映画の感想
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」見た
これ、騒ぐでない。いにしえの健全な中高生男子をテレビにくぎづけにし、そしてなぜだか翌日は新潮文庫の売り上げが伸びたジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラング主演の1981年度の映画ではない。ルキノ・ヴィスコンティがファシスト政権下で撮った、1942年のイタリア映画版のほうであります。当然モノクロ。
で、イタリア・ネオレアリズモの先駆けともいわれているこの作品を見て思ったのだが、
肝心なところでダメだ。
1942年のヨーロッパ大陸の人間に、ハードボイルド映画は撮れない。これはジェームズ・M・ケインの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」ではなく、「妄執」という名のイタリア映画だ。
なにがダメかといって、主役の浮浪者の男が情けなさすぎるのである。マッシモ・ジロッティ、胸毛はあってもあんな泣き言漏らすなよ、なのだ。それが全体を女々しいものにしている。
ファシズム体制下でどれだけ反体制的な映画が撮れたかとかはどうでもいいんだ。原作にあるあの虚無感が、モラルを失った現代的人物がどう表現されているかに、あの小説を原作とする意味があるのではないかと思う。
警察とのやりとりや名誉欲にかられた野心的な弁護士の部分は大幅にカットされ、代わりに自由人ともいうべき「スパニョーラ」と呼ばれる男が出てくるところなんか、もうどこがハードボイルドなんだ、である。
ファシスト政権下のイタリアではあっという間に上映禁止になったそうだが、それはそれだけでファシスト政権というものがダメであることを示しているのではないか。そんなことを思ったりもした。
代わりにイタリアの下層階級の人間がどんな暮らしをしていたのかはとてもよくわかるから、そこに価値があるのかもしれない。
なんかこう、1981年バージョンも見たくなってきたが、グーグルで検索すると、「他のキーワード」に「エマニエル夫人」と出てきたので、もうなんか嫌になってきて寝ることにする。
こんな記事で「ブログDEロードショー」に参加してごめんなさい。
とにかくがっかり……。
で、イタリア・ネオレアリズモの先駆けともいわれているこの作品を見て思ったのだが、
肝心なところでダメだ。
1942年のヨーロッパ大陸の人間に、ハードボイルド映画は撮れない。これはジェームズ・M・ケインの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」ではなく、「妄執」という名のイタリア映画だ。
なにがダメかといって、主役の浮浪者の男が情けなさすぎるのである。マッシモ・ジロッティ、胸毛はあってもあんな泣き言漏らすなよ、なのだ。それが全体を女々しいものにしている。
ファシズム体制下でどれだけ反体制的な映画が撮れたかとかはどうでもいいんだ。原作にあるあの虚無感が、モラルを失った現代的人物がどう表現されているかに、あの小説を原作とする意味があるのではないかと思う。
警察とのやりとりや名誉欲にかられた野心的な弁護士の部分は大幅にカットされ、代わりに自由人ともいうべき「スパニョーラ」と呼ばれる男が出てくるところなんか、もうどこがハードボイルドなんだ、である。
ファシスト政権下のイタリアではあっという間に上映禁止になったそうだが、それはそれだけでファシスト政権というものがダメであることを示しているのではないか。そんなことを思ったりもした。
代わりにイタリアの下層階級の人間がどんな暮らしをしていたのかはとてもよくわかるから、そこに価値があるのかもしれない。
なんかこう、1981年バージョンも見たくなってきたが、グーグルで検索すると、「他のキーワード」に「エマニエル夫人」と出てきたので、もうなんか嫌になってきて寝ることにする。
こんな記事で「ブログDEロードショー」に参加してごめんなさい。
とにかくがっかり……。
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NoTitle
こんばんは。
このヴィスコンティ版は観ていません。
ニコルソンの方は見ました。
かなり忘れていますが、「エマニエル夫人」と比べるようなものではありません。
観る前はかなり妄想したものですが、実際は何じゃこりゃってなもんです。
あの予告は、若者に無駄な想像をさせただけです(笑)
このヴィスコンティ版は観ていません。
ニコルソンの方は見ました。
かなり忘れていますが、「エマニエル夫人」と比べるようなものではありません。
観る前はかなり妄想したものですが、実際は何じゃこりゃってなもんです。
あの予告は、若者に無駄な想像をさせただけです(笑)
Re: blackoutさん
そういうヘタレとはちょっと違うんです(^^;)
この映画での主人公の男は、ここぞというところでもほかのところでも、やたらと泣きごというんです。(^^;)
ほんとダメ男の典型みたいなもので、頭を抱えました。
もしかしたら、ヴィスコンティは、原作から、「マクベス」と「マクベス夫人」のイメージを見出してこう脚色したのかもしれませんが……。
映画を見ていて、「ずるずる腐れ縁してないで、さっさと別れちまえてめーら!」と何度も思いました(笑)
なにぶん原作を読んだのがけっこう前なのですが……あんな原作だったっけ。(^^;)
この映画での主人公の男は、ここぞというところでもほかのところでも、やたらと泣きごというんです。(^^;)
ほんとダメ男の典型みたいなもので、頭を抱えました。
もしかしたら、ヴィスコンティは、原作から、「マクベス」と「マクベス夫人」のイメージを見出してこう脚色したのかもしれませんが……。
映画を見ていて、「ずるずる腐れ縁してないで、さっさと別れちまえてめーら!」と何度も思いました(笑)
なにぶん原作を読んだのがけっこう前なのですが……あんな原作だったっけ。(^^;)
Re: 宵乃さん
ジェームズ・M・ケインの原作は、モラルのぶっ壊れた男と女が女の亭主を殺害し完全犯罪をもくろむのをやたらと乾いた文体でつづるという、ハメットと並ぶ「ハードボイルド派」の先駆的作品といわれています。
思うのですが、これは恐慌の痛手さめやらぬ虚無的なアメリカだから成立している小説であり、それをそのまま、ファシスト政権下とはいえイタリアのどこか楽天的な空気の中に持って行ってもしかたなかったのではないかと……。
ヴィスコンティ、実はこれが初見ですが、うむむむ、ですねえ(汗)
思うのですが、これは恐慌の痛手さめやらぬ虚無的なアメリカだから成立している小説であり、それをそのまま、ファシスト政権下とはいえイタリアのどこか楽天的な空気の中に持って行ってもしかたなかったのではないかと……。
ヴィスコンティ、実はこれが初見ですが、うむむむ、ですねえ(汗)
NoTitle
個人的には、ヘタレなようで、ここぞって時に外さないのは、ルパン3世かなとw
あとマニアックなところだと、封神演義の太公望ですかねw
あとマニアックなところだと、封神演義の太公望ですかねw
NoTitle
あはは、ぜんぜん大丈夫ですよ。私もこの作品、そんなに面白いと思わなかったですし。評判はいいから自分がおかしいのかと思って数年後に再見したけど、やはり微妙でした。
ハードボイルド映画だったんですね。気付きませんでした(笑)
でも、画的に印象に残ってるシーンはいくつかあって、雰囲気は良かったかなと思います。
1981年版はもう、小麦粉まみれで絡み合ってるシーンしか思い出せないなぁ…。
今回もご参加ありがとうございました♪
ハードボイルド映画だったんですね。気付きませんでした(笑)
でも、画的に印象に残ってるシーンはいくつかあって、雰囲気は良かったかなと思います。
1981年版はもう、小麦粉まみれで絡み合ってるシーンしか思い出せないなぁ…。
今回もご参加ありがとうございました♪
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Re: バニーマンさん
いちばん割りを食ったのは天国のケインかもしれません(^^;)