ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1977年(1)

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     1977年



     家族旅行で行った先のホテルには、ゲームコーナーも設けられていた。たいていは一回百円で遊べるその機械群は、子供からいい若者まで、幅広い年齢層の財布から、効率的に小銭を搾り取る機能を持っていた。

     小銭を持っていたらの話である。四歳児としてゲームコーナーをうろついている修也に、小銭などを持ち合わせている道理はなかった。大卒者の初任給が十万円、という時代である。百円の価値は高かった。

     修也はひとつのゲームに見とれていた。ゲームというにはあまりにも原始的で、子供だましな代物だ。

     コインを入れると音楽が鳴り、プレイヤーは赤、黄色、緑のいずれかのボタンを押す。ボタンを押すと、壺の中から音楽とともに蛇が顔を出し、うまく色を当てられればプレイヤーの勝ち。三回連続して当たれば、商品として菓子などが出てくるというものだ。

     単純計算でも、かなり不利なギャンブルである。三連続で正答できるチャンスは二十七分の一。普通は当たらない。

     もし、作ったメーカーが悪質だったら、間違いなく二十七分の一などという倍率にはするはずがない。コンピュータがなくとも、歯車を上手く使いさえすれば、プレイヤーが押したボタンに対応して、違う色の蛇を出現させるようにすることなど朝飯前だろう。蛇が出るのはボタンを押してからだから、もとより勝てるはずがない。

     しかし四歳児には、たった三回当てればいいんだ、簡単じゃないか、としか考えられなかった。ぼくにお金があったら、蛇を当ててやるのに、という気持ちにさせられるのである。それだけ、音楽と蛇などのデザイン、それにギミックがうまかったのだろう。修也は飽きずに蛇が出ては引っ込む様子を眺め続けていた。

     隅のほうに、修也には手の届かないゲームがあった。なぜなら人だかりがしていたからである。人見知りの激しかった修也は、そちらの方には足を向けなかったが、テレビのようなものでゲームをやっていることだけはわかった。

     それは「ブロック崩し」だった。面白そうだったが、夢中になってやっている、大人の(中学生でも高校生でも、四歳児には「大人」みたいなものであった)彼らの間に割って入ることはできそうにもなかった。

     そのうちに、修也の両親がやってきて、修也の手を無理やり引っ張ってゲームコーナーから連れ出した。迷子になったものと思ったらしい。蛇を当てたい、などといえる状況ではなかった。修也はこってりと怒られ、しばらくはデパートだろうと何だろうと、ゲームコーナーに足を踏み入れるのは禁止された。

     修也は、あの「テレビでゲームをやる」ということが、どういうものか知りたかった。

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    ~ Comment ~

    Re: フラメントさん

    ありましたねえ。懐かしいです(^^)

    メダルゲームのルーレットとか、インチキじゃないかあれ、というほどあこぎな儲け方してましたね。野球ゲームとかも懐かしいです。スマートボールみたいにボールをパドルで打つ、という……。単価が安かったのでけっこうやりましたね。メダル一枚10円から20円でできたので。

    あの頃のデパート屋上はほんとパラダイスでしたなあ。

    今晩は~

    デパートの屋上のゲームコーナーといえば

    モグラたたきや エアホッケーとか

    ボクの子供のころは 他にもワンコインで 乗用する遊具などが

    好きでした

    テレビゲームといえば 任天堂のカラーテレビゲーム15とか

    ファミコンは少しばかりずれていたので あまりやらなかったですw

    Re: LandMさん

    70年代生まれの人間にはゲームコーナーは特別な場所でした。あのころはからくり仕掛けのものやメダルゲームでも、ゲームのデモを見ているだけで楽しかったものです。

    そして78年、「あれ」がやってきて、ゲームセンターは不良の温床というイメージになってしまうのですが、それは後の話(^^)

    Re: miss.keyさん

    最初はわたしも笑ってましたが、ロボ・ウォーズで基地の拡張に思わず2000円ぶっ込んでからは、とても笑えなくなりました。

    価値観がぶっ壊れるんですよねえ(汗)

    NoTitle

    子ども心では、ゲームセンターは夢がありますよね。
    昔はゲームセンターも盛んでしたからね。
    こういうのは懐かしいですね。
    (*^^)v

    ソシャゲ

     あのつまらないものに大人までもが嵌っている始末。一日に60万円使った馬鹿がいるとか。ま、他人が幾ら使おうが、使う事自体は構わないけどね。でも、濡れ手に粟なゲーム会社ばかり増えたせいでゲームソフトの劣化が甚だしい。確かに画像は良くなっているよ、画像はね(スマホゲームはそれすらゴミ)。でもそれじゃハリウッドの映画と同じじゃないの。

    Re: ダメ子さん

    事態はめちゃくちゃ変わりましたよ!

    「クレジットカード」と「大人買い」このふたつの概念のせいで、「ゲーム」が「投機」みたいになっちまいやがって。「投機」ならまだしも「財産焼却機」ですから現在。それを判断力のないガキが自由にできる時代なんです。

    ガキはソシャゲや一枚数万円などというTCGなどには手を出さず、一袋五十円の怪獣写真を買ってアルバムに貼り付けて遊べばいい、と本気で思ってます。

    玩具メーカーはあまりにも「あこぎな商売」をやりすぎではないかと。そう思いますねえ。

    Re: 椿さん

    修也くんがアナログゲームに本格的にのめり込むにはまだしばし時間がかかります。

    それからが本当の泥沼でして。

    この小説、ライフワークにしようかな(笑)。

    NoTitle

    2015年、ガチャを回して当てればいいんだ、簡単じゃないか
    変わったような変わってないような…

    NoTitle

    子供の時に見たゲームコーナーって、キラキラして本当に楽しいものいっぱい!! って感じでしたね。うちもやらせてもらえなかったけど……。
    そしていよいよTVゲームが登場!
    修也くんの人生にも登場するのでしょうか。彼にはアナゲを頑張ってほしい気もしますが、ゲーマーを名乗る以上そちらもたしなむべきなのか。
    楽しみにしております。

    この70年代の雰囲気、懐かしいな~。
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