ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1976年(2)

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     サイコロの次に修也のお気に入りとなったのは、トランプであった。同じ数字を合わせて捨てる、ババ抜き。その単純なゲームを、修也は何度となく親にせがんではやってもらった。

     こんなジョークがある。幼稚園で子供が先生に、

    「ぼく、数字を覚えたよ。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、ジャック、クイーン、キングっていうんだ」

     まことにトランプは数字を覚えるのに優秀なツールであった。

     三歳児には、まだ、七並べは難しすぎた。神経衰弱に至ってはなおさらである。ひたすらにババ抜きをする日々であったが、それだけでよかった。

     そうしたトランプに比べれば、修也は「かるた」というものは好きではなかった。反射神経がものをいうあの遊びは、修也にはフラストレーションしかもたらさなかった。

     修也の両親は、別に息子にゲームの英才教育をしようという気がなかったのはもちろんのことである。

     両親が望んでいたのは、修也には法曹関係に進んでもらい、最終的には裁判所の書記などの、安定して食いはぐれのない仕事につくことであった。彼らはこの頃から、ことあるごとに修也に対し、「裁判所の書記になりなさい」といっていた。

     トランプやサイコロにしか興味を示さない人間に対し、それはあまりにも不適切なやりかただったといえるだろう。まず、修也には「裁判」というものがよくわからなかった。「書記」というものについてはさらによくわからなかった。

     ただ何となくつかめたのは、「裁判」も「書記」も、「面白いこと」はなにもないものだ、ということだった。

     どの年でも同じように、1976年も裁判所は大忙しだった。水俣病事件、名張ブドウ酒事件、そしてきわめつけの大疑獄事件であるロッキード事件。連日連夜のように「裁判」というものが語られていた。NHKのアナウンサーは深刻な顔で「裁判」について語っていた。たいていの人間は、「裁判」と聞くと、怒るか、悲しむか、あからさまな作り笑顔でしゃべるかだった。

     この状況下で、三歳児に「裁判」に興味を持て、それも好意的な興味を持て、というのは無理な話である。

     修也は、いつの間にか「法律」というものが大嫌いになっていた。

     トランプやサイコロに興味を持っていた修也は、立って歩くようになってからは、押入れを覗いて喜ぶような子供になっていた。そこはさまざまな「面白そうなもの」の宝庫であり、特に「何に使うかわからないが、確実に遊び道具とわかるもの」は、修也の興味をひきつけてやまなかった。

     具体的にいえば麻雀牌である。

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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    そこはほら、修也くんて、妙に頭の良いガキだから(そうか?(笑))

    ゲーム以外のことではいいかげんで身なりも構わず整理整頓もしないようなだらしのないガキだけど(笑)

    NoTitle

    3歳児にゲームは結構しんどいじぇ。。。
    しかし、そのころからやっていると何らかの脳の発達に影響を及ぼしそうですね。良い意味でも悪い意味でも。

    Re: 椿さん

    だって麻雀牌のデザインって、美しく完成されているじゃないですか(^^)

    魅惑的だったなあ。白い牌は何に使うのか大学に入って麻雀を覚えるまでさっぱりわからなかったけど(^^;)

    Re: ダメ子さん

    わたしはガンダムの消しゴムを使った一人遊びを。

    あのころはガンダムの消しゴム相手に何時間でも話ができたなあ。(社会不適応者(^^;))

    NoTitle

    三歳にして麻雀牌に興味を持ちましたか(笑)
    でも、家に牌があるということは真面目そうなお父さんもたまにはやるのかな?
    トランプも楽しかったですねー、小学生の時は毎日妹相手にやっていた気が(^O^)

    NoTitle

    うっ…噂をすればトランプ…しかもババ抜きに七並べ…それとページワンをよくやりました
    で…でも私は食玩を使った人形遊びも好きだったから…(震え)
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