東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ30位 笑う警官 ペール・ヴァールー&マイ・シューヴァル

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     小学生の時に押入れから発掘しました。小学生には難しすぎて読むのを断念しました。次に挑戦したのは高校生の時でした。根性で読んだものの暗くて重くて眠くなり、最終ページのあの有名なラストシーンまでたどり着いた時にはほとんど苦行でした。そしてこうして四半世紀ぶりに新訳版を読んでみて、あまりの面白さに一日で読んでしまいました。どこが暗いんだ。どこが重いんだ。スピーディに進む、リーダビリティにあふれた警察小説の傑作ではないか。ところどころにユーモアシーンも挟まれて、「まじめで重い」というこのスウェーデン作家に対するイメージが一変してしまった。こりゃあシリーズ第一作「ロセアンナ」(昔の版では「ロゼアンナ」だったが)から再読しなくてはなあ、と思った次第。

     なんでも、旧訳版では、スウェーデン語からの翻訳ではなく、一度英語版になったやつを和訳したらしい。今になって思い返してみると、スウェーデン語から英語に訳す際、英語圏の出版社の悪い癖で、編集者がむやみやたらと手を入れたんだろう。あの有名なラストシーンも、英語版では重苦しく暗く無情で、スウェーデンに警官として生まれた運命を呪うしかない、という感想を抱いたが、スウェーデン語版の訳では、そんな深刻で暗い主人公のマルティン・ベック捜査官に、同僚で親友のコルベリが、きちんとフォローの手を入れてくれるのである。いいやつじゃんコルベリ!

     それ以外にも、このシリーズに毎回登場する仕事をサボることしか考えてない間抜けな巡査二人組や、ベックと行動を共にする捜査本部の同僚たちも、次から次へと皮肉なブラックユーモアがきいたシーンを見せてくれる。個人的には続編「消えた消防車」で大活躍する、ベックの同僚で下層階級生まれの大男、グンヴァルト・ラーソン捜査官のファンなのだが、この「笑う警官」で彼が直面することになる事態を読んで、大笑いしてしまった。まったくもうこいつは。

     暗くて重いスウェーデン、という思い込みさえ外れれば、この小説は奇人変人の捜査官の入り乱れる、めっぽう面白い刑事ドラマであるから、本屋で見かけたらおすすめである。新訳版で、「マルティン・ベック」シリーズ全十巻が揃ったら、これまでのスウェーデンミステリに対する評価は一変してしまうかも知れない。そんなことまで考えた。

     それにしても、マルティン・ベックをアメリカ訪問させ、エド・マクベイン「87分署シリーズ」のスティーブ・キャレラ刑事たちと共演させようという作者夫妻の思いがかなわなかったのは残念至極というしかない。まあ絶対に著作権でもめるとは思うけど、それでも……と夢を見てしまうのである。スウェーデンとアメリカの双方の事情に詳しい人、パロディ小説を書いてくれないものだろうか。和訳されたら買うからさあ。
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    ~ Comment ~

    Re: こみさん

    マルティン・ベックシリーズは高校のころ、「ロゼアンナ」「バルコニーの男」「唾棄すべき男」「笑う警官」「消えた消防車」「サヴォイ・ホテルの殺人」と読んだところで力尽きたであります。なにせ、どこの古本屋にも売ってなかったのと、「どこからどこまで読んだのか忘れた」ので。

    「消えた消防車」なんてタイトルだけ聞くとギャグですが、実際はスウェーデンの深刻な社会問題を扱った力作の警察小説です。

    妖異金瓶梅は、山田風太郎先生、あまりに濃くて読み切るには体力と気力が(^^;) 面白いんですけど、「金瓶梅」読んでたらもっと楽しめるんだろうなあ、と思います。今から中国文学の「金瓶梅」読む気にはなれませんが(あれやたらと長いのです)。

    190円で一冊買えたのが今では一冊1000円以上ですからねえ。政府によるインフレ政策でしょうか(違)。

    そうめん

    届きましたー、ありがとうございます。
    あんな古本でこんなにいただいては申し訳ないですわ。
    しかも『棺』は新品。
    チラシまでひっくるめてじっくり読ませていただきます~
    それにしても感じたのは、本の値段の上がりかたですね。

    今ごろは金瓶梅シチューを楽しんでいるころかな。
    食べ応えのある珍味ですね~
    これからもおいしいお話を楽しみにしています。
    ちなみにベックシリーズは私もこれしか読んでないです。

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