東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ14位 火刑法廷 ジョン・ディクスン・カー

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     カーは、その手品のようなトリックから、どちらかといえば短編向きの作家ではないかと思っていた。小学生のおり児童向けリライトで「魔女の隠れ家」「死者はよみがえる」を読んだ後、中学に入り「カー短編全集」全5巻(当時)を読み、ますますその思いは強くなっていった。

     で、そのタイミングで「東西ミステリーベスト100」が入ってきたのだ。とりあえず「火刑法廷」と「三つの棺」を中学の図書館にリクエストした。先に来たのが「火刑法廷」だった。読んだ。

     面白いなんてものじゃなかった。まさに神業的な作品である。事件と不可能状況もわかりやすく、結末のどんでん返しも見事で、「カー面白いじゃん!」とカーの長編を次から次へと読みたく……なったのだが、その気持ちはしぼんでしまった。なぜなら、図書館に届いた「三つの棺」を読んだからである。なんというか、なにがどうしてどういうことになっているのか、一読して理解しがたい作品であった。「これがカーか」と落胆した。

     カーを再び積極的に読む気にさせたのは、後に読んだ「ユダの窓」だった。面白かった。自分の好みはカー名義の作品ではなくカーター・ディクスン名義のヘンリ・メリヴェール卿ものではないか、と図書館と古本屋を漁ったものの、なかなかないのよカーの作品。たまに三冊百円の棚で見つけると嬉しかったなあ。

     「火刑法廷」のラストのどんでん返しについてはいろんなところでネタバレしているから、読むときはお気をつけて。わたしは知ってて読んで、それでも面白かったけど、やっぱりこういうのって知らないで読んだほうが楽しいじゃん、である。

     カーの初期作品でもそうだが「火刑法廷」ではユーモア味はかなり抑制されているので、ホラーファンにも面白いかもしれない。金田一耕助ものみたいなどろどろの人間模様が織りなす過剰な愛憎のドラマとそこからくる恐怖、を期待するとちょっと外されるけど、イギリス伝統の恐怖小説のツボはがっちりと押さえながら攻めてくるので、その手の不気味さが好きな人はたまらんと思う一冊。

     図書館の書棚に見つけ、初読時にあれほど面白かったことを思いだして、読んでみた。やっぱりすごく面白い。不気味さを盛り上げる効果しかないように思える、一見まったく関連のないいろいろな伏線が一点に収斂する楽しさは、本格ミステリファンのみがわかる至福の時間である。読もうよ面白いよふふふふ。
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    ~ Comment ~

    Re: こみさん

    盲目の理髪師は昔児童向けリライトで読みました。

    最後にいいところを持っていくフェル博士と、船内のドタバタが笑えなかったことだけを覚えています(^^;)

    カーって映画になってませんでしたっけ? あれだけラジオドラマの脚本を書いてるのに意外……。

    調べてみたらほんとに映像化作品が皆無だった。ヴァン・ダインのファイロ・ヴァンスでさえ何本も映画になってるのに、ある意味すげえなあカー(^^;)

    ちなみに全くないわけではなく、「火刑法廷」が映画に、「B13号船室」がテレビ映画になってるそうです。どちらも日本ではDVDになってないそうで……。

    NoTitle

    あー、崖から落ちそうになるやつでしたっけ?
    筆が滑る大部なのかもしれませんね。
    『盲目の理髪師』もけっこうドタバタだった気がします。
    誰かカーを映像化してくれないかなあ。

    Re: こみさん

    カーの場合、あまりにサービス精神が旺盛すぎて「読んでる人が疲れてしまう」こともあるような気がします。

    傑作ではないけれど好きな作品に、ヘンリ・メリヴェール卿がラグビーをするはめになる「コメディ作家としてのカー」の面目躍如な長編があったんですけど、タイトル忘れて……(汗) 「魔女が笑う夜」だったっけ。

    NoTitle

    カーは大好きです。
    一時期県内の古本めぐりをして探し回りました。
    ハマった最初は『皇帝のかぎ煙草入れ』でした。
    サービス精神が旺盛だと思ってましたよ。
    そのかわりはずれのときは凄まじい駄作ありますね。
    早川と創元でタイトルが違ってて何度か困ったことあります。

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    Re: 面白半分さん

    カーは一部に熱烈な愛好家がいますからねえ……。

    古本屋を丹念に回るか、あるいは図書館と相談するか。

    うちの地元の図書館は、リクエストすると、県内や県外の図書館と連絡を取って、蔵書にない本でも相互貸借という形で取り寄せてくれるのですが、面白半分さんの地元図書館はそういうサービスはやっていないでしょうか。

    それだけの手間をかけても読む価値ある本です。

    NoTitle

    東西ミステリーベスト100はもとより至る所で取り上げられる作品ですが残念ながらコレは読んでいない。
    当事よりカーは入手しづらかった気がします
    近くの図書館にもないのですよ
    至福の時間あじわいたいものです
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