東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)
海外ミステリ16位 黄色い部屋の謎 ガストン・ルルー
小学生の時に児童向けリライトで読んだのが最初。で、家の蔵書に創元推理文庫版の本書があったので、だいたいの話はわかるから読んでみよう、と思って手を付けたら、これがもう歯が立たないのである。知っている人は知っているが、ガストン・ルルーの和訳されている長編って、もとが新聞小説だから、水増し、とまではいわないが、もう延々と続くのだ。しかも初期の創元推理文庫のガチガチの文体、読みにくくってしかたがなく、数ページでごめんなさいした。弱いやつである。
大学の頃の下宿先の近所の市立図書館には続編の「黒衣夫人の香り」があったのでそれくらいは教養のために読んでおこうと思ったのだがこれまた読みにくい文体の前に挫折。出版社も訳者も忘れたが、たぶん創元推理文庫だったと思う。
爾来二十有余年。「黄色い部屋の謎」はだいたいのストーリーとトリックだけ覚えている、「たぶん二度と読まない小説」の殿堂に入っていたのだが、九州へ旅行に行ったとき、駅の本屋をのぞいたら新訳で出ていたので、帰りの飛行機と電車で読む本もなかったからえいやっと買ってしまった。
飛行機内で読み始め、読み進めていくうちになんということか、この本、「やたらと面白い」ことに気づいてしまったのである。解説で「この本は論理的な作品です」とあるが、まさにその通り。新聞小説で適当に書きなぐったんだろう、などと邪推していた自分が恥ずかしくなるほど、堅牢でしっかりした構想のもとに書かれた、「伏線が一点に収斂していく」作品だったのである。電車の中で読み終えたときには、たしかにこりゃ名作だ、とガストン・ルルーに詫びた。
であるからして16位はちょっと異論はあるけどベスト100の圏内にランクインしていい作品だとは思うが、この新訳版、おいちょっと、と思うところもあって、解説がしゃべりすぎなのである。黙っていれば続編の「黒衣夫人の香り」が出たら逃さずに買って真相におおっ、と驚いていただろうが、解説が、「黒衣夫人の香り」の大ネタを堂々と割っており、それを解説自身が認めているという、まことに残念なおまけがついているのだ。
よって、この新訳版を読んだら、解説には目を通さず、ひたすら早川書房に「黒衣夫人の香りを出してください」というハガキやメールを送ってその時を待つことをお勧めする。でも出してくれるのかいな早川書房。なにせシリーズを中途でぶち切ることについては定評のある出版社だからなあ。東京創元社でも同じことだっていえば同じことだけどもさあ。
大学の頃の下宿先の近所の市立図書館には続編の「黒衣夫人の香り」があったのでそれくらいは教養のために読んでおこうと思ったのだがこれまた読みにくい文体の前に挫折。出版社も訳者も忘れたが、たぶん創元推理文庫だったと思う。
爾来二十有余年。「黄色い部屋の謎」はだいたいのストーリーとトリックだけ覚えている、「たぶん二度と読まない小説」の殿堂に入っていたのだが、九州へ旅行に行ったとき、駅の本屋をのぞいたら新訳で出ていたので、帰りの飛行機と電車で読む本もなかったからえいやっと買ってしまった。
飛行機内で読み始め、読み進めていくうちになんということか、この本、「やたらと面白い」ことに気づいてしまったのである。解説で「この本は論理的な作品です」とあるが、まさにその通り。新聞小説で適当に書きなぐったんだろう、などと邪推していた自分が恥ずかしくなるほど、堅牢でしっかりした構想のもとに書かれた、「伏線が一点に収斂していく」作品だったのである。電車の中で読み終えたときには、たしかにこりゃ名作だ、とガストン・ルルーに詫びた。
であるからして16位はちょっと異論はあるけどベスト100の圏内にランクインしていい作品だとは思うが、この新訳版、おいちょっと、と思うところもあって、解説がしゃべりすぎなのである。黙っていれば続編の「黒衣夫人の香り」が出たら逃さずに買って真相におおっ、と驚いていただろうが、解説が、「黒衣夫人の香り」の大ネタを堂々と割っており、それを解説自身が認めているという、まことに残念なおまけがついているのだ。
よって、この新訳版を読んだら、解説には目を通さず、ひたすら早川書房に「黒衣夫人の香りを出してください」というハガキやメールを送ってその時を待つことをお勧めする。でも出してくれるのかいな早川書房。なにせシリーズを中途でぶち切ることについては定評のある出版社だからなあ。東京創元社でも同じことだっていえば同じことだけどもさあ。
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~ Comment ~
NoTitle
黄色い部屋、中学か高校の時に読みました。
その後、本を失くしてしまい、
『黒衣夫人の香り』を見つけて買ったとき『黄色い部屋』も買い直しました。
両方創元推理文庫です。
で、そのまま読まずに現在に至る。
黄色い部屋から続けて読もうと思ったんだけど、
黄色い部屋はネタを知ってるからなかなか手が出なかったのよ。
厚いしね。
その後、本を失くしてしまい、
『黒衣夫人の香り』を見つけて買ったとき『黄色い部屋』も買い直しました。
両方創元推理文庫です。
で、そのまま読まずに現在に至る。
黄色い部屋から続けて読もうと思ったんだけど、
黄色い部屋はネタを知ってるからなかなか手が出なかったのよ。
厚いしね。
Re: 椿さん
このミステリ、たくさん登場人物が出ますけど、男でも女でも、そのほとんどが「ダメなやつ」であります(^^;)
その「ダメなやつ」ぶりが面白いという、ルルーというより、フランスミステリの芸ですな。
だけどこの本、ほんと分厚いんだよなあ……。
その「ダメなやつ」ぶりが面白いという、ルルーというより、フランスミステリの芸ですな。
だけどこの本、ほんと分厚いんだよなあ……。
NoTitle
ルルーは「オペラ座~」だけ読んでいますが、舞台が凝っていたり雑学あったりで面白かったです。あと主人公が私好みのダメンズ。
黄色い部屋も読みたいと思いつつ、まだ手が出ておりませんが、一気に読みたくなりました!
黄色い部屋も読みたいと思いつつ、まだ手が出ておりませんが、一気に読みたくなりました!
- #16900 椿
- URL
- 2016.01/25 14:02
- ▲EntryTop
Re: 面白半分さん
おそらく作者は、最初から「黒衣夫人の香り」を構想したうえでこの小説を書いたのだろうと思われます。
だからこの作品は「前編」だといえるのではないでしょうか。小学生時はわからなかったオチの意味も、今になったらよくわかるというか。
そういうところも含めて再読の価値はありました(^^)
だからこの作品は「前編」だといえるのではないでしょうか。小学生時はわからなかったオチの意味も、今になったらよくわかるというか。
そういうところも含めて再読の価値はありました(^^)
NoTitle
恐らくメインのあのトリックは覚えていますがあとは覚えていません
でも、「伏線が一点に収斂していく」作品だったんですね。
でも、ミステリを読み始めたかなり初期に読んだので
ワクワクしながら読みました
でも、「伏線が一点に収斂していく」作品だったんですね。
でも、ミステリを読み始めたかなり初期に読んだので
ワクワクしながら読みました
- #16898 面白半分
- URL
- 2016.01/24 01:03
- ▲EntryTop
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Re: こみさん
「いかにルルタビーユという男が小利口なだけのなにもわかっていない青二才か」ということがよくわかって面白いです。
黒衣夫人の香り、読みたいなあ!