東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ1位 Yの悲劇 エラリー・クイーン

     ←子獲り →10に変えてみた
     わたしが中学生のころだったか、ある日いつものように図書室に来たわたしは、新規の本の中に一冊の文庫本を見つけた。

     文春文庫「東西ミステリーベスト100」である。

     ミステリマニアたちが、古今東西の読書歴の中から投票をし、海外編・日本編それぞれ100位までを決定しようという壮大なプロジェクトだった。

     そしてなによりも中学生のわたしをどきどきさせたのは、そこに書いてある「解説」、それに「あらすじ」だった。

     肝心なところはわからないように書いてあるのだが、なんというか、「東西ミステリーのあらすじ」とでも表現したくなる内容に、わたしは何度となく繰り返し読んでは、想像をふくらませた。ある意味お得で贅沢な本だったといえよう。

     中学卒業後、わたしは古本屋でその本を買い求め、古本街に足を繰り出した……。

     という青春小説じみたものはほっておいて、ひとつひとつ撃墜マークをつけていったその本の数々について語りたいと思う。

     まずは「Yの悲劇」から。

     遭うべきでないときに遭ってしまった、というのがいちばん正しいだろうと思う。エラリー・クイーンの代表作「Yの悲劇」である。押入れから発見したのは、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズなどに夢中になっていた小学三年生のときだった。ガキの耳にも「名作だー、名作だー」という噂は聞こえていたので、家にあったことに感激、さっそく読み始めたのである。

     なんというか、その、今にして思うけれども小学三年生に創元推理文庫版の「Yの悲劇」は無理だ(笑)。分厚さと晦渋さに、第一章すらまともに読み切れずにギブアップした。

     そこでわたしはやってしまったのである。

     「謎解き」をこらえきれずに読んでしまったのだ。

     そこには衝撃的なことが書いてあった。今も、レーンのハムレット荘で空気が凍りついたときのことを生々しく思い出せる。

     未読のかたはそのショックを味わうためだけにでも、「Yの悲劇」を一読されることをお勧めする。謎解きから読むよりは、最初から一頁ずつ読んだほうが面白いと思う。

     しかし、見方を考えればいい体験だったかもしれない。

     そこで、わたしはダイジェスト的に再構成された「Yの悲劇」で起こった事件と、その合理的な解明とをとても面白く思ったからだ。

     そしてラストのレーンの沈黙。

     ここでわたしは思うのである。「解決だけ読んでも面白い」ミステリでよかった……と。

     同じクイーンでも「チャイナ橙の秘密」だったらこうはいかなかっただろう。がっかりのあまりミステリなどは読まない正常人になっていたかもしれない。

     ……ん? そっちのほうがよかったのだろうか。うむむ。

    付記:このわたしが影響を受けた86年度版「東西ミステリーベスト100」のラインナップについては、ウィキペディアに記事があった。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E8%A5%BF%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88100 を参照していただきたい。
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    ~ Comment ~

    Re: limeさん

    なにせあの福永武彦先生をミステリマニアに変えてしまった作品ですからねえ……。でも小学三年生には無理だ。好奇心から最終章を読むなといっても無理だ。(笑)

    この年になったら体力的に無理で……(^^;)

    NoTitle

    「Yの悲劇」・・・。これが私をミステリーの魅力を教えてくれた最初の一冊でしたね。
    中学2年生のころ、男子生徒が、「面白いよ」って貸してくれたこの本。思えば初恋でした。(ミステリーにね)

    なんと・・・まさかポールさんは、衝撃のあのラストから読んじゃったんですね。
    それでも面白いと思えるんだから、やっぱりこれは名作なんだなあ。
    でも。ちゃんと最初から読んでいたら、今頃はもっと「特別な1位」だったかも^^

    Re: 匿名さん

    やりましたやりました。わたしが買った古本には、前に持っていた人らしい人による撃墜マークがついていて、その人の趣味を想像したり、読んでない本には「負けてられん」とかいろいろ思ったものです(笑)

    ……しかも現在継続中(笑)
    • #16491 ポール・ブリッツ 
    • URL 
    • 2015.10/11 07:27 
    •  ▲EntryTop 

    Re: こみさん

    人のことをいえた人間ではありませんが、ミステリでそれをやっちゃあいかんでしょ(^^;)

    艱難辛苦の果てにハッピーエンドにたどり着く普通の小説だったら、それもありだと思いますが。

    最後の一行が強烈な、「Xの悲劇」でなくてよかったですね(^^;)

    まあこんな感じで読んだ本をぼそぼそ書いていくので、のんびりとよろしくです(^^)

    NoTitle

    "謎解きから読むよりは、最初から一頁ずつ読んだほうが面白いと思う。"
    →そりゃそうですよなあ

    それにつけても文春文庫「東西ミステリーベスト100」は格好のガイドになりましたね。読んだらページの端にチェックマークをいれていったものです

    Yの悲劇の悲劇

    私もYではしくじりました。
    これを読んだ中学当時、長編小説を読むときに変な習性がありました。
    まず最後の1ページを読み、ここまでたどり着くぞ、ってつもりで読み始めてたのです。
    で、Yの悲劇では、最後のページにある名前が。
    犯人かどうかはわからなかったんだけど、やっぱり意識しちゃうもんね。
    1位をこんな失敗しちゃうなんて…
    なんにせよ、ミステリーは当時のような無垢な心で読みたいです。
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