ウォーゲーム歴史秘話
ワグラムの戦い従軍記・補足
中学生だったころ、わたしはTRPGなどのファンタジーゲームに夢中だった。当時は普通の本屋で「タクテクス」「ゲームグラフィックス」「ウォーロック」といったゲームの専門誌が買え、そこではTRPGの特集がよく組まれていた。
そんな中、読者コーナーが面白かったのと、リプレイ記事が面白かったのとで「タクテクスを毎月買わなくては」という半ば義務感のようなものが生まれ、興味のない歴史シミュレーションゲームの号も買った。
その号の付録についていたゲームが、この「ワグラムの戦い」である。つまらんだろうけど買ったんだしやってみるか、と駒をコンビニのコピー機でコピーし、厚紙に糊で貼って自作し、地図に並べ、ひとりでルールにしたがって両軍のコマを動かしてみた。
面白かった。なにせ、机いっぱいのゲーム版の上で、部隊が自分の思う通りに動いてくれるのだ。机の上に展開される、屍山血可の戦いは、スペクタクル映画のようにわたしを魅了した。冬休みの間、わたしは何度もひとりでこのゲームを遊んだ。わたしは中毒者を増やそうと、学校へ持って行った……。
……のだが、当時は誰も相手にしてくれなかった。「1回のゲームに8時間くらいかかる」といったのがまずかったのだろうか。ナポレオン戦争ものでなじみがなかったのが悪かったのか。それ以来、このゲームはこんこんと眠り続けた。
そしてゲームを買ってから25年。ついにこのゲームも、人間を相手に戦うことができる機会を得たのだ。
世の中、物は捨てるものではないのである。(「世の中捨てたものではない」って、そういう意味じゃ……(^^;))
場所は「茨城歴史ゲームの会」例会。対戦してくれたのは水青さん。いつもの例会ではドイツゲームをやっており、シミュレーションゲームで戦うのはひさしぶりである。
朝の10時に会場に集まってからルールの細部の確認をし、11時ごろからゲームを開始した。わたしがフランス軍である。ナポレオンである。うおー、燃えるぜ!
まずは布陣である。見にくいが白地に黒の駒がフランス軍、灰色に黒の駒がオーストリア軍である。

第2ターン両軍戦闘終了時。レオポルダウに立てこもるオーストリア軍に、フランスの大軍が殺到。右翼でもフランス軍が前進を開始。それに対して、中央部の布陣の薄いこと、まるでウェハースみたいだが、「金梃とハンマー」理論では、中央は後退路があるから大丈夫だ! ……と、思う。真ん中の町にぽつんといる騎兵ユニットは、機動予備、というやつで、中央や右翼でなにかあったときに即座に対応できるようにわざと残したもの。ゆ……遊兵じゃないぞ! ちなみに史実では、ナポレオンはロスバッハ方面へ正面突撃を繰り返したが、大苦戦したらしい。ナポレオンが大苦戦するような作戦、取れるわけがないじゃないか!(^^;)

第3ターン。左翼で、レオポルダウ村をめぐっての執拗な殴り合い。アーデルクラー付近では薄くなったオーストリア軍に攻撃。ここのオーストリア軍がラスバッハ高地に逃げ込んだりするとたいへんなので、アーデルクラー付近の道路を押さえて連絡を妨害する。この直後に、地図西端、左端からオーストリア軍の造園がやってくるので、回り込まれることを警戒し、ゲーム版の端にフランス軍の駒を並べて妨害。同様のことは、地図東端においても不確定ながらいえるので、同様に兵力を割いて並べておかねばならない。

第4ターン。レオポルダウ占領。オーストリア軍右翼のほぼ半分を壊滅させた。ここで水青さんが勘違いに気づく。オーストリア軍は地図盤の西端から戦場を離脱することでも勝利ポイントを得ることができるのだが、それを北端と勘違いしていたのだ。よくある話である。紳士的ではないが付け込ませてもらった。焦ったのか、オーストリア軍中央が、フランス軍の中央突破をはかってきた。願ってもない展開に、ほくそ笑みつつ左翼から歩兵を引き抜き、中央へ回す。夜が明けたら総攻撃だ、などと捕らぬ狸の皮算用。

第7ターン。有利な地形を捨てて飛び出してきたオーストリア軍の包囲撃滅に失敗した瞬間。「マルモン~! このバカ者が~!」と駒を見て嘆く。まさかサイコロで6が出るとはなあ。その後もあのオーストリア軍部隊はマルモンの必死の攻撃をことごとく退けてしまうのだった。まさかサイコロの目が6しか出なくなっているとは。すごろくだったらいいけれど、SPI社のシミュレーションゲームで6を振るというのは悲惨そのものなのだ。左翼の敵を粉砕し、オーストリア軍の士気を崩壊させたのはいいのだが、ここから頭に血が上り、とにかくラスバッハ高地に橋頭保を築くべくムチャ攻めを繰り返すことになる。冷静に考えれば、オーストリア軍を軽微な損害で半減させたのだから、ラスバッハ高地など捨てて防御に徹していれば実質的勝利は固かったのになあ、とゲーム後に反省。

第11ターン。オーストリア側にヨハン大公の援軍が到着し、フランス軍右翼が危機的状況に陥る。挽回せんものと、敵を全滅させたフランス軍左翼がアーデルクラーを経てワグラム方面に殺到するのであるが、時すでに遅し、というやつで……。また、度重なるムチャ攻めのせいでフランス軍の損害がえらいことになり、フランス軍も士気が崩壊。やる気がなくなった軍隊にムチャ攻めをやらせるのだから、損害がかさまないわけがないのであった。オーストリア軍の勝利ポイントはどんどん上がった。「このままでは負けるかもしれない」という恐怖がさらに不安をあおり、ナポレオンはムチャ攻めをさらに命令することになるのだった。

第12ターン。フランス軍がラスバッハ高地に設けた最後の橋頭保が叩き潰された。

第13ターン。フランス軍のラスバッハ高地への侵入が不可能になったことが判明、フランス軍の限定的勝利でゲームは終了した。

ゲームを終え、時計を見たら5時だった。まるまる6時間戦っていたことになる。歴史のロマンを感じる、充実した6時間であった。わたしはバスがなくなる前に家へ帰ったが、水青さんは茨城歴史ゲームの会の宴会に参加するため残ったそうである。
そんな中、読者コーナーが面白かったのと、リプレイ記事が面白かったのとで「タクテクスを毎月買わなくては」という半ば義務感のようなものが生まれ、興味のない歴史シミュレーションゲームの号も買った。
その号の付録についていたゲームが、この「ワグラムの戦い」である。つまらんだろうけど買ったんだしやってみるか、と駒をコンビニのコピー機でコピーし、厚紙に糊で貼って自作し、地図に並べ、ひとりでルールにしたがって両軍のコマを動かしてみた。
面白かった。なにせ、机いっぱいのゲーム版の上で、部隊が自分の思う通りに動いてくれるのだ。机の上に展開される、屍山血可の戦いは、スペクタクル映画のようにわたしを魅了した。冬休みの間、わたしは何度もひとりでこのゲームを遊んだ。わたしは中毒者を増やそうと、学校へ持って行った……。
……のだが、当時は誰も相手にしてくれなかった。「1回のゲームに8時間くらいかかる」といったのがまずかったのだろうか。ナポレオン戦争ものでなじみがなかったのが悪かったのか。それ以来、このゲームはこんこんと眠り続けた。
そしてゲームを買ってから25年。ついにこのゲームも、人間を相手に戦うことができる機会を得たのだ。
世の中、物は捨てるものではないのである。(「世の中捨てたものではない」って、そういう意味じゃ……(^^;))
場所は「茨城歴史ゲームの会」例会。対戦してくれたのは水青さん。いつもの例会ではドイツゲームをやっており、シミュレーションゲームで戦うのはひさしぶりである。
朝の10時に会場に集まってからルールの細部の確認をし、11時ごろからゲームを開始した。わたしがフランス軍である。ナポレオンである。うおー、燃えるぜ!
まずは布陣である。見にくいが白地に黒の駒がフランス軍、灰色に黒の駒がオーストリア軍である。

第2ターン両軍戦闘終了時。レオポルダウに立てこもるオーストリア軍に、フランスの大軍が殺到。右翼でもフランス軍が前進を開始。それに対して、中央部の布陣の薄いこと、まるでウェハースみたいだが、「金梃とハンマー」理論では、中央は後退路があるから大丈夫だ! ……と、思う。真ん中の町にぽつんといる騎兵ユニットは、機動予備、というやつで、中央や右翼でなにかあったときに即座に対応できるようにわざと残したもの。ゆ……遊兵じゃないぞ! ちなみに史実では、ナポレオンはロスバッハ方面へ正面突撃を繰り返したが、大苦戦したらしい。ナポレオンが大苦戦するような作戦、取れるわけがないじゃないか!(^^;)

第3ターン。左翼で、レオポルダウ村をめぐっての執拗な殴り合い。アーデルクラー付近では薄くなったオーストリア軍に攻撃。ここのオーストリア軍がラスバッハ高地に逃げ込んだりするとたいへんなので、アーデルクラー付近の道路を押さえて連絡を妨害する。この直後に、地図西端、左端からオーストリア軍の造園がやってくるので、回り込まれることを警戒し、ゲーム版の端にフランス軍の駒を並べて妨害。同様のことは、地図東端においても不確定ながらいえるので、同様に兵力を割いて並べておかねばならない。

第4ターン。レオポルダウ占領。オーストリア軍右翼のほぼ半分を壊滅させた。ここで水青さんが勘違いに気づく。オーストリア軍は地図盤の西端から戦場を離脱することでも勝利ポイントを得ることができるのだが、それを北端と勘違いしていたのだ。よくある話である。紳士的ではないが付け込ませてもらった。焦ったのか、オーストリア軍中央が、フランス軍の中央突破をはかってきた。願ってもない展開に、ほくそ笑みつつ左翼から歩兵を引き抜き、中央へ回す。夜が明けたら総攻撃だ、などと捕らぬ狸の皮算用。

第7ターン。有利な地形を捨てて飛び出してきたオーストリア軍の包囲撃滅に失敗した瞬間。「マルモン~! このバカ者が~!」と駒を見て嘆く。まさかサイコロで6が出るとはなあ。その後もあのオーストリア軍部隊はマルモンの必死の攻撃をことごとく退けてしまうのだった。まさかサイコロの目が6しか出なくなっているとは。すごろくだったらいいけれど、SPI社のシミュレーションゲームで6を振るというのは悲惨そのものなのだ。左翼の敵を粉砕し、オーストリア軍の士気を崩壊させたのはいいのだが、ここから頭に血が上り、とにかくラスバッハ高地に橋頭保を築くべくムチャ攻めを繰り返すことになる。冷静に考えれば、オーストリア軍を軽微な損害で半減させたのだから、ラスバッハ高地など捨てて防御に徹していれば実質的勝利は固かったのになあ、とゲーム後に反省。

第11ターン。オーストリア側にヨハン大公の援軍が到着し、フランス軍右翼が危機的状況に陥る。挽回せんものと、敵を全滅させたフランス軍左翼がアーデルクラーを経てワグラム方面に殺到するのであるが、時すでに遅し、というやつで……。また、度重なるムチャ攻めのせいでフランス軍の損害がえらいことになり、フランス軍も士気が崩壊。やる気がなくなった軍隊にムチャ攻めをやらせるのだから、損害がかさまないわけがないのであった。オーストリア軍の勝利ポイントはどんどん上がった。「このままでは負けるかもしれない」という恐怖がさらに不安をあおり、ナポレオンはムチャ攻めをさらに命令することになるのだった。

第12ターン。フランス軍がラスバッハ高地に設けた最後の橋頭保が叩き潰された。

第13ターン。フランス軍のラスバッハ高地への侵入が不可能になったことが判明、フランス軍の限定的勝利でゲームは終了した。

ゲームを終え、時計を見たら5時だった。まるまる6時間戦っていたことになる。歴史のロマンを感じる、充実した6時間であった。わたしはバスがなくなる前に家へ帰ったが、水青さんは茨城歴史ゲームの会の宴会に参加するため残ったそうである。
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激闘6時間、おつかれさまでした。
ゲームリプレイは毎回楽しみにしております。
対人シミュレーション、楽しそうだなあ。頭悪いから、やったら負けまくるだろうけど……(笑)
ゲームリプレイは毎回楽しみにしております。
対人シミュレーション、楽しそうだなあ。頭悪いから、やったら負けまくるだろうけど……(笑)
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Re: 椿さん
今回プレイしたこのゲームも、どちらかといえば「ミニゲーム」ですし(^_^;)
今度はどのゲームをしようかな♪