ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1976年(1)

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     ゲーマーとは、ゲームがうまい人間のことでも、ゲームに生命を懸けている人間のことでもない。いわんやゲームで生活している人間のことなどではまったくない。

     ゲーマーとは、ゲームを介してしか外界とコミュニケートが取れぬ、呪われた人間たちのことなのだ……。



     ゲーマー!



     1976年

     修也は家の廊下でぼんやりとしていた。南側は、ガラスのサッシが閉まっており、風をよけながらも、暖かい陽の光を、修也の周りに届けていた。

     三歳になったばかりの修也は、その新しいおもちゃを手でもてあそんでいた。

     それは緑色のプラスチックでできた一個のサイコロだった。

     正月にとどいた新聞。その子供向けの欄にあったものを、修也は忘れていなかった。

     それは新聞の面にでかでかと描かれていたすごろくであった。

     修也はサイコロを振った。

     1が出た。

     もう一度サイコロを振った。

     6が出た。

     それだけのことなのに、修也はどきどきしていた。

     どうしてこの道具は、「まったく予想もできない数字」を次から次へと見せてくれるのか?

     その点で打たれた目を見るだけで、こたつの上に広げた新聞紙に置かれた駒を動かした時の興奮がよみがえってくるようだった。

     一回休み。

     ふたつ戻る。

     みっつ進む。

     ……あがり!

     修也は新聞を探したが、それはとうの昔に捨てられてしまっていた。

     サイコロはすでに修也の手になじんでいた。まるで生まれたときからいっしょだったもののように。

     修也はサイコロを振る。

     サイコロを振る。

     サイコロを振る……。

     日光は暖かかった。ワックスが塗られて金色に輝いている廊下は、むしろまぶしく暑いくらいだったかもしれない。

     だが、修也にはその暖かさが、考えの全てを蕩かすようなその暖かさが、なによりも好ましいものだった。

     偶然の支配するボードゲーム。修也の精神の、大切なものが蕩けてゆく。初めての「勝利」の快感は、麻薬のように甘美だった。

     修也は再びサイコロを振った……。


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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    代わりに「負ける」ことが続くと人間なにもかもヤになってしまうもので……(^^;)

    下手をすると脱出するまで二十年以上かかるからなあ。とほほ。

    NoTitle

    確かに勝つということは甘美であり、麻薬のような魅力がありますね。すごろくにしても、賭け事にはなりますからね。代表的なのはカードゲームになりますけど。

    Re: らすさん

    すごろくというのは奥が深い遊びなのです。

    そして恐ろしい遊びでもあるのです。

    大河ドラマでも平清盛と後白河帝がすごい顔して遊んでましたな、バックギャモン……。

    Re: ダメ子さん

    似たようなことやってますなあ(^^;)

    わたしは一人っ子だったせいもありますが、ダメ子さんは……三姉妹でしたね(^^)

    Re: 椿さん

    たまにはまっとうな長編青春ビルドゥングズ・ロマンを書きたくなることだってあります。

    1977年あたりからやたらとマニアックになってきますので、ご覚悟ご期待ください(^^)

    NoTitle

    こんばんは(^▽^)/

    双六、人生ゲーム…
    兄やいとこ、友達とやりましたね~
    あんなシンプルなゲームに夢中になれた、
    今思えばいい時代だったかもしれませんね。

    NoTitle

    私も小さい頃は一人すごろくとか一人トランプとかよくしたっけ…
    一人で何役もやって…
    そうか…何かの呪いだったのか…?

    NoTitle

    すごろくは原点ですね。
    小学生の時は自分で作ったりもしたなあ。
    このわくわく感分かります!

    ……で、彼がこれからどういう方向に育っていくかの物語になるのでしょうか?
    楽しみにしております。
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