こちらのほうでは「加藤部隊長が死にました」というバッドエンド以外にエンドの方法がない。

     藤田進が明るい、親しみを持てるパイロットをやっているからこそ、その「連戦連勝の果ての突然の死」が、おさえがたい「空虚」として、胸にぽっかりと穴をあける。

     それでいて徹頭徹尾、戦意高揚映画として撮られているから、「戦争の虚しさ」を感じさせるということはまったくない。

     ただ空虚である。「空虚であるとも空虚でないともいえないという意味において、空虚は空虚なのだ」とフランスの某思想家だったらいうかもしれない。

     「面白うてやがて悲しき」という言葉があるが、「面白うてやがて」まであって、「悲しき」がないのである。

     たしかにここで「悲しき」を入れたら話はさらに陳腐になるであろうことはこのところのいわゆる「戦争映画」「反戦映画」を見れば一目瞭然ではあるが、この空虚とどちらが罪深いか、と考えると、いちがいに答えも出せないな、という思いにとらわれる。

     そこに、いわゆる「戦勝国」と「敗戦国」の名状しえない決定的な差、というものがあるのだろうか。

     制作者の意図以外のところでいろいろと考えさせられる映画だった。

     ちなみに「GODZILLA」は最後の三十分だけ見ることができた。

     「GODZILLA」についてはわたしは満足である。昔からウルトラシリーズも、ウルトラ戦士と怪獣が戦う最後の五分だけ見れば見た気になっていたガキだったもんで。
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    ~ Comment ~

    Re: かえるママ21さん

    いや、単にレンタル屋へ出かけたら置いてあったので、かれこれ見たいと思っていた映画だから借りてきたという、ただそれだけ……(^^;)

    わたしの映画のチョイスはそんなにおかしなものだろうか。基本的に、ある程度評価の決まった名作ばかりを選んでいるつもりなんだけど……ともやもやしつつ土浦の夜はふけゆく(^^;)

    こんばんは〜^^

    なんだか別の角度から面白そうな予感がしますね。
    敵がオブジェ?.....

    にしても、ポールさんの映画のチョイスが一番興味深いです。^^

    Re: 野津征亨さん

    いや、戦意高揚映画だから、普通に見れば「かっこいい」「痛快な」映画で、「やれー、もっと壊せー♪」な映画なのですが、

    見ているわたしがヒネている、というただそれだけのことで……(^^;)

    この映画、自分も一生のうちに一度は観ておきたいと思っている作品なのですが……時間がナイ(涙)
    ただ、ポール様のご感想を拝見する限り、スカッとするような内容ではなさそうですね。
    うーん、どうしよう。

    Re: 宵乃さん

    ああ、ちょっと説明が足りませんでした。

    バッドエンドならバッドエンドでそれもそれでアリだと思うんですが、

    「バッドエンドになったのに妙にバッドエンド感が薄い」ところに空虚を感じてしまうのであります。

    「面白うてやがて」の段階で話が切れ、空虚な戦意鼓舞で映画が終わっている、という。

    邪推ですが、藤田進氏を主役に「加藤隼戦闘隊」という映画を撮る企画が決まって、順調に進行していたところに、突然加藤中佐が戦死してしまったのではないか、だから結末がああとってつけたようなのではないか、とすら思えてしまうのであります。

    うがちすぎかなあ。

    Re: miriさん

    藤田氏はとにかくいるだけで絵になるんだから、天性の素質というものはあるんだな、と思いました。

    今晩は字幕つけて見ます(^^) 楽しみ(^^)

    NoTitle

    勝負映画企画にぴったりの作品ですね。
    いろいろ考えさせられることや気付くこともあったようで、企画を活用して頂けてよかったです。
    未見なので、いつか観る時はバッドエンドしかない空虚さを意識してみようと思います。
    第二弾もご参加ありがとうございました!

    コメントを有難うございました☆

    記事を読ませて頂き、藤田さんへのお気持ちがよく伝わってきました☆
    素晴らしい俳優さんですよね~!

    >制作者の意図以外のところでいろいろと考えさせられる映画だった。

    こういう映画を今見る意味とか価値とかはやっぱり、製作当時とは全然違うので、それぞれの人がそれぞれに受け止めるしかないのでしょうね~。

    >太平洋戦争における空の勇者たちを描いた戦争映画の古典的作品、「加藤隼戦闘隊」! 全編これ勝負といえよう!

    勝負映画、でしたね~!
    是非字幕つけて見て下さいね☆


    .

    Re: ECMさん

    大滝先生と大野先生のマンガが偉大すぎて、この映画を見終えた後でも、隼といえば零戦より「もっと貧相でパワーがなくて武装が貧弱で急旋回するとシワの寄るビンボー飛行機」というイメージが消えない(^_^;)

    米軍の評価でも「零戦より優秀な戦闘機」とされたことは知ってるけどイメージというのはおそろしい(笑)

    NoTitle

     隼は零戦が秘密にされていたのに対し、映画のおかげで国民的な戦闘機でしたなぁ。
     日本機に防弾は無いと思って撃墜した隼を調べたら、米軍のより厚い防弾板があったそうな。
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