東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ23位 わらの女 カトリーヌ・アルレー

     ←1976年(3) →1977年(1)
     冒頭のところを小学生のころに読んだ。ぴんとこなかったので読むのをあきらめた。今になっていえる。ガキがこんな本読むんじゃない。

     再読したのは高校の頃だったか浪人中だったか。読んでみて、意外と面白いじゃないか、と思った。前半と後半でまるっきり違ってくる作者の演出がすばらしいサスペンスだ、と思った。とんとん拍子で進んでいた悪事が、いきなり悪夢めいた展開を見せるのである。ヒロインをいじめにかかるカトリーヌ・アルレー、容赦がない。

     栗本薫はこの小説についてはアンビバレンツな思いを抱いていたようだ。ミステリ短編集「伊集院大介の私生活」の一篇で、伊集院大介に、完全犯罪ものとして「わらの女」を代表例に挙げさせ、ワトスン役の森カオルに「あれ嫌い」といわせている。どっちも本音だろうなあ。

     いまにして再読してみると、後半部分で、この小説がかなりメカニカルな、伏線を山ほど張ってそのひとつひとつの意味を楽しむ、そういうタイプの話だったことがわかってけっこう意外であった。サスペンスとして書かれているだけではなく、きっちりミステリしてるではないか。前半のとんとん拍子が実にとんとん拍子に進むので、不自然さを感じる前に読み飛ばしてしまうのである。

     森カオルが栗本薫の感情面での読後感を代表しているとすれば、「ヒロインに感情移入した」あまりに、「ヒロインをいじめる作者の容赦なさ」が不快感を与えたのだろうと思う。逆をいえば、「ヒロインに感情移入」すると同時に「作者のたくらみ」をニヤニヤ笑って眺められる人には、この小説は「名作」として楽しめるのだろう。

     女流ミステリ作家では外せないのが夏樹静子であるが、その某作品は、そのままこの作品に対する返答ではないか、と今になって思えてきた。一般には、別な作品に対する挑戦だ、ということで通ってはいるが、実際は仮想敵は「わらの女」だったのではなかろうか。そんなことまで考えてしまう。

     この文春「東西ミステリーベスト100」での23位はちょっとオールド・ファンの票が集まり過ぎたんじゃないかなあ、と思えるが、サスペンス好きなら読んでおいて損はない、心地よい悪夢に誘ってくれる本である。カトリーヌ・アルレーは昔は創元推理文庫からどかどか翻訳が出ていたんだけれど、最近見ないなあ。アマゾンをチェック……するとやたらめったら爆買いしそうだからやめておこう。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくさん

    アルファポリスは、登録しておくにはいいところですよ。太っ腹ですし。

    ただし本を刷ってくれるまでになるには1日あたり膨大な訪問者数が必要みたいですね(^_^;)

    ショートショート系はけっこう厳しいです(^_^;)

    あの結末は観客にはウケないと思ったのか、昔の映画版でも、最後は勧善懲悪に変えているそうでありますね。テレビ版は見たことありませんが、ひねりすぎて「台無し」になってないことを祈ります。

    NoTitle

    アルファポリスは、そういうことだったんですね。
    最近、ポール・ブリッツさんとか椿さんのブログ見て、やっぱり長編は頭から順番に並んでる方が読む気するよなーって思って。
    かと言って、ブログをそんな風にするのもめんどくさいしってわけで、お手軽に小説投稿サイトを使おうかと思ってたんですけど、なるほど。アルファポリスっていうのもあるんですね。
    ぶっちゃけ、使い心地(使い勝手?)どうですか?(笑)

    え?そんなこと安易に聞くんじゃねーよ!って?(笑)
    まぁまぁ…(爆)

    『わらの女』は、たまたま今年の初めに読みました。
    ずいぶん前にドラマは見たことあったんですけど、ラストはあんなじゃなかったような???

    ま、面白かったのは面白かった…、とか言うと、まぁまぁみたいですけど、うん。いや、結構気にいって。その後、2冊くらい読みました。
    『わらの女』は、内容云々よりも“庶民の憎悪、日常生活の間に蓄積され、相手がなくて戸惑っていた憎悪が、餌を見つけて、それにとびついたのだった”という一文に、「うっわ~」って。

    最近だと、例の地震での芸能人の炎上騒ぎとか、ITだ、AIだとかいったって、結局人間って変わらない(変われない?)んだなーって(笑)

    > アマゾンをチェック……するとやたらめったら爆買いしそうだからやめておこう

    安いのもありますけど、状態の良いものはそれなりに高いみたいですね。
    古いから、さすがにモノがないんでしょうね。
    あ、ただ、あくまで見たのは今年の初めなんで。もしかしたら、今は下がってたりするのかもしれません。
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