「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
3 吸血鬼を吊るせ(完結)
吸血鬼を吊るせ 2-13
13
自分が夢の中にいることを自覚して見る自分の夢というのは、いつになっても変な感じだ。よくマンガや小説などで、異世界に飛ばされてしまった主人公が、自分が体験しているこれは夢なんだ、と無理に思い込もうとするシーンがあるが、これとは気分的にかなり違う。
あえていうとしたら、世界のほうが半覚醒状態にある感じ、だろうか。
わたしは醒めているのに世界はまだ半分眠っている……。
眼前に広がる光景が、またその感覚にぴったりなものだった。
白と黒の完全なモノトーンの世界。神秘的な光景といってもいいだろう。この身を切るような寒風さえ吹いていなければ。そう、ここは極地だった。遭難中のスコット隊が見た南極の景色というのがこんなものかもしれない。大地は一面の白、空は厚い雲の灰色。そしてわたしの身体が黒いシルエットとして見える。
正直、「身を切る」という表現さえ不適当だった。わたしは自分の凍死すら深刻に心配した。冷静に考えると、自分で見ているわたしの夢なのだから、そこでこの身が精神的に死ぬわけもないのだが。
しかし寒い。寒すぎる。わたしは耐えかねて、自分の身体の周りに防寒衣を物象化させた。それでもまだ寒かったが、なんとか我慢できる程度にはなった。
あてもなく一歩を踏み出した。ざくり、という触感。間違いない、氷だ。
しばらく歩く。
歩いているうちに、いつの間にか周囲は闇になっていた。
わたしは自分が狭苦しい部屋に閉じ込められてしまったことに気づいた。
がくり、と世界が揺れた。
はっと気がつくとすでに渋谷の手前だった。
さっきの夢を見たのは、はたして新宿を通過しているときだったのだろうか。わたしにはなんともいいかねた。
どうするか。
今、見た夢を天啓だと信じて、これがなにを意味するのかをしっかりと考えるべきだろうか。
または、もう一度山手線を乗り換え、再び夢の世界を探索するか。
わたしは、あの夢を天啓と信じることにした。
何度も夢に入るのを繰り返すというのもたしかに選択としてはありだが、それによって夢のイメージが散乱するのが恐ろしかった。
もう一度夢に入るのは、答が得られないことがはっきりしてからでかまわないだろう。
列車が渋谷駅についた。わたしは列車を乗り換えた。今度は眠りはしない。
夢の内容を考えるのは新宿でのことにしよう。
自分が夢の中にいることを自覚して見る自分の夢というのは、いつになっても変な感じだ。よくマンガや小説などで、異世界に飛ばされてしまった主人公が、自分が体験しているこれは夢なんだ、と無理に思い込もうとするシーンがあるが、これとは気分的にかなり違う。
あえていうとしたら、世界のほうが半覚醒状態にある感じ、だろうか。
わたしは醒めているのに世界はまだ半分眠っている……。
眼前に広がる光景が、またその感覚にぴったりなものだった。
白と黒の完全なモノトーンの世界。神秘的な光景といってもいいだろう。この身を切るような寒風さえ吹いていなければ。そう、ここは極地だった。遭難中のスコット隊が見た南極の景色というのがこんなものかもしれない。大地は一面の白、空は厚い雲の灰色。そしてわたしの身体が黒いシルエットとして見える。
正直、「身を切る」という表現さえ不適当だった。わたしは自分の凍死すら深刻に心配した。冷静に考えると、自分で見ているわたしの夢なのだから、そこでこの身が精神的に死ぬわけもないのだが。
しかし寒い。寒すぎる。わたしは耐えかねて、自分の身体の周りに防寒衣を物象化させた。それでもまだ寒かったが、なんとか我慢できる程度にはなった。
あてもなく一歩を踏み出した。ざくり、という触感。間違いない、氷だ。
しばらく歩く。
歩いているうちに、いつの間にか周囲は闇になっていた。
わたしは自分が狭苦しい部屋に閉じ込められてしまったことに気づいた。
がくり、と世界が揺れた。
はっと気がつくとすでに渋谷の手前だった。
さっきの夢を見たのは、はたして新宿を通過しているときだったのだろうか。わたしにはなんともいいかねた。
どうするか。
今、見た夢を天啓だと信じて、これがなにを意味するのかをしっかりと考えるべきだろうか。
または、もう一度山手線を乗り換え、再び夢の世界を探索するか。
わたしは、あの夢を天啓と信じることにした。
何度も夢に入るのを繰り返すというのもたしかに選択としてはありだが、それによって夢のイメージが散乱するのが恐ろしかった。
もう一度夢に入るのは、答が得られないことがはっきりしてからでかまわないだろう。
列車が渋谷駅についた。わたしは列車を乗り換えた。今度は眠りはしない。
夢の内容を考えるのは新宿でのことにしよう。
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ナイトメア・ハンターはもっと即物的に考えます。
というか精神分析ばかりやっていたら話が進まないので(^^)
>うつさん
うつさんの小説もおもしろいじゃないですか。
おバカたちがどんな陰謀をめぐらすのか楽しみです。
それにしても、大バカもヒネてはいるもののさほど悪いやつではなさそうですね。
陰謀の全責任をかぶって自滅、などという展開ではないといいなあ(^^)