東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)
海外ミステリ17位 死の接吻 アイラ・レヴィン
誰だよこの本をドライサーの「アメリカの悲劇」と比較なんかしたやつ。そのせいでマイナスイメージが強かったのに、読んでみたらムチャクチャ面白かったではないか。と、この本を読んだときのわたしは思っていた。予備校の寮のすぐ近くに図書館があり、そこに日参してはミステリとSFを読んでいたのである。古いハヤカワポケミスが充実していて、もうちょっと読んでおくんだったと後悔している。タッカー・コウの「刑事くずれ」シリーズなんて面白かったなあ。ミッチ・トビンという、勤務中に浮気してたら相棒を殺され、警察を追われ、精神療法を受けながら妻とのいたたまれない生活を送るもと刑事が主人公のハードボイルド小説。タッカー・コウはドナルド・E・ウェストレイクのペンネームのひとつで、シリーズのどれにも趣向やら意外な真相やらがあってまことに……いやウェストレイクの話ではなくて「死の接吻」についての話だった。
講談社ブルーバックスに、「推理小説を科学する」という本があって、一時期それにハマっていた。たぶん親がわたしを理系の世界に目覚めさせるために買ってきたものだろう。その内容はさすがの講談社ブルーバックス、一切の妥協を許さぬ科学的な視点のもと、藤原宰太郎もハダシで逃げ出すトリックのネタばらしを行い、その大半を「科学的に無理ないしナンセンス」と断罪する恐ろしい本であった。その影響はわたしにとって甚大であり、ミステリを読むのにかかった妙なバイアスを、「いいじゃないかホームズがステッキで地面を叩いて地下にトンネルがあることを推理したって!」「いいじゃないかヴァン・ダインのペダントリーがデタラメだって!」と開き直って解消できるまでには相当長い時間を要した。由良三郎の「ミステリーを科学したら」など、この本に比べれば「面白ミステリエッセイ」である。そこでこの「死の接吻」が取り上げられており、それがまたマイナスイメージというか読む気を疎外してしまうものであった。
「東西ミステリーベスト100」という本で、わたしが救われたと思って感謝しているのは、「死の接吻」という小説の面白さが、第一部の殺人トリックなどにはない、ということを明らかにしてくれたところにある。そのあらすじ紹介と解説を読んで、わたしはのけぞった。ものすごく面白そうな趣向が凝らされていたのである。
最初に書いたように、「死の接吻」を読んだのは浪人中のことだった。二十年前のそのころは、読みたい本を検索すればぱぱっと検索して配達までしてくれる、アマゾンもネットもなかったのである。古本屋と図書館の渉猟とはいうが、猟に行って満足するだけの獲物を狩れるときなんて、そうそうあるもんじゃないのである。その日の飢えを満たすために狩れたもので我慢する、それが活字中毒者の日常であり業なのだ。「死の接吻」は掛け値なしに面白い。それがわかるまで歩いた距離を、宝物とは思いたくない。
講談社ブルーバックスに、「推理小説を科学する」という本があって、一時期それにハマっていた。たぶん親がわたしを理系の世界に目覚めさせるために買ってきたものだろう。その内容はさすがの講談社ブルーバックス、一切の妥協を許さぬ科学的な視点のもと、藤原宰太郎もハダシで逃げ出すトリックのネタばらしを行い、その大半を「科学的に無理ないしナンセンス」と断罪する恐ろしい本であった。その影響はわたしにとって甚大であり、ミステリを読むのにかかった妙なバイアスを、「いいじゃないかホームズがステッキで地面を叩いて地下にトンネルがあることを推理したって!」「いいじゃないかヴァン・ダインのペダントリーがデタラメだって!」と開き直って解消できるまでには相当長い時間を要した。由良三郎の「ミステリーを科学したら」など、この本に比べれば「面白ミステリエッセイ」である。そこでこの「死の接吻」が取り上げられており、それがまたマイナスイメージというか読む気を疎外してしまうものであった。
「東西ミステリーベスト100」という本で、わたしが救われたと思って感謝しているのは、「死の接吻」という小説の面白さが、第一部の殺人トリックなどにはない、ということを明らかにしてくれたところにある。そのあらすじ紹介と解説を読んで、わたしはのけぞった。ものすごく面白そうな趣向が凝らされていたのである。
最初に書いたように、「死の接吻」を読んだのは浪人中のことだった。二十年前のそのころは、読みたい本を検索すればぱぱっと検索して配達までしてくれる、アマゾンもネットもなかったのである。古本屋と図書館の渉猟とはいうが、猟に行って満足するだけの獲物を狩れるときなんて、そうそうあるもんじゃないのである。その日の飢えを満たすために狩れたもので我慢する、それが活字中毒者の日常であり業なのだ。「死の接吻」は掛け値なしに面白い。それがわかるまで歩いた距離を、宝物とは思いたくない。
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