東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ10位 シャーロック・ホームズの冒険 アーサー・コナン・ドイル

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     まあこの本が偉大なことはわたしが別に今さら語る必要もないし、なにせわたし自身がシャーロック・ホームズとワトスン博士をパロディショートショートでさんざんサカナにしてきた。そもそもこのブログを立ち上げたのも、自作のホームズ・パロディ「小さな勝利」を読んでもらいたいがためだった。ほんとホームズさまさまである。

     もうほとんどのことはいわれつくしているので今回はどうでもいいことを書いてお茶を濁すことにする。

     そんなわけでホームズをもう一度考えてみたのだが、ミステリ史においてこの小説が明らかにした革命的な教訓は、これだろう。

    「名探偵はなんでもいいからとにかく強烈なやつにすべし」

     ポオのデュパンも、ガボリオのルコックも、とにかくこいつ以前の名探偵は、名前を出されてもぱっとその姿が想像しにくい。

     ホームズは強烈である。帽子、パイプ、虫眼鏡。これだけで、「あっ、名探偵だ」とみんな納得してしまう。探偵だ、ではなく「名探偵だ」というのがポイントだ。

     こと日本に限っては、ホームズに匹敵する「老若男女みんながその衣装だけで『あっ、こいつは』と思ってしまうミステリの主役」は二人しかいないだろう。シルクハット、片眼鏡、口髭だけで「あっ、泥棒だ」と思ってしまうアルセーヌ・ルパンと(残念ながら怪人二十面相は律儀に毎回変装をしていたためにかえって「こういうやつだったよな」というインパクトは薄い)、帽子と着物とフケだけで「あっ、金田一耕助だ」と思ってしまう金田一耕助である。トレードマークのもじゃもじゃ頭では明智小五郎もそうだが、D坂のころの明智小五郎をそのまま出せば、半数の人間は「あっ、金田一耕助だ」と思ってしまうのではなかろうか。……浅見? コナン? ルパン三世? 知らん!

     そう。ホームズこそ、「ビジュアル」で売り出して成功した史上初の名探偵なのだ。もしシドニー・パジェットが挿絵を描いていなかったら、ホームズも「ミステリ黎明期に登場したユニークな探偵」で終わっていたかも、いや、ミステリという文学形式自体が存在していたかどうかも怪しいのだ。

     「ホームズ以降最初のミステリ史上重要な探偵」であるマーティン・ヒューイットをミステリファン以外の誰が覚えているだろうか。かなりの数書かれていて、しかも中には「レントン館盗難事件」「ディクソン魚雷事件」といった傑作があるにもかかわらず(異論は認めるけどわたしは好きだ)、ほとんど歴史に埋没してしまっている。その理由の最たるものが、「ビジュアル的にぱっとしない」からではないかとわたしには思えるのだ。

     だからマーティン・ヒューイットの未訳短編集も出してよ論創さん!

     ……なんの話をしていたんだっけ。
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    ~ Comment ~

    Re: 大海彩洋さん

    でもあまりエキセントリックに過ぎるとこれまた……ってやつで、「亡命した東欧の王族で外にも出ずに毎日阿片に耽溺して暮らし、博学多彩で容姿端麗、ワトソン役の持ち込んでくる事件を新聞記事を読むだけで解決してしまう。しかもその推理のひとつひとつにペダントリーがぎっしり」なんて名探偵だと、読者のほうがついていけなくて引いてしまう(笑)。

    やたらと読みにくいことを差し引けば、わたし大好きなんですけどね、プリンス・ザレスキー……。

    う~む

    そう言えば、顔のシルエットだけで「○○だ!」ってわかる探偵はホームズだけかしれませんね。ルパンも分かるっちゃ分かるけれど(あ、探偵じゃなかった)。私もあのちょっとエキセントリックなところがホームズの一番の魅力だと思うけれど、それがビジュアルと相まってあのユニークなイメージになったんですね。
    後からどんな探偵を生み出しても、やっぱり敵わない名探偵たちがいっぱいいるんですね。

    Re: 椿さん

    百年経った今でもホームズのあの帽子は世界の名探偵のシンボルで、東洋のアニメの主人公もかぶったりしてますからねえ……。

    ルパンもルパンで、警察に味方してみたり私立探偵事務所を開いたり、ときには特捜班になってみたりして、けっこうその場のノリで生きてるような人でありますな。でもそうした後期ルパンも実はけっこう好きだったりします(^^)

    NoTitle

    キャラ立ちは大切ですね。
    ホームズを受けて、どの推理作家も『自分の名探偵のキャラをいかに立てるか』を模索しているようです。
    ルパンは後に行くほどキャラぶれてますが(^_^;) ホームズはその点すごい。

    Re: LandMさん

    「ストランド」誌はムチャクチャ売れたそうですからねえ。

    そのせいかドイル先生のSFや歴史小説の影が薄いのはちょっと残念です。「マラコット深海」とか好きなんですけど。

    NoTitle

    確かに。ビジュアルのインパクトは強い。
    あの時代のスーパーヒーロがシャーロックですからね。
    ミステリーの革新をした人物と作品なのは揺るぎないですね。

    Re: 黄輪さん

    数的に膨大な登場人物の顔の造形をすることを考えただけで目が回りそうです(^^;)

    パジェットの絵、というよりは、パジェットが印象的に使ったシンボルとしての帽子、パイプ、虫眼鏡が「名探偵としてわかりやすかった」のでしょうねえ。

    ドイルが設定すらしていないというか、事前に知っていたら怒り狂ってやめさせたであろうあの帽子を勝手にイラストのホームズに使ったのはパジェットですが、そのためにホームズはサンタクロースと並ぶ地球人の大半が知っている架空の人物になったのでは、と思います。

    「名探偵100人紳士録」という本のホームズの記事で著者のイラストレーター桜井一先生が、「それほどまでにイラストは重要で、もっと敬意を払って原稿料を上げろ」と書かれておられましたが、たぶんミステリ作家のほうもそれほど儲けていないのでは……(^^;)

    Re: 面白半分さん

    さすがにそこまで悟るのは無理だなあ。なにせその中のふたつだけだったらソーラー・ポンズやセクストン・ブレイクと間違えそうだし(そういう問題ではない(笑))

    シルクハットと片眼鏡の印象が強い紳士強盗ではルパンよりもラッフルズのほうが先ですが、ラッフルズはアマチュアでルパンはプロだからなあ。そこらへんで差がついてしまったのかなあ。

    Re: miss.keyさん

    口髭と小男だけではまだポアロというには。

    そもそもあの人の顔にはいろいろと説があって、「卵のような頭」にしても、「ハゲだった」という説、「丸いだけでけっこうフサフサだった」説、「生えていたのは頭の脇だった」説とあって決定打がないという。デビッド・スーシェがもう80年早く生まれていさえすれば(無理)

    金田一耕助については石坂浩二と市川昆がギリギリのところで間に合った感があります。なにせ戦後しばらくは片岡千恵蔵が背広姿で金田一耕助をやってましたし(ウソではない)

    Re: blackoutさん

    単に変人で奇行をすればいいというものでもなく、「イタい人」や「わけのわからん人」というわき道にそれないように「変な人」を貫くのはテクニックが必要ですからねえ……。M・P・シールの作り出した名探偵「プリンス・ザレスキー」なんて、怪しげでわけのわからんことでは頭一つ抜け出てますが、だからといって読むのは一部のマニアくらいのものでしょうし。

    でもある程度「変な人」を定着させることができたら、ステッキで足元を叩いて「この下にトンネルがある」などとムチャなことをいわせてもみんな納得するもんです。

    ポアロは変なこだわりで有名ですが、「小さな灰色の脳細胞」の知名度と「初歩的なことだよ」の知名度を比べれば……(^^;)

    NoTitle

    ビジュアル、本当に大事。
    長いこと小説書き続けてますが、常々そう思っています。
    うちの小説にも絵を描いてくれる人が欲しい……。。

    NoTitle

    帽子、パイプ、虫眼鏡があればホームズと認識してしまいますが
    ホームズ研究家のなんとかさん(名前失念)は
    本の表紙にこの二つのが描かれていれば ホームズ・パロディものとみなし蒐集の対象にしているそうです

    口ひげ、小男

    エルキュール・ポアロはだめですかい?あ、既出だ。

    NoTitle

    シャーロックホームズは、自分もよく読みましたな
    それも小・中学生にw

    ビジュアルもそうですが、個人的には、あの変人ぶりと奇行ぶりが印象に残ってます

    彼にしかわからないロジックというか感覚というか

    同じことはエルキュールポワロにも言えますがw
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