東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ19位 マルタの鷹 ダシール・ハメット

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     また19位である。騒ぐでない。この文春の「東西ミステリーベスト100」はアンケート投票方式なので、同数の票を獲ったら同位になるのだ。わかるね諸君。

     最初にこの本を読んだのは、あかね書房版の児童向けリライトであった。冒険しやがるぜあかね書房。しかし、ミステリのバリエーションを総合的に児童にも楽しんでもらおうというラインナップはわかるが、ハメットを児童向けリライトするというのはどう考えても無謀だ。読んだ小学生のわたしは、大のハメット嫌い、ハードボイルド嫌いになってしまった。読んでも駆け引きや機微がよくわからなかったからである。あかね書房のそのシリーズは今考えても野心的で、パルプ小説のひとつであるレスリー・チャータリスの「聖者」シリーズも児童向けリライトしてシリーズに組み込んであるという凝りようで、そちらのある意味ムチャクチャな活劇ものの方が、小学生のわたしにとっては面白かった。いっぺんまとまった形で読んでみたいなチャータリス。

     そんなわけで、ハードボイルドの面白さに目覚めた後も、長いことハメットは敬して遠ざける、という態度を取り続けてきたのだが、ついこの前、図書館に早川文庫の新訳版を見つけて借りてきて読んだ。

     そのときに、なんだこれはメチャクチャ面白いではないか、と目を見開かれたような思いがした。小鷹信光先生の読みやすい訳文のせいもあるだろう。

     ということで、再び読みたくなっていてもたってもいられなくなり、もう一度図書館で借りてきて読んだが、読むたびにまた違った感想を持つのは、読みが甘かった証拠のようなものらしい。今回の再読で一番印象に残ったのは、「このバカ女このバカ女このバカ女」であった。いやー、ハードボイルド小説にとどまらず、ミステリ全般、いやすべての文学にいろいろと女性は登場したが、その中でも最悪クラスのバカ女じゃないかこいつ、というくらいに頭が悪い女が出てくるのである。もしかしたらハメット先生、作家になる前の探偵業をしていたとき、世の女性がたにひどい目にあわされたせいで偏見でも持っていたのではないか、と邪推してしまうくらい、頭が悪い女なんだよなあ。

     そういう視点から見てみると、主役の私立探偵であるスペードをはじめ登場する男たちはみんな共通して「哀愁」を背負っているようにも思えてくる。少なくともこの中に冷酷非情な奴なんぞおらんではないか、だ。乾いた文章ではあるが、冒頭に殺されるスペードの相棒で、当のスペードからボロクソにいわれるマイルズ・アーチャーですらどうしようもないなりに、人生を背負っているのだ。哀しい小説である。
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