東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ28位 初秋 ロバート・B・パーカー

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     高校時以来、久しぶりの再読。実は少々期待していた。高校のころ、心に響くものを感じたからだ。タフで知的な探偵が、とことんまでダメな親によってものか何かのように扱われた自閉気味の少年と出会い、彼をまともな人間にするため、とある湖畔に共同で小屋を建てる作業をするという筋。

     で、読んでみたわけであるが。冒頭からあれれ、であった。主人公の探偵、スペンサーってこんなにうっとうしい男だったっけ。とにかく口先から生まれてきたのではないかと思われるくらい外面でも内面でもよくしゃべる男なのだ。しかも内容がまた、下世話なファイロ・ヴァンスというか、元ネタをある程度知っていることを前提とした、変な意味でのペダントリーというか。

     鍛えられる少年のほうも、魅力がないとまではいわないが、ちょっとステレオタイプではないか、いや、もう「何をやってもダメ」な状態なのではないかと思えるほど、陰気な奴である。ああいう子供はああいう子供で、親に対する独自のディプロマシーを持つと思うのだが、そういうこともないしなあ。

     内容としては、思ったよりもけっこう私立探偵小説していたのは意外だった。が、人情話としてはどうよ、という点もある。なによりも人情話としてこれはあかんのではないか、と思ったのが、「少年を鍛え直すまでのステップがあまりにもインスタントすぎやしないか」ということである。あれだけ大騒ぎしていたくせに、いざキャンプ生活に入ると見る見るうちに人間的な成長を遂げるのだ。そんなに簡単に成長したら、思春期の子供を抱えている親は苦労しないぞ、と思ってしまう。

     大人と子供を題材とした成長物語的なハードボイルドや冒険小説としては、A・J・クィネル「燃える男」や、北方健三「逃がれの街」があるが、そちらのほうがまだミステリ的にも人情話的にもよくできているのではないか、と思えてならない。なぜなのかをよくよく考えたら、この「初秋」では、タフな探偵が子供に知識や自立心といったものを「一方的に与えるだけ」であり、探偵それ自体は子供を鍛えることによってなんらの人間的成長もしなければ得るものもないからではないか、という結論に達した。相互補完ではないのである。

     この小説はスペンサーを主人公としたシリーズで考えるべきであり、評価しようとするならば成長した少年が出てくる後作を読まなければならないのかもしれない。そういう意味で、期待外れだった。ベスト100に入る小説ではないように思う。ちぇっ。
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