東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ22位 グリーン家殺人事件 S・S・ヴァン・ダイン

     ←ぱりん。 →1976年(3)
     小学生のころ、学校の図書室にあったヴァンスものは「カブト虫」「ケンネル」「ドラゴン」だった。小学校の図書館の必需品であった「グリーン家殺人事件」のリライトは、どういうわけか図書室にはなかったのである。そのせいでこの作品を読んだのは、大学を病気中退してしばらくしてからだった。それほどまでに「僧正」の印象は悪かった。「グリーン家」を読む気になったのは、単に古本屋の三冊百円棚で安かったからに過ぎない。

     で、読んでみたところ、「僧正」などとは比べ物にならないほど面白かった。凝ったワンアイデアの「カブト虫」や「ケンネル」、複雑怪奇すぎて理解しがたいうえに例の講談社ブルーバックス「推理小説を科学する」で戦術核ミサイルでも使われたかのごとく跡形もなく粉砕されてしまった「カナリヤ」、それらをぶっちぎってのリーダビリティと面白さがそこにはあった。魅力的な舞台。次々殺される登場人物。みなぎるサスペンス。かっこいい名探偵。こうでなくっちゃ、である。

     ヴァン・ダインが当時のベストセラー作家だったのも納得できる作品であったが、再読しても同じように感じるだろうか。図書館で借りてきて試しに読んでみた。

     やっぱり面白い。ファミレスで読んでいたら止まらなくなって最後までどきどきして読み切ってしまった。終盤はページをめくるのがもったいなかった。坂口安吾はじめ少なからぬ人間がヴァン・ダインをくそみそにののしっているが、この小説の面白さは変わらない。「ベンスン」はまだ読んでいないが、「グリーン家」と「ケンネル」は今読んでも面白いのではないだろうか。俄然「ケンネル」を再読したくなってきたが、ここはこらえよう。読む本ばかりむやみに増やしてもしかたがないし。

     「僧正」とどこらへんが違うんだ、であるが、こればかりは読んでもらわないとわからない。とにかく、文章に伴う「まがまがしい空気」が違い、そこらへんがたまらんのである。「僧正」の犯人はまだコミュニケーションが取れるというか、「話せばわかりそう」なのに対し、こちらのグリーン家に跳梁する犯人はひたすら不気味で完全に気が狂っていて人間ではなくクトゥルーの信者かなにかではなかろうか、と思えてくるのだ。なにせ挑戦も意思表示もしないでひたすら殺しまくるのであるから。真犯人を知ったうえで三度も読んでいると、名探偵ファイロ・ヴァンスを含む捜査陣の、「謎の犯人」に対するヨイショのしかたも巧みであることに気付いてにやにやできる。

     衒学趣味がイヤになる人もいるかもしれないが、そんなもの「黒死館殺人事件」に比べれば「教養」の範囲内である。読んで損のない作品。ほんとに面白いんだってば!
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    ~ Comment ~

    Re: 野津征亨さん

    こちらこそフォロー遅れてすみません(汗)

    これからもどうぞよろしくお願いします!

    ああああ(汗)何だかすみません…っ
    わざわざありがとうございますm(_ _)m
    本来ならばわたしのほうからお探ししてフォローさせていただくのが筋ですのに(>_<)でも正直まだ全く操作方法が判らないので、お言葉に甘えさせていただきます…
    わたしのほうも是非フォローさせてくださいませ!

    Re: 野津征亨さん

    事件そのものはシンプルでわかりやすいので、小学生向けのリライトもけっこう出てます。ストーリーだけを知りたいのであればそれでわかると思います。

    完訳の創元推理文庫バージョンは、けっこう厚いので勧めるのに勇気が(^_^;)

    Twitterのほうは探してフォローしときますね!

    Re: 面白半分さん

    ペダントリーは味つけにはちょうどいいのですが、うっかりすると「ブンジンガ」とかしでかしてしまうので注意が必要であります。(笑)

    まあ間違えたら間違えたでその間違いかたにも天才性があらわれる小栗虫太郎先生みたいな突き抜けたかたもいらっしゃいますが(笑)

    ううむ、わたしごときが読むにはちょいと、いやかなり難しそうな本ですな(-""-;)
    そもそも就職してから殆ど読書できてませんし。

    あと、私信で恐縮ですが、本日からツイッター始めてみました。
    アドバイスありがとうございましたm(_ _)m

    NoTitle

    ヴァン・ダイン好きですねえ。
    特に”グリーン”は”雰囲気もいいし。
    衒学趣味はまったく気にならないどころかどんどん入れてほしいくらいなのです。
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