東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ13位 さらば愛しき女よ レイモンド・チャンドラー

     ←2016年 →旅路より・アカカスリ
     ひさかたぶりに再読しようと思ったら村上春樹版の「さよなら、愛しい人」しか手に入らなかった。アマゾンに注文するのも何なので、とりあえず買って読んでみることにした。

     悔しいことに、訳は悪くなかった。しっかりチャンドラーしていた。マーロウは相変わらずかっこよかった。いくらか甘い村上春樹の訳文は、私立探偵としてはあまりにソフィスティケートされているマーロウのワイズクラックや比喩を訳するのにはぴったりである。甘すぎてマーロウがネオ・ハードボイルド探偵みたいに見えるのも確かだが、それはそれで味というものだろう。

     しかしそれよりも再読してわかった一番の収穫は、村上春樹が「さよなら、愛しい人」とタイトルを訳したのは、チャンドラーの意図を考えて訳するのであれば、たしかにこうする以外に訳しようがないな、ということだった。詳細は省くが、「さらば愛しき女よ」では読者に変なバイアスを与えることになる。ある意味小説を破綻させるほどのバイアスで、チャンドラーがタイトルに込めた意味を考えれば致命的といえるだろう。

     そう考えると、この小説のタイトルを「さよなら、愛しい人」としたことをいちばん悩んでいたのは訳者の村上春樹その人かもしれない。たぶん訳者としては「フェアウェル・マイ・ラブリー」というタイトルにしたかったのではないか。しかしそれだと文庫のタイトルとしてはあまりに座りが悪いので折衷策にしたのでは、というのがわたしの推論だ。

     それも踏まえていいたいのだが、この小説を「さよなら、愛しい人」などという女々しいタイトルで売るのは、犯罪的行為じゃないのか村上春樹、である。こんなタイトルをつけるくらいだったら、「第二の殺人者」のほうがまだましだ。もう、とにかく腹が立つ。訳文は許せてもこいつだけは許せん。「さよなら、愛しい人」のどこにタフな男の魂や、悪徳への誘惑などがあるというのだ。ストーリーや作者の意図はともかく、「本の中に流れる空気」から考えると、この小説はやはり「さらば愛しき女よ」でなくてはならないのだ。誤訳だ悪訳だの前に、「先人の偉大な業績から考えると、絶対にやっちゃいけないこと」というものがあるだろう、と思うのだが。

     やっぱりわたしは村上春樹が嫌いなようだ。たとえノーベル賞を獲ったとしてもこの件については許せん。

     さて、「大いなる眠り」でも買ってこようかな。アマゾンは面倒なので本屋で……。まあ村上版しか置いてないだろうけれども。
    関連記事
    スポンサーサイト



    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    【2016年】へ  【旅路より・アカカスリ】へ

    ~ Comment ~

    Re: blackoutさん

    好き嫌いが分かれる作家ですからね。

    あの人の過剰なまでのソフィストケートぶりがわたしは気にくわないのかもしれません。

    でもまあ翻訳は良かったです(^_^;)

    NoTitle

    仲間ですねw

    自分もアンチ村上春樹派だったりしますw

    彼の著書はいくつか軽く読んではみましたが、30分ぐらいで、拒否反応が出ますw
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【2016年】へ
    • 【旅路より・アカカスリ】へ