「ショートショート」
SF
スコットランドもの
“「スコットランドもの」とは、シェイクスピア(別項参照)の四大悲劇のひとつである。
主人公の「スコットランドもの」はグラミスに領地を持つスコットランドの将軍であり、友人のバンクォーとともに、武勲を挙げて城へ帰る途中、三人の魔女から奇妙な言葉をかけられる。「ばんざい、コーダー領主」「ばんざい、王になるかた」という言葉が「スコットランドもの」に、「いずれ子孫が王になるかた」という言葉がバンクォーに。困惑する二人だったが、スコットランド王ダンカンからの伝令が、「スコットランドもの」に、コーダーの領主とする、という言葉を伝える。「スコットランドもの」は喜ぶが、城でダンカン王が王位継承者としたのは息子のマルカム王子であった。予言を信じる「スコットランドもの」は、ある野心を抱く。
「スコットランドもの」は「スコットランドもの夫人」と共謀し、ダンカン王を暗殺する。ダンカン王の王子たちは命の危険を感じ隣国へ逃げたため、王殺害の嫌疑は王子たちにかかる。かくして「スコットランドもの」がスコットランドの王になったが、ダンカン王を殺害したときに聴いた幻聴などにより、その心中はおだやかなものではなかった。憔悴が「スコットランドもの」の心をむしばんでいく。
バンクォーの子孫がやがてスコットランドの王になるという予言が頭から離れなかった「スコットランドもの」は、バンクォーとその息子フリーアンスの暗殺をはかる。バンクォーの暗殺には成功したが、フリーアンスには逃げられてしまう。宴席でバンクォーの亡霊を目撃した「スコットランドもの」は取り乱し、また「スコットランドもの夫人」も心を病んでいく。
「スコットランドもの」はふたたび魔女の予言を聴く。「バーナムの森が動かぬ限り、相手が女の股から生まれたものでないかぎり、『スコットランドもの』は死ぬことはない」という予言を聞いた「スコットランドもの」は安堵するが、バンクォーの息子の存在が心から離れない。やがてダンカン王の重臣だったマクダフがイングランドへ亡命する。怒った「スコットランドもの」は軍を率いてマクダフの城を襲い、マクダフの妻と息子を虐殺する。それまでにもあった「スコットランドもの」の暴政もあり、人々の心は「スコットランドもの」から離れていく。
マクダフに面会したマルカム王子は、マクダフの心中を試した後、「スコットランドもの」を打倒するための軍勢を集めていることを明かす。使者から妻と息子が殺されたことを聞いたマクダフは、「スコットランドもの」への復讐を誓う。
スコットランドでは、「スコットランドもの夫人」が狂気に陥っていた。洗っても洗っても手に付いた血が落ちぬ、と繰り返す「スコットランドもの夫人」の狂乱には、なすすべがない、と医者は「スコットランドもの」に告げる。
やがて「スコットランドもの」を倒すためにマルコム王子をいただいたイングランド軍がスコットランドに侵攻してくる。味方は次々と離反し、「スコットランドもの」は予言を信じて城に立てこもる。やがて物見から「バーナムの森が動いている」との報告を受け、「スコットランドもの」は動揺する。「スコットランドもの夫人」が狂死したとの知らせを受けて自暴自棄になった「スコットランドもの」は城を捨てイングランド軍を相手に野戦を挑み、敵の将軍を次々と打ち破っていくが、立ちはだかったのはマクダフだった。「スコットランドもの」は自分は女の股から生まれたものには殺されない、というが、マクダフの答えは「おれは母の腹を裂いて生まれてきたのだぞ」というものだった。マクダフは帝王切開で生まれたのである。運が尽きたことを悟った「スコットランドもの」はマクダフと戦い、殺される。かくして戦争は終わり、マルコム新王の誕生を皆が祝うのであった。
この戯曲であるが、残念ながら現在では正確な題名、および主要登場人物の一部の名前が不明なのである。「ハムレット」「オセロー」「リア王」などに比すべき人間ドラマなのであるが。題名その他が不明になった原因は諸説あるが、もっとも有力な説は、「もとの題名や登場人物などの名前を発音すると災いが起こった」というものである。「スコットランドもの」というのは、それを言い換えるための、便利な代替品だったのだろう。地球時代は劇場での忌み言葉だったものが、やがてその範囲が拡大されていき、歴史から抹殺されてしまうほどの、そう、あの最も楽観的な推定でも人類の最大七十八パーセントが死んだといわれている「大統合戦争」とも同等な災害を引き起こすレベルの……”
「あなた。また地球時代の雑文書いてるの? 大学教授って、ほんと、文字が愛人なのねえ。ちょっとは、この子をあやしてあげてくださいな。それどころじゃない? 締め切り? ……よしよし、困ったお父さんね、あっち行きましょうね、マクベス」
主人公の「スコットランドもの」はグラミスに領地を持つスコットランドの将軍であり、友人のバンクォーとともに、武勲を挙げて城へ帰る途中、三人の魔女から奇妙な言葉をかけられる。「ばんざい、コーダー領主」「ばんざい、王になるかた」という言葉が「スコットランドもの」に、「いずれ子孫が王になるかた」という言葉がバンクォーに。困惑する二人だったが、スコットランド王ダンカンからの伝令が、「スコットランドもの」に、コーダーの領主とする、という言葉を伝える。「スコットランドもの」は喜ぶが、城でダンカン王が王位継承者としたのは息子のマルカム王子であった。予言を信じる「スコットランドもの」は、ある野心を抱く。
「スコットランドもの」は「スコットランドもの夫人」と共謀し、ダンカン王を暗殺する。ダンカン王の王子たちは命の危険を感じ隣国へ逃げたため、王殺害の嫌疑は王子たちにかかる。かくして「スコットランドもの」がスコットランドの王になったが、ダンカン王を殺害したときに聴いた幻聴などにより、その心中はおだやかなものではなかった。憔悴が「スコットランドもの」の心をむしばんでいく。
バンクォーの子孫がやがてスコットランドの王になるという予言が頭から離れなかった「スコットランドもの」は、バンクォーとその息子フリーアンスの暗殺をはかる。バンクォーの暗殺には成功したが、フリーアンスには逃げられてしまう。宴席でバンクォーの亡霊を目撃した「スコットランドもの」は取り乱し、また「スコットランドもの夫人」も心を病んでいく。
「スコットランドもの」はふたたび魔女の予言を聴く。「バーナムの森が動かぬ限り、相手が女の股から生まれたものでないかぎり、『スコットランドもの』は死ぬことはない」という予言を聞いた「スコットランドもの」は安堵するが、バンクォーの息子の存在が心から離れない。やがてダンカン王の重臣だったマクダフがイングランドへ亡命する。怒った「スコットランドもの」は軍を率いてマクダフの城を襲い、マクダフの妻と息子を虐殺する。それまでにもあった「スコットランドもの」の暴政もあり、人々の心は「スコットランドもの」から離れていく。
マクダフに面会したマルカム王子は、マクダフの心中を試した後、「スコットランドもの」を打倒するための軍勢を集めていることを明かす。使者から妻と息子が殺されたことを聞いたマクダフは、「スコットランドもの」への復讐を誓う。
スコットランドでは、「スコットランドもの夫人」が狂気に陥っていた。洗っても洗っても手に付いた血が落ちぬ、と繰り返す「スコットランドもの夫人」の狂乱には、なすすべがない、と医者は「スコットランドもの」に告げる。
やがて「スコットランドもの」を倒すためにマルコム王子をいただいたイングランド軍がスコットランドに侵攻してくる。味方は次々と離反し、「スコットランドもの」は予言を信じて城に立てこもる。やがて物見から「バーナムの森が動いている」との報告を受け、「スコットランドもの」は動揺する。「スコットランドもの夫人」が狂死したとの知らせを受けて自暴自棄になった「スコットランドもの」は城を捨てイングランド軍を相手に野戦を挑み、敵の将軍を次々と打ち破っていくが、立ちはだかったのはマクダフだった。「スコットランドもの」は自分は女の股から生まれたものには殺されない、というが、マクダフの答えは「おれは母の腹を裂いて生まれてきたのだぞ」というものだった。マクダフは帝王切開で生まれたのである。運が尽きたことを悟った「スコットランドもの」はマクダフと戦い、殺される。かくして戦争は終わり、マルコム新王の誕生を皆が祝うのであった。
この戯曲であるが、残念ながら現在では正確な題名、および主要登場人物の一部の名前が不明なのである。「ハムレット」「オセロー」「リア王」などに比すべき人間ドラマなのであるが。題名その他が不明になった原因は諸説あるが、もっとも有力な説は、「もとの題名や登場人物などの名前を発音すると災いが起こった」というものである。「スコットランドもの」というのは、それを言い換えるための、便利な代替品だったのだろう。地球時代は劇場での忌み言葉だったものが、やがてその範囲が拡大されていき、歴史から抹殺されてしまうほどの、そう、あの最も楽観的な推定でも人類の最大七十八パーセントが死んだといわれている「大統合戦争」とも同等な災害を引き起こすレベルの……”
「あなた。また地球時代の雑文書いてるの? 大学教授って、ほんと、文字が愛人なのねえ。ちょっとは、この子をあやしてあげてくださいな。それどころじゃない? 締め切り? ……よしよし、困ったお父さんね、あっち行きましょうね、マクベス」
スポンサーサイト
もくじ
風渡涼一退魔行

もくじ
はじめにお読みください

もくじ
ゲーマー!(長編小説・連載中)

もくじ
5 死霊術師の瞳(連載中)

もくじ
鋼鉄少女伝説

もくじ
ホームズ・パロディ

もくじ
ミステリ・パロディ

もくじ
昔話シリーズ(掌編)

もくじ
カミラ&ヒース緊急治療院

もくじ
未分類

もくじ
リンク先紹介

もくじ
いただきもの

もくじ
ささげもの

もくじ
その他いろいろ

もくじ
自炊日記(ノンフィクション)

もくじ
SF狂歌

もくじ
ウォーゲーム歴史秘話

もくじ
ノイズ(連作ショートショート)

もくじ
不快(壊れた文章)

もくじ
映画の感想

もくじ
旅路より(掌編シリーズ)

もくじ
エンペドクレスかく語りき

もくじ
家(

もくじ
家(長編ホラー小説・不定期連載)

もくじ
懇願

もくじ
私家版 悪魔の手帖

もくじ
紅恵美と語るおすすめの本

もくじ
TRPG奮戦記

もくじ
焼肉屋ジョニィ

もくじ
睡眠時無呼吸日記

もくじ
ご意見など

もくじ
おすすめ小説

もくじ
X氏の日常

もくじ
読書日記

~ Trackback ~
卜ラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~