ミステリ・パロディ

    ハメット「ガラスの鍵」幻の第11章草稿

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    第11章 腐れた鍵


     ひと揺れして、列車は闇の中を滑り出した。

    「この町に帰ってくることは二度とないのね」

     ジャネットはいった。

     ネド・ボーモンは口ひげをいじりながら、黙って窓の外を見ていた。

     ジャネットは息をついた。

    「ハメットっていう作家の『マルタの鷹』って本を読んだわ。サム・スペードっていう、心臓が鋼鉄でできたような探偵が出てくるって聞いたけど、ちょっと期待外れだった。惚れた女に裏切られても裏切られても、何度も何度も助けに行く男よ。鋼鉄の心臓どころか、恋する中学生みたいな心臓の人間。鋼鉄に見えるのはただそれを覆い隠しているだけ。そして、女は結局悪女でした、っていうオチ」

     ボーモンは答えなかった。

    「非情だなんていわれているけど、そういう変なところで騎士道的な行動をする人物に、みんな惹かれるものを感じるんでしょうね。でも、あなたは違う。あなたは最初から、わたしが欲しかった。だからあれほどマドヴィッグからわたしを遠ざけようとしたんだわ」

     ジャネットはそんなボーモンを見て、かぶりをふった。

    「そんなことをしながら、義理を立てるために、マドヴィッグのために命懸けで働いて……マドヴィッグに裏切られても裏切られても……そう、まるで」

     ジャネットの顔がこわばった。

    「まさか、ネド……」

     ボーモンは外を見ながら答えた。

    「まさか、なんだ」

     ジャネットの顔は蒼白になっていた。

    「あなたがわたしを連れてきたのは、わたしに好意があったからじゃない……わたしを連れてきたのは、単にポール・マドヴィッグからわたしを引き離すため……」

    「だったら、どうだと」

    「女たちと浮名を流すのは、それは、あなたにとって女というものが、『どうでもいいもの』だったからだわ。あなたは裏切られても裏切られても、何度も何度もマドヴィッグを助けに行った。まるでレディを守る騎士のように。なんてこと、あなたが愛しているのは、最初から最後までただひとり、ポール・マドヴィッグだけだったのね!」

     ボーモンは答えなかった。

    「さっきいった、ハメットって作家は、男色を表すスラングをこっそり仕込んで、気がつかなかった検閲官を陰で笑っていたそうだけど、もし、あなたを、ネド・ボーモンの話を小説に書いたら、誰にも気づかれず、男色家が主人公という小説を書いたとしたら……」

    「おれだったら、筆を折るね。誰にも気づかれなかったら、適当な長編をもう一冊書いて、後は金儲けに生きるか、酒を飲むか」

    「答えて、ネド! あなたは、わたしとマドヴィッグ、いったいどちらをより強く愛しているの!」

     ネドは答えなかった。ただ自分の口ひげをいじるだけだった。



     ※ ※ ※ ※ ※



     むろん事実無根なパロディである。

     小鷹信光先生に刺し殺されそうな内容であるなあ。いいのかなこんなもの書いて(^^;)
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    Re: sugataさん

    婦女子のかたがただけにやらせておくにはもったいない(笑)

    モラルについても気にしない(笑)

    NoTitle

    ああ、やっちまいましたねw 昨今こういうのを書いていいのは腐女子の方々だけだと思ってましたがw
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