ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1977年(4)

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     土地を回ってビルを建て、カードをひいてはドキドキして読む、それだけのことにすぎない、だが、修也にはそれが楽しくて楽しくてしかたがなかった。

     家へ帰ってから、修也は、「明日もあれができるのだ」と思い、わくわくしながら床に就いた。

     翌日もいつものように幼稚園に行き、帰ってからNの家へ直行した。

     Nは、部屋でボードを広げる代わりに、「野球をやろう」といいだした。修也は「野球」というものが、テレビでよくやっているわけのわからないなにかだ、ということだけは知っていた。Nは修也にボールとグラブ、それにバットを渡した。

     ……ボール!

     修也はパニックになって一目散に逃げだし、そして自分の家で、うずくまり、ひとり、かたかたと震えていた。

     怖い。

     スポーツは怖い。

     ボールは怖い……。

     その感情は、修也の身体に条件反射的に染み込んで、「外遊び」全般に対する不信感と恐怖感につながっていく。

     そうだ、修也は怖かった。

     誰でもやっている昆虫採集が、ザリガニ取りが、釣りが、鬼ごっこが、その他もろもろが、怖くてたまらなかった。

     なぜ、人は好きこのんでそのようなことをするのか? 修也には、いくら考えても理解ができなかった。頭では理解できたかもしれないが、感情がそれを許さなかった。

     それがどういうことを意味しているのか、修也はまだ知らない。

     幼稚園での生活を通して、ゆっくりとわかってくるのだ。

     人間というものは、多かれ少なかれ、修也を敵とみなし、あからさまな害意を持って迫ってくるということが。

     肉体的にであれ、精神的にであれ、この世は基本的に他者に対する暴力で成り立っており、自分もまた同じく、他者に暴力をふるっている存在だということが。

     親から、保母から、本から、テレビから、周囲の人間や刺激からわかってくるのは、この世はいらだたしく、うるさく、どうしようもないほど居心地が悪いようにできているという事実だった。

     陽だまりの中でサイコロを振っていた時間にはもう二度と帰れないのだと、修也は四歳にして、おぼろげながらも理解していた。

     すでにこのとき、修也の破滅は決定していたともいえる。修也は外へ向けて成長するよりも、たとえ幻想でもかまわないから、自分の内面の幸福を肯定する、ひとり、ぼんやりとした状態でいられる空間を探すことを望んだのだ。

     その手段は……。

     ゲームだった。

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    ~ Comment ~

    Re: フラメントさん

    卓球も難しいではないですか(^^;)

    自分ではラジオ体操ですらまともにできている自信がありません(^^;)

    球技は全然ダメで

    ボクの家でも 父がバットとボールを買ってくれましたが

    キャッチボールからしてだめでした

    まともにできるのは 中高でやった 卓球くらいですww

    Re: LandMさん

    ボールを投げてもまともに飛ばないということで、親はそうとう焦って肩身の狭い思いをしたらしいです。

    いくら練習させても、嫌いだし価値も認めてないし興味すらないものに対して、ガキが努力なんかするわけないじゃん(^^;)

    NoTitle

    う~~ん。
    私も確かに球技は嫌いでしたけどね。
    あれです。苦手なものは苦手なままで。
    球の技術はなかった。。。
    (-_-メ)

    Re: 椿さん

    この話はフィクションですのでわたしも鬼ごっこだのブランコだの回転ジャングルジムだのはしましたし、泥んこ遊びも好きでした(^_^)

    でもそれ以上に家でテレビ見たり本を読んだりするのが好きで。

    次回出てくる「あれ」も当時はスルー状態でしたねえ。手の届かないもんだと思ってました。

    NoTitle

    外遊び嫌いな子、スポーツ嫌いな子には生きにくい世の中ですよね(-_-;) この頃は今よりもっとそうだったかな。
    いいじゃん別に! 家遊びの方が好きでも!
    ……という気持ちを思い出しました。修也くん頑張れ。
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