東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ24位 さむけ ロス・マクドナルド

     ←1977年(1) →「エターナル・サンシャイン」見た
     大学在学中、当時下宿していた先の市立図書館の蔵書で読んだ。思い出すなあ日野市立図書館の高幡分館でミステリとSFとファンタジーを読み漁っていた日々。あそこは図書館にも関わらず明るくて居住性がよくてついつい長居を。これで哲学の本をもっと読んでさえいれば。……過去とは決別すべきであるな、うぬぬ。

     面白かったことは覚えているが、どんな話だったのかはすっかり、きれいさっぱり忘れていた。これはある意味ミステリの再読としては理想的である。特に、ロス・マクドナルド作品となると、結構手の込んだトリックやシチュエーションで迫ってくるので、本格ミステリを読むのと同じくらいのどきどき感が味わえるのだ。

     そんなわけで「ウィチャリー家の女」といっしょに図書館に頼んで取り寄せてもらったわけであるが。うん。わたしが読んだ早川文庫版は貸し出し中か蔵書になかったかしたんだね。いくらなんでも、旧訳のハヤカワポケットミステリ版が読めるとは思わなかった。物持ちがいいんだね茨城県立図書館。読めるだけありがたいです。

     というわけで読んでみたのだが、たしかに面白かった。だが、今のぐちゃぐちゃな人間関係が平気で出てくる新本格ミステリに慣れると、犯人の想像がついてしまうのだ。小説としては面白いし、トリックもロジックも当時としてはよくできているのだが、すでに21世紀の日本人は『法月綸太郎』を手中にしているのだ。あの人がやりたいのはエラリー・クイーンのような小説を書くことではなくてロス・マクドナルドの作ったハードボイルド探偵リュウ・アーチャーのような透徹した視線を持つ探偵役を動かして悲劇を悲劇として語ることではないのか、と、この二冊を読んで思った。

     透徹した視線というものから評価すれば、エラリー・クイーンもリュウ・アーチャーも、探偵として同一のフィールドにいるのではないか。狂言回し、というよりも、ハードボイルドに対して謎解きミステリ黄金時代の作家が自己防衛と自己批判の目的で語り出した「パターン通りに動く操り人形みたいな探偵ということでは、謎解きミステリの神のごとき名探偵も、ハードボイルドの暴力と行動で事件を解決する私立探偵も似たようなもんじゃないか」というロジックは、まさに、ミステリそのものの本質を突いているのではないか。極論してしまえば、「ミステリはそれでいいのではないか?」という恐るべき結論に集約されてしまうのではないか。

     この悪夢めいた結論の前では、『人間が描けていない』など的外れの意見もはなはだしいだろう。こう書いている自分がまた、ある「さむけ」を感じている。
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    ~ Comment ~

    Re: 面白半分さん

    ハードボイルドがなんとなくとっつきづらい、という人でも、この本は仰天させてくれると思います。ハードボイルドのくせにここまで大技かますのか、というようなトリックが使われていますし。

    法月綸太郎の小説が面白かったら必読ですね(^^)

    NoTitle

    海外ハードボイルドって殆ど読んだことがなく
    この作品もそしてロス・マクもよんでません。

    ただミステリ本質を知るうえで読んでみるのも面白そうですね。
    私が”悪夢めいた結論”までだせるか、嗜好の範疇で終わってしまうかは別ですけど。
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