東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ21位 高い砦 デズモンド・バグリイ

     ←1976年(1) →自炊日記その50(2016年2月)
     中学の図書館に無理やり購入させて、どきどきしながら読んだ。高校受験を控えていたころである。いやー、文庫に落ちていてよかった、とそのとき思ったものだ。「読まずに死ねるか!」では「絶版」と書いてあったからだ。最初はハードカバーで出ていたらしい。

     そしてまあこの小説が面白いのなんのって、である。歴史学者のアームストロング博士、という人物を登場させたのはこの小説の最高のアイデアだったと思う。肉体的にはたいしたことないが、博士の中世に関する該博な知識が、アンデス高地という極限状態でまさに強靭な武器になるという、人文学系に進んだ人間の夢というか願望というか、をもろに体現した人なのである。マッドな人文学者を怒らせたときの恐るべき破壊力に、わたしは快哉を叫んだ。

     後半の、極寒の雪山越え強行軍の話もこれまた迫力満点。いうことなしである。冬に読むと面白さも倍増するかもしれない。降り下ろされるアイス・アックス。そのときの怖さは半端ではない。

     この本に幻惑されて、一時期デズモンド・バグリイばかり読んでいた。「スノー・タイガー」「ハリケーン」「裏切りの氷河」「敵」「原生林の追撃」……もう傑作ばかりがぞろぞろと。駄作というものを書かない作家だった。

     しかしこの作家の作品を読むと、「自然」というものがおっかなくなる。人間がぼんやりと『管理』しているはずと思っているものたちが、そんな思い込みがどれだけ無力かを突き付けてくる。「高い砦」のアンデスの高地、「スノー・タイガー」の雪崩、「ハリケーン」のハリケーン。いずれもこれ以上ないほど過酷で、人間の生命を次々奪っていくが、同時にどこかしらの威厳さえも覚えてくるのである。

     冒険小説は好きじゃないなあ……と思われたかたも騙されたと思ってぜひ一読してほしい作品たちである。面白かったらヒギンズ、ライアルといったあたりもどうぞ。

     最後に、どうでもいいことだが、この本で、中南米の人にとり、「コカの葉」というものがたいへんに重要なものであることを痛感させられた。あんな状況じゃ、「生命を与える天の贈り物」と考えるしかない。登場人物のひとりが、コカの葉を処理し、即効性のある結晶に変えるシーンから、疲労困憊した別の登場人物がその結晶を口に入れて活力を取り戻すシーンは、まさに神秘をこの目で見ているかのようである。日本でも同じようなシーンを再現できないものか(←ムリ)。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    これは映画ではなくて小説でして(^^;)

    大自然を舞台にした映画で、「クリフハンガー」いうスタローン主演の映画がありましたが、あれ、スタローンは青い壁の前で演技していただけで、岩肌のところはクロマキー豪勢だったそうですな。

    そういやあ前に見た無声映画で、当時のアフリカのドキュメンタリー映像が入るやつがありまして、自分が見ているのは劇映画なのか「わくわく動物ランド」なのかわからなくなったことがありました(笑)

    NoTitle

    確か映画というものは自然の恐ろしさというものを教えてくれるものも多いですよね。普段は引きこもりなので、映像を見ることでしか、自然を味わえない子供も多いでしょうね。
    私もそうですし。

    Re: かえるママ21さん

    わたしだって日本の小説読みますし洋画も見ますよ(^^;)

    さすがにオーケストラは聴きませんけど。

    日本の小説では、最終的に「自然は偉大だ、自然に適応して生きよう」というパターンになる展開が多いのに対し、海外の文化では「自然は偉大だ、だから普段からそれらと戦い続け、自然から自分たち人間のテリトリーを守らなければ人間のテリトリーなどあっという間に消滅してしまう」という認識のほうが強いので、宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」は「魔女の宅急便」ほどウケなかった、という話をどこかで読んだ覚えがあります。「火を使えバカ」、と思ってしまうとか……。

    こんばんは^^

    そういえば、かえるままは読む文学は日本のものが圧倒的に多い。
    見る映画は洋画ばかりで。
    音楽は全部おKです。
    ポールさんとかえるままは真逆かもね?

    そうそう、自然の怖さを本州の人はあまり知らないかもしれないって思ったことあります....自然を管理、支配することは出来ないですよね。
    自然は怖くて優しい。
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